自首⑤
村田の話が続く。「海外への移住話が変だと思って、松永さんちの様子を伺っていると、家の中から人の気配がする。どうやら金本一人、残っているらしい。ある日、金本のやつが、でっかいシャベルを買って帰って来るのを見たそうだ。松永家の庭は、既に売り払ってしまっているからな。掘る場所なんてない。シャベルを買ってくるなんて、変だよな。
居間や二階の窓は、時折、開いていることがあるのだが、寝室の雨戸だけは閉めっぱなしだった。それで、妙だと思ったらしい。
その内、金本が松永さんの家を出た。調べてみると、マンションを買って、引っ越して行ったことが分かった。どうだ、益々、変だと思うだろう?」
なかなか観察が細かい。斉藤は有能な探偵であったようだ。「それで、『松永さんの家に入って、ちょっくら中を見てくれ』と頼んだんだが、『それは勘弁してくれ』って言われてな。結局、出所して俺が確認するまで、真相は闇の中だった訳だ」
「松永家の寝室の床下を掘り起こしたのはお前だな?」
「そうだよ。あんたらの手間を省いてやったんだ。寝室の床下を掘り返すと、想像通り、白骨遺体が出てきた。松永さんに決まっている。金本のやつがやったんだ。やつは松永さんを殺害して、財産を奪い、遺体を床下に埋めたんだ。そして、奪った金でマンションを買った。俺はそう確信したね」村田もなかなか鋭い。
「遺体は確かに松永さんのものだったよ。凶器の灰皿も、床下から見つかっている。灰皿で撲殺したようだ。それで、どうした? 金本の行方を探し出して、やつの監視を始めた訳だ」
「ああ、金本の居場所は最初っから、分かっていた。昔の伝を辿って、やつのマンションのまん前に部屋を借りることが出来た。そこで、あいつの様子を監視した。あいつが何時も何処で何をするのか、監視して、徹底的に調べ上げた。勿論、あいつを殺すためにな」
ヤクザ仲間の伝ならば、金本のマンションの向かいのアパートに部屋を借りることなど、訳もなかったことだろう。
「お前を、殺人未遂で立件することだって、出来るんだぞ」
竹村が脅すと、「ふん。そうしたければ、そうしてくれ。俺みたいな屑は、どうせ塀の外ではまともに生きられない」と村田が嘯いた。
竹村はひとつ大きくため息をつくと、「結局、三田敬一の罪を被って捕まり、黙秘を続けることが、金本を殺してくれたことに対する、報酬だった訳だな」
「何とでも好きに言ってくれ。あの夫婦に時間をつくってやれた。俺みたいな極道ものが、少しは人の役に立ったということだ。ところで、今日は何時もの刑事さんはどうした?」
山本のことだ。
「ヤマさんは別件で忙しい」と言葉を濁した。
「そうか。よろしく伝えてくれ。刑事さんが嫌いで黙っていた訳じゃあないからな」村田はそう言って、にやりと笑った。




