表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名探偵の回顧録  作者: 西季幽司
第一章「名探偵の死」
PR
69/72

自首④

「あの日のことを聞かせてくれ」

「あの朝、何時も通り金本家を見張っていた。そうすると、どうも様子がおかしい。その内、家の中に旦那の姿が見えた。嫌な予感がしたね。俺は慌てて、マンションに駆けつけた。

 俺がマンションに到着した時、部屋には既に旦那の姿はなかった。正直ね、先を越された! って思ったよ。昼間は奥さんが居るし、夜は子供がいる。金本の野郎、なかなか一人にならなかった。機会を伺っている内に、旦那に先を越されてしまった」

「奥さんや子供は手にかける気がなかったと言うことか?」

「金本の野郎が松永さんを手にかけたことは分かっていたが、やっぱり、あいつの口から直接、聞いておきたかった。どうせ、あれこれ言い逃れをするに決まっているが、蛇の道は蛇、あいつに口を割らせることなんて、俺にはお手のものさ。あいつを締め上げて、真相を吐かせるつもりだった」

「金本が娘を幼稚園に送った帰りに、やつを拉致、監禁して、松永さんの事件の真相を白状させれば、それで良かったんじゃないのか?」

「あんた、素人だな。俺だって、あいつが娘を幼稚園に送った帰りに、拉致してしまえば良いと考えないでもなかったよ。でもな、日中、大の大人を一人で拉致することが、どれだけ大変なことか、あんた、分かっていないようだな。子供でさえ、人知れず浚うのは大変だ。それが、大の大人となると――

 特に俺のような男が、日中、人目につかずに、大人を誘拐するなんて、不可能に等しい」

「ふん。経験豊富って言うことか。それで、金本家に着いてどうした?」

「あの惨状を見て、直ぐに旦那の仕業だと分かった。だが旦那が捕まったら、奥さんはどうなる? 旦那なしじゃあ、一日だって生きられないぞ。どうせ、金本は俺が消すつもりだった。俺の代わりに金本を消してくれたんだ。旦那の罪を背負って何が悪い。

 所詮、素人だよな。現場に色々、証拠を残して行きやがった。結構、苦労して指紋やら、血痕やらを消して回った。そして、証拠を持って、マンションを出た」

「そう言えば、現場から警察に通報しているな。何故、そんなことをしたんだ」

「そりゃあ、早く俺を捕まえて欲しかったからさ。そうすりゃあ、旦那は当分、自由だ。おたくらが、俺に目をつけてくれるのを、じりじりしながら待っていた。もし、旦那に疑いの目が向くようだったら、『俺がやりました』って、名乗り出るつもりだった」

「ほう、えらく親切なものだな」

「ふん! 信じないなら、信じなくて構わない」村田が開き直る。

 竹村が話題を変えた。「ところで、確信は持てなかったにしても、どうやって金本が松永さんを殺したことを知ったんだ? 事件当時、お前は刑務所にいたはずだ。一体、どうやって、金本のことを知ったんだ?」

「ふふ、そのことか。ムショに入る時にな、ちょっとした知り合いに松永さんのことを、それとなく見張っておいてくれと頼んでおいた。昔から良く知っているやつでな。ちょっとした貸しがあった。松永さんの近所に住んでいたので、丁度、良かった。それに、あいつ、土地を買ったりして、松永さんと付き合いがあったからな。

 金本から松永さんが海外移住をすると言う話を聞いた時、妙だと思ったらしい。そんな話を松永さん本人から、直接、聞いたことが無かったらしいからな」

 竹村の脳裏に、皺だらけで長い顔が浮かんだ。村田の言う知り合いとは、ビル・オーナーの斉藤のことだ。証言が二転三転して、変だとは思っていたが、村田の依頼で松永を見張っていたのだ。

 と言うことは、斉藤は初めから松永を殺害したのが、金本だと疑っていたことになる。「くそっ! あのはげ親父め」と竹村は小声で愚痴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