23.結ばれる日がやって来た
実際の所これで終わりです
婚儀当日――
あの日からほぼひと月地獄のような日々であった……。
繕いなぞ新たにサンザシの実の模様ができるほどで、これでもかとぐらい指を刺してしもうたし。
お蔭で茶も華も書も人並みには出来るようになったと思うておるが、
これも今日で終わりであると思うと物寂しいものであるな……。
今見て居るこの庭もよく駆け回って遊んだものだ。
この廊下も見慣れた所であるのにこうしてじっくりと見ておればまた違うものだと気づかされる。
――かの部屋は祖父より武士として剣や槍の厳しき指南を受けた……
その祖父によって私は武士である事に踏ん切りをつけることが出来た――。
時に笑い、時に涙したこの家……思い出すは幼き頃過ごした思い出ばかり――。
「うっ……うぅ……」
何ゆえ――何ゆえ涙が溢れてくるのであろう。
泣いてなぞおれぬのにそこに座り込んで涙を落としてしまう……。
翌朝、私はここを去るのだと思うと抑えきれず幼子のように咽び泣いてしまう……。
ずっと居るのやもしれぬと思うた時もあった、ずっと離れたいとも思うた時もあった。
先の世で暮らす事になっておってもこうは思わなかった、されど何ゆえ今は離れたくないのであろう……。
泣いてはならぬのに、もうここで涙する事は出来ぬのだと思うと抑えられぬ……。
離れた場所で女中達が泣いておる――思えばかの者たちとも長い付き合いであった。
幼き頃にはまだうら若き乙女であったのに……と思えば私がかのような年であるのだ、老いて当然であるな。
当時の皆を思い出さば感謝の念が尽きぬ……かつての私はもうおらぬ、人前で涙するのも恥とは思わぬ……。
もう母上の部屋に向かわねばならぬのに、身体が動こうとせぬ……。
「まだ日があるとは言え、今から泣いておっては持ちませぬよ」
「ぐすっ……うっ……ずずっ……」
「さ、参りましょう」
目を赤くしたまま母上の部屋に赴き白無垢を纏ってゆく――
この白無垢姿も二度目かと思えば、全く異なるものと母上が申された。
実は以前のおいとま請いも、使うた杯はかわらけ(素焼き)に見せた紛い物であり、
着物もその際に着せる物でなかったと母上が明かしてくれた。
かの儀の時はやけに黄みがかった白であると思うておったがこれで得心がいった……
新たな白無垢も買えぬほど困窮しておるのかと思うておったがこれで安心した。
いやいつぞやの夢と手紙からして、母上は事の顛末を全て知っておった。
この日が来ると分かっておったので偽りの儀に仕立てられたのか……。
あの縁談から全てが紛い物であり、今宵が正真正銘の儀なのであるのだな。
「ううぅ……母上……ありがとう……ぐすっ……ございます…………」
「さ、間もなくでございますよ、今宵こそ真の儀でありますからね」
父上の待つ間へゆっくりと歩を進める――
正直申せばもっと早く進みたいものだが、気が引き締まりすぎて胃が痛くなりそうぞ。
して、何ゆえ弘嗣はこちらの婚儀にこだわったのであろうか――?
こちらに親や親族を連れて来れぬ故に致し方ないのであるが、私は弘嗣の時代の婚儀で構わぬのに。
何やら、あちらの儀は"むうど"が足りぬと申しておったが、時折あ奴の感性が分からぬ時がある……
弘嗣の母親に、私の父上と母上も招き、日を改めてあちらでも儀を執り行うと申したのにも驚かされた。
金子は? と思わば、父上と結託し"れんきんじゅつ"なる物で金を得てきた……。
『水を金に換える』と言い始めた時は父上に殴られた際に頭がやられたのかと思うたが、
弘嗣の世で買うて来た安物の酒を詰め替え父上のツテで諸大名に売り捌き始めた。
私は未だに認めておらぬが、確かに弘嗣の世では金を出して水を買う――
葡萄酒などを売るのはそれに似た商いではあるが……良いのか?
