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アメリアの恋人探し  作者: 未羊


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第71話 惹かれ合うことはある

 司教とタビラは、国王と向かい合っている。その間の雰囲気はとにかく険悪そのもの。どうやら、最西国の王家と教会の間には、ずいぶんと根深い確執があるということのようだ。


「司教、いつになったら聖女の跡継ぎが来るのですか」


「そうは申されましてもね。大神殿の方もいろいろと大変のようでして、私どもの要求には応えられないそうですよ」


 国王の質問に対し、司教はすらすらと答えている。しかも大嘘である。

 大神殿が大変なのはそうなのだが、要求に応えていないというのは真っ赤な嘘。実際には聖女としての修行を圧縮して完了させたアメリアがやって来ている。

 だが、それを隠すのには訳がある。

 その一つが、この国王たちの執拗な執着というものだ。

 正直にアメリアのことを話せば、あの若い聖女がどのような目に遭わされるか分かったものではない。なぜここまで王国が聖女にこだわるのかはまったく分からない。

 ただ、世界に存在する西端の国として防衛上の要なことは分かっている。だからといっても、少々こだわりが強いのではないかと考えられるのだ。

 その警戒心があるからこそ、司教たちはアメリアを必死に隠そうとしているのだ。もちろん、表にはそのようなことが分からないようにしているのだが。

 ところが、困ったことにこの国王もまったく退きはしない。どうにか情報を引き出そうとして、司教やタビラに質問をぶつけまくっている。

 そこは他者からの話をたくさん聞いてきている司教とタビラ。国王からのあれやこれやの質問をすべてうまくかわしている。


「国王陛下、ご安心を」


「ニシア様が維持して下さった結界は、私どもがきちんと保持いたしますのでね」


「ぐぬぬぬ……。本当に頼むからな」


 結局必要な情報を引き出せなかった国王は、悔しそうに教会を立ち去っていくこととなった。

 部屋から国王が出ていき、足音が聞こえなくなった時、司教とタビラはようやく安心したのだった。

 だというのに、そんな安心を直後に吹き飛ばされるとは思ってもみなかっただろう。


 司教の部屋を出ていった国王は、どういうわけか素直に城へとは戻らなかった。

 それというのも、国王としての勘が何かを告げているらしく、おとなしく帰れなかったのだ。無駄に鋭い為政者の勘である。

 国王は、どういうわけかアメリアが行くように伝えられた馬小屋の方へとやって来てしまう。そう、為政者としての勘が、この場所へと国王を導いたのだ。


「ここは、教会の馬小屋か。なぜこんなところに私はやって来てしまったのだ」


 当の国王も困惑している。

 国王の周りには誰もいないので、何かあっては大変なはずである。だというのに、国王はこんな教会のはずれの場所までやって来てしまっていた。


「うん? 誰かいるな」


 人の気配を感じた国王が、じっと馬小屋を見る。そこには、犬を引き連れた一人の少女がいた。

 教会にいる馬たちと笑顔で接している少女を見て、国王はなぜか惹かれてしまった。


「ばうっ!」


 その瞬間、ポチが吠える。


「わっ、どうしたんですか、ポチ」


 ポチが吠えたことでアメリアはくるりと振り返る。そこで、なにやら派手な姿をしたおじさんと目が合ってしまった。


「わわっ、どちら様でしょうか」


 驚いたアメリアは、国王に向けて質問を投げかけてしまう。


「驚いたな。教会では神官が馬の世話もやっているのか」


「あっ、そのようです。私は見習いですので、よく分からないのですが」


 驚く国王の言葉に、アメリアはそのように答えている。自分の与えられた役目に忠実なようで、きちんと見習いと答えている。


「君は平気なのだろうか、こういう仕事は」


「別に、大変だとは思っていませんよ。この子たち、結構聞きわけがいいですから、とても楽しくさせていただいています」


 国王の問い掛けに、アメリアは笑顔を浮かべて答えている。実際、これよりも大変なことをやって来たので、アメリアはまったく大変だとは思っていないのだ。

 国王に対応しながらも、アメリアは馬たちの世話を続けている。もちろん、馬小屋の掃除だって行っている。

 目の前でせわしなく動く少女を見て、国王はなぜか心を奪われている。まるで何かを感じ取ったかのようである。


「どうかなさったのですか?」


「あ、ああ……。すまん、なんだか亡くなった祖母に似ていたのでな。時に、名前を聞いてもいいだろうか」


 ぼーっとしていた国王は、アメリアの質問で我に返っている。気になる国王は、思わず名前を問い掛けてしまう。


「私は、アメリアと申します。先日より、この教会で神官見習いとして働き始めました」


「そうか、アメリアか。覚えておこう」


 国王はそういうと、振り返って馬小屋を後にした。自分の中に湧き上がってくる不思議な感情を、危険と感じたからだ。

 さすがに子ども相手にそれはよくないと判断したというわけだ。なんとも良識があるというものである。

 唐突にやって来て、唐突に去っていく国王の姿に、アメリアは一体なんだったのかと首を傾げてしまっている。

 ただ、ポチがかなり警戒しているために、会ってはいけなかった人物なのかなとほんのり思う程度である。

 気にはなったものの、言いつけられた馬小屋の作業はまだ終わっていない。ひとまずさっきのおじさんのことは置いておいて、アメリアは作業を再開するのだった。

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