其の弐 『宝船』
引き続き、夢違星蓮船の三話です。少し遅れました理由は、また違う本のネタを考えているからです。
次回は涼川のターンです。
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〜英治Side〜
森。
正確に言えば、僕の友人の霧雨 魔理沙の営み、僕自身が居候している店、『霧雨店』の裏手にある魔法の森なのだが――。
何故。何故だ。
「おい、英治、あの化物なんだ?」
どうしてこうなった。
少しだけ、前のことを思い出そう。
えっと。そう、そうだ。確か僕は、霖之助さんの営む『香霖堂』に行ってきたんだ。目的は、ガラクタの中に秘宝でも珍しい武器でも無いか、探しに行ったんだった。
前は西洋の剣があって、結構驚いた。過去には三種の神器らしきモノも出てきたらしく、それと似たようなモノのを僕も想像していたからだ。まあ、見つけた所でロッヅェ君に回されるのかもしれないけれども。
勿論、目当てのモノも無く(あったらその日は超ラッキー)、霧雨店に戻ったら、魔理沙が『森にキノコを取りに行こう』とか言い出して――キノコは魔法の原料になるとかどうとか――仕方なく一緒に行ったら、珍しいキノコ生えてるよみたいなことになって、それに魔理沙が手を伸ばしたら――。
こうなった、と。
「――つまり全部魔理沙のせいじゃんか!」
「お、おう? 何を今更言っているんだ」
魔理沙は右手に構えた八卦炉から、御自慢のマスタースパークを打ちながら、冷ややかな眼で僕を見た。ねぇ、僕被害者なんだけど。加害者じゃなくて、被害者なんだけど。
霧雨魔理沙の我儘に対しての被害者なんだけど。
どうしてそんな眼で見られないといけないんだよ。
「というかさ、マジでなんだ? この化物、恋符が全然通らないぜ」
「いや――」
化物。それは、現時点で僕達の眼の前にいる、木――、というか、植物というか、とりあえず、木や枝や花や草や根の――、集合体を指している。
それはまるで意思を持っているように。
僕達を攻撃してくる。
そしてそれは、魔理沙の得意な極太レーザーをモノともしない。それは何故か。答えは至極単純。
「貫通した場所を他の木で補っている――」
言いつつ、僕は手にした小瓶を右手で握り割った。破片が手に刺さるが、まあ気にしない。
小瓶の中身は水。何の変哲も無い、ただのH2Oだ。それに加え、僕の血液。その二種類の液体が蠢き始め――。
「断零翔」
一言分の息を吐き出し、その刀の形を成した液体を、植物の化物へと振るった。
居合斬りの要領で、僕は化物の腕(と見られる部位)を三本、斬り落とした。
斬られた腕は、トカゲの尻尾のようにのたうちまわるだけで、再生する気配はない。
「……なるほど。分かったぜ」
魔理沙が言った。次にやることは何となく予想がついていた。
「マスタースパーク……、応用編ッ!」
それは、まるで紅魔館の吸血鬼、フランドールが扱うレーヴァテインのようだった。八卦炉を箒の掃く部分に取り付け、そのままマスタースパークを八卦炉から出しっ放しにして、それを持ったのだ。
ブレイジングスターの応用編かもしれない。
と、ここで僕は気付いた。今、僕は魔理沙の化物を挟んでの対角線上にいる。今魔理沙があのレーヴァテインもどきを振り下ろしたら、僕の腕や脚ももげると言うことに……。
しかも、いつも無慈悲なことをする魔理沙は、僕がその射程圏内に入っていても御構い無しにそれをぶっ放すだろう。それを僕は強く恐れた。――が。
「三秒だけなら待つぜ?」
慈悲はあった。
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三秒と言ったが、あれは虚言だった。
正確には二秒しか待ってくれなかったのだ。
「まー、結果オーライってやつだぜ」
「いっぺん同じことを言ってみたいよ……」
毎回、僕は言いそびれているが。
しかし、結果オーライと言えば結果オーライなので、それ以上要らない口は挟まない。魔理沙は、倒した化物の後ろにあるお目当のキノコをもぎ取り、自分の帽子の中に入れた。
「え? 髪が胞子塗れになるよ?」
「良いんだよ」
良いのかよ、と言ったが、本当にどうでも良いらしい。そのまま鼻歌を歌いながら、魔理沙は帰路についた。
と、いうことは……。
「ほら英治、帰るぜ」
「えー……。僕、魔法の失敗に巻き込まれたくないんだけど……」
事実だ。今まで、僕は能力が使えなくなったり、身体が動かなくなったり、視界がなくなったり――、とりあえず、良いことが全くない結果しかない。デフレ効果しかないゲーム状態だ。
結果『オーライ』ではない。結果『バッド』だ。
「……じゃあさ、宝船、落としてこいよ」
「……は?」
宝船? 何のことだ? しかも話題が唐突すぎやしないか?
「なんかさ、宝船が今幻想郷にあるらしいんだって。ちょっと金目の物がないか探してきてくれよ」
……えらく眼が本気だった。
本当、金品のことになると眼がないよな。霊夢もだけど。
「いや、宝船を見つけてくるだけでも良いんだ、後は私がどうにかするから!」
「さいで……」
なんだこのはしゃぎよう。子供みたいだ。が――。
「……分かった、行ってくる」
断れなかった理由は、魔理沙が八卦炉の発射口をこちらに向けていたからだ。
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