父上は父上で何だかんだと文句を述べながらも弘嗣の事を気に入っておる。
母上は『殿に念願の息子が出来たのですから』と申しておったが――
確かに、剣術に馬術に弓に食い歩き、酒に……と活き活きとしておったな……。
おかげで弘嗣との逢瀬が少なくなってしもうたが……まぁ、最後の孝行しておこうぞ。
「うっ……」
以前とは比べ物にならぬほど場が重くたじろいでしまった――。
居下は他に比べれば圧倒的に弱小であるが、これほど家臣がおったのかと驚かされる。
殆どは曾祖父、祖父などの先祖代々から仕えて来てくれた者どもであるが…。
私の我儘でそれが途絶えてしまうのかと思うと申し訳なくなってしまう。
共に戦場を駆け生き延びた者たちを見て感慨無量であった……。
もう既に涙を流しておる者もおるが、皆同じ気持ちであるのであろうか。
私も己を誤魔化し泣かぬようにしておったのに……再び……泣きそうであるぞ……。
「父上……長き……長き間、ぐっ…うぅっ……おっお世話にっ……ぃ……な、なりました……」
涙で良く言えぬ…
…厳しき顔をしておる父上の前で深く頭を下げた――何やら父上の様子がおかしい気がする。
ふと顔をあげてみれば、これでもかと顔をしかめて大泣きしておるではないか……。
ずっと堪えていたのであろうが私以上に泣かれると何とも泣きづらい。
家臣の者どもはそれにつられて泣いておるし。
「うっうぅぅ、おおっおっぉぉ……鈴音ぇ……」
「ち、父上――あまり泣かれると私が泣きづろうございます……」
「おっおぉぉ……泣いてなぞっ泣いてなぞおらっぬっ……うぅ……」
おかげで私の気持ちが落ち着いたので良いものの、どちらが主であるのかと分からなくなってくる。
まぁこれが私なりの、我が居下家の婚儀なのであろう。
嗚呼、何とも酒が美味い――。
/
俺も明日で花の独身生活は終わりか――いや、確か明日の早朝に出立、
ご休息でここに来て明日の昼ぐらいに固めの儀を行って、宴会して床入り……だから明後日になるのか。
今思えばご休息が未来のご休憩1500円的なあれなのだろうか?
そこから宿泊にチェンジすれば納得が行く、飯もあってパーティーもやろうと思えば出来るし。
それにこの場所もにびの姉、四姉さんの使ってない別荘――もちろん使用料支払うのだからまんまアレな場所である。
そう思うとムードもクソもないな、忘れよう。
「おい、支度するのじゃ」
「も、もうそんな時間か――?」
「今から迎えに行ってくるのじゃ、にひひっ心して待っておれ」
まだ陽も昇っていない頃――鈴音のおいとま請いの儀はつつがなく終わり、そろそろ出立の儀に入るようだ。
迎え役はにびがやってくれる。ついでに世話役もにびがしてくれる。と言うか全部にびがやる。
……と言うのも、本来は俺の家の関係者すべてやらなければならないんだ。
この家には俺とにびしかいない――つまり必然的ににびがさせられる。
いや、にびしかいないわけではない。
そこに煎餅食いながらファッション雑誌読んでる七姉さんがいるが数にカウントしない。
ここから鈴音の屋敷まではせいぜい車で二十分程度の距離だから、まぁ往復四十分ってところだろう。
来るまで寝癖やらのチェックしとかないとな――掃除は済ませてあるが鈴音の部屋の確認も兼ねてもう一度確認しておくか。
白装束も汚さないように気を付けないと。
「別に忙しくせぬとも夕方まで来ぬわ。
あぁそうじゃ……ほれっ、忘れぬ内に妾から結婚祝いを渡しておいてやろう」
「何これ保険証?――居下鈴音ってえぇっ!? こんなのどうして!?」
「妾にかかれば書類なぞチョチョイじゃ。妾のを一つやるのじゃから感謝するのじゃぞ?」
「あ、あぁ……ありがとうございます」
「まー……またすぐに書類を書き換えねばならぬがの。鈴音が明日で実質、居下の名を捨てるのじゃから。
して、今からそんな緊張しておっては明日まで持たぬぞ一休みしておれ」
「あ、明日が本番だもんね……と言っても普通に二人で飯食うだけだろうけど」
「これほどまで盛り上がりに欠ける婚儀は妾も初めてじゃぞ……」
そう、出立を終えてここに来てからは普段と言うほど変わらないのだ。
どうしてかって? そりゃこっちで招かれる人が居ないからよ……。
親呼びました、親族呼びました、では戦国時代で宴会してください――
にび共に摘ままれながらするような宴会とか絶対に盛り上がらない。
なので四姉さんに家を借りるぐらいが精いっぱいなんだ。
鈴音も連日の宴は疲れるのでそれの方がいいと言ってくれたが、少し申し訳なくも思う。
うちの親族交えては後日だな。ウェディングドレス姿も見たいし、そのまま初夜(二度目)とかやりたいし。
「妾はともかくじゃが、この国の者にウェディングドレスは着る物に負けてあまり似合わぬぞ?」
「……純白のドレス穢したいと思うじゃん?」
「どれだけ偏っておるのじゃお主は……ま、そう言う事なら妾が着てやっても良いぞ、ん?
こうしてドレスの裾をまくれば純白のインナーが……どれ予行演習でもせぬか?
いざ本番で使い物にならなくなってはいかぬからのう――」
「うわぁぁぁっ!? 止めてっ、我慢してるんだからこの状況で惑わさないでっ!?」
「ほっほ、ちと足で突けば溢れでてしまいそうだしのう――じゃが、そんなので明日の初夜は平気かの?」
そこだけが正直不安なのだ……。
俺は経験あるにしろ、ここ三か月近くは起動しても発進していないので、突然暴発しそうで実に不安なのだ。
「じゃから事前に一発二発抜いておけばじゃの――」
にびお願いっ早く来てっ、この人に穢されちゃうっ!?
/
ああ、待っておれと申したものの――。
この時代の婚儀で一番面倒なのは出立なのじゃ……童も待たねばならぬ。
もう二時間か、あれやこれやと理由を付けて待たせるのが作法とか誰が決めたのじゃろうな。
ま、初めに行ったのは本当に娘を大事にしておったのじゃろう。
結婚か――童もいつしかするのじゃろうな。まぁ童らが嫁げばお日柄は良くないであろうが――
おおっそうじゃ良い事思いついたぞっ、ふふんっ半日以上引き留めるがよいわ。童はその間に準備するのじゃっ。
童が思いつかねば今度は鈴音を海の中に飛ばしておったやもしれぬな……。
来そうになれば童の方から止めようと思うておったが、普通に十時間以上経過しておるわ……。
なるほどなるほど、あの親父が本気で引き留めにかかっておったのか。
童が平常心で良かったのう、普通ならぶん殴っておる所じゃ――。
さて、17時頃か……時間的にそろそろかの。普通に待たされておったと思うとゾっとするのじゃ……。
母君より初夜の心得聞かされておるし――今からあんなガチガチで大丈夫かのう?
顔が引きつっておるぞ……。
「お待たせ致しました」
「待たせすぎじゃ……どんだけ茶を飲んだと思うておる」
お腹タポタポじゃぞマジで。ま、それでいいのじゃが……お、出てきたか。
――ふぅむ馬子にも衣装とも言うが、鈴音の白無垢姿は悪くないのう。
「ぐすっ……待たせてすまぬ……うぅっ……」
「お主と言い、親父と言い土壇場で泣きすぎじゃ――」
「す、すまぬ……ぐすっ……して、馬はいづこにおるのだ?」
「本当の事を言えば、童はお主と弘嗣には申し訳ない事をしたと思うておる……。
時を超えた橋渡し――結果的に最高の伴侶を見つけたとは言え、童のミスからこうなってしまったのじゃ……。
じゃから、これは童からの詫びと結婚祝いじゃ、一生に一度しか体験できぬ物じゃぞ?
ほれ、これつけよ。再び橋渡しをしてやるのじゃ。」
「一体何を――狐の……面か?」
「じゃっ皆頼むのじゃーーっ!!」
――童の仲間
――童の同類
――童の友達
――童の姉妹
方々に隠れ潜んでおった、百を超える狐が人の形をとって大行列を作り上げた。
ふふんっ、どうじゃ!!
「な、何ぞっ――お、お主らはっ!?」
「……にびは面白い事を思いついた。じゃレッツゴー」
「では、参りましょう。今回はお金はいりませんよ」
「あっはっはー、行くぞ行くぞー」
「……ど、どうして見つかった……まぁ面白そうだからごーごー……」
「今日は眠れない。寝たい。けど寝ない。行っちゃおうZzz」
「いいですね~こんなの久しぶりです~、行きましょ~」
「ほっほ、土壇場で良く思いついたものじゃ。傘も用意してあるしの。さ、参ろうぞ」
「いやあ、童は凄いのう。じゃ始めるのじゃー」
「はっ始めるって何をするのだっ!? こ、これ全部狐なのかっ!?」
童らがお主らに贈る――サプライズじゃっ
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何かとんでもない事になっていた。
七姉さんが突然出かけてくれたおかげで貞操を守る事ができたが。
まだかまだかと、なかなか来ぬ花嫁に首を長くして待つことほぼ十五時間、
急に雨が降ってきたから晴れの舞台についてねーなぁと思って空を見上げれば、空は雲一つない快晴だった。
その窓から見えたのはこちらに向かってくる青い提灯明かりの狐の大行列……
その列の真ん中の方に籠に乗っている白無垢姿の花嫁――狐の面をついているがそれは誰だかすぐに分かった。
狐の嫁入り――現代では天気雨をそう呼ぶけれど、やはり狐が嫁に行く時は雨降るのか? 嫁は狐じゃないが。
鈴音の周りにいるたくさんの尾を持つ狐の姉妹がしてくれたのだろう。とんでもないサプライズだ。
七姉さんの教えられた通り、面をつけたままの鈴音の手を取り屋敷の中へと招き入れた――。
「皆が目を見開いておったぞっ――見えぬ、どこじゃどこじゃっとな!!」
「狐の嫁入りは近くに行くと見えないんだっけ……いいなぁ、俺も乗りたかったぞ!!」
「ふふーんっ、あれは女子特権なのじゃっ」
「さて、妾らは準備があるので戻るが、お主らも早う寝ておくのじゃ。明日は寝られぬからの、ほっほ」
そう言って、狐は去って行ったけど――最後に意味深な言葉で俺と鈴音は各々の立場を思い出した。
今日は……普通に寝る日だよな?まだ固めの儀があるから大丈夫だよな……?
で、この以前首ポーンのオッサンから他の家臣たちは何でここにいるの?
「この鶴見・浅野・白石が居下家のお送り役を仕り、明日の固めの儀は私鶴見が見届け役となり申す」
「うむ、頼んだぞ――他の皆もご苦労であった。戻って良いぞ」
「鈴音っ今は違う――」
「あっ……おほんっ、もっ戻って下さいまし?ませ?」
「はっはっはっ、やはり付け焼刃では上手く行きませぬな。やはり普段の鈴音様の方が我々には一番しっくり来る」
「む、むぅぅ……」
居下家の最古参であり、幼い頃から知っているからこそ言える言葉だろう。
鶴見さん以外の者は馬に乗って鈴音の屋敷へと帰って行った。
鶴見さんは『この家に鈴音様を襲う輩はおらぬし、何かあれば再びお主が守るであろう』と
気を使って屋敷から離れた場所で休んでくれている。
う、うーん……いつもと変わらないのに非常に緊張するな。
婚礼衣装ってだけでこうも気分が違うのか……。
「そ、その……遅くなったけど、良く似合ってる」
「そっそうか……うむ、その……ありが……とう」
山の中と言うほど中でもないが、日が暮れればこうも空気が冷たいのかと思う。
婚礼の化粧をし紅をさした唇が、鈴音の身体がより暖かく感じた。
……
……
……
あとやっぱり酒臭かった――。
・
・
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翌日、固めの儀が執り行われた。
上座から狐の姉妹、末席に鶴見さんらに見守られながら三三九度も無事に済ませられたものの。
緊張したら回数が分からなくなるって本当なんだな……
俺も鈴音も緊張して三回目から四回目に行こうとしてしまった……。
それからは宴が行われたのだが、昨日送ってくれた狐も集まったせいか、何とも獣獣しい大宴会になっていた。
人の姿のままでいられるのはあの姉妹ぐらいだけらしく、狐の姿のまま器用に前足を使って料理に酒を喰らっている。
ちなみに料理と酒は、朝早くからやって来たのごっちゃんとフォティルさん……の正体が四姉さんで、
その人が持ってきた食材をごっちゃんがフルパワーで料理した物だ。
披露宴の最中、頭にコブ作った六姉さんがやってきた。
恐らく七姉さんにやられたのだろう……七姉さんの扇子が折れているあたりどれだけの力で殴られたのか。
『……怒ったナナは手加減を知らない……痛い……迷惑かけたからこれお詫び……』と言っててお香をくれた。
子供欲しい時に使えと言っていたから恐らくあれだろう。
その内お世話になるので大事にとっておこう。お香だけに。
――もう言わない
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さて――そも披露宴も終わり、先ほどの騒動が嘘にも思えるような静寂が戻ってからが本番だった。
ろうそくの火が揺れ、風になびく木々の音しか聞こえない静けさの中、いわゆる初夜に入ったわけだが……。
「す、鈴音……」
「ひゃっひゃいっ!?」
この日の為に用意された布団の上で、二人が面と向かい合って正座する数十分――もう二人してガッチガチだった。
次の展開に移るまで何十分かかったか分からない、俺が動かなければ進まない、動いてしまってはもう止められない。
何を持って夫婦と呼ぶのか、籍を入れたからか、誓いをたてたからか、初夜を共に過ごしてからか――。
もしこの手で掴んだら砂のようにさらさらと崩れてしまいそうなほど儚く脆い存在。
俺はそれが確かであると思いたくてゆっくりと強く鈴音の両肩を掴んだ。
芯の強い瞳はじっと俺の目を見つめている。
先ほどまでのように他のどこにも視線を逸らすことなく、強くじっと"覚悟"を決めた目……。
今更引き返す気は無いのだが、戦国時代からやって来た女の子――
帰れるまで自分の部屋に居候させていた男――ただそれだけの関係から始まった二人。
いつしか想い人とななり――俺と鈴音は二人で共に前に行く"覚悟"を決めた。
そっと唇を合わせゆっくりと布団の上に鈴音を横たえた。静寂の中で響く胸の鼓動はどちらのか分からない。
まな板の上の鯉のような状態の鈴音は何ともいじらしく可愛らしかった……。
強いと思っていたその身体は何と柔らかく華奢であったのかと思い知らされる……。
正直に言えば俺もまだ不安だ――たどだどしい手つきながらも不安で震える鈴音の身体に触れてゆく。
互いに産まれたままの姿、恥じらいながらも与えられる刺激に身じろぎし声をあげる女性――
愛おしさのあまり赤ん坊のように吸い付き、彼女から漏れる熱のこもった声はオスの欲望を掻き立てる。
潤い受け入れる準備が整ったそこは……二十四年間守って来た乙女の部分が失われる時――
潤む鈴音の瞳は覚悟したかのように背中の方に腕を回し唇を求めた……。
合わさった肌に伝わる鈴音の温もりが力と自信を与え――ついに結ばれた。
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始まってからどれだけの時間が経ったのだろう――
全てが終わったと思うと、これまでの疲労と倦怠感から鈴音に覆いかぶさるようにしながら一息ついてしまった。
それを感じた鈴音は、背中に回した腕でそっと優しく俺を抱きしめてくれた。
未通女から女となった際、痛みに耐え引っ掻かれた背中がちょっとヒリヒリする……。
「これで正真正銘、今日から夫婦であるのだな……」
「そうだな……ここまで長かった気がする……」
「…………まだ痛いぞ」
「す、すまん――大丈夫か?」
「娘御が嫁に行くのに涙すると聞くのだが……婚儀ではなくこれに涙するのではないかと思うほどだ」
「それは涙の内容が違う気がする……」
「ふふっ確かにそうであるな……だが私は幸せ者ぞ。心から惚れた者が夫なのであるから……。
母上が申しておった通りであった――惚れた者に乙女を捧げる事はこの上なく幸せなことなのだと」
「俺もそうだぞ……天下一の幸せ者だ。この先も長く……もし死んでも生まれ変わったらまた鈴音と一緒になりたい」
「うむ……ではないな……、はい――私は貴方様とならどこなりとついて参ります……」
そっと優しく唇を合わせ、互いのぬくもりを感じながら目を閉じた――。
狐娘が巡り合わせてくれた二人の運命が最期まで共にある事を祈って――。
※水を金に換える
⇒砂漠で水を売った
3話にて鈴音が「砂糖や塩を持ち帰って売れば~」と言っており
現代では安物でも、必要とされる場所では価値がつくと考えた為
再び橋渡し・狐の嫁入り
⇒最初は狐の橋渡しによって男と女が出会い
今度は狐の嫁入りの橋渡しによって男と女が結ばれた




