罪③
「やりましたよ! 竹村さん」と木村が興奮して電話をかけてきた。「園田の車のトランクから爪楊枝が見つかったのです!」と言う。
千葉県警が鑑識を入れて、園田の車を調べてくれた。その結果について西新井署に連絡があったようだ。
「爪楊枝ですか?」
「ヤマさん、使いかけの爪楊枝を持ち歩く習慣がありました。大体、トランクに爪楊枝が落ちているのって、変じゃありませんか。千葉県警では鑑識に爪楊枝のDNAまで調べさせたそうです」
「その結果――?」
「その結果、ヤマさんが使ったものであることが分かりました。ヤマさん、園田のトランクに入れられていたのです」
「繋がりましたね」
「繋がりました」
今まで抑えていた言葉が口をついて出た。「園田がヤマさんを殺害した」
「でしょうね。両親が離婚してからの足取りを調べてみましたが、園田は辛酸をなめ尽くしたようです」
「苦労したのですね」
「はい。哀川先生は、母方の両親に引き取られた後のことは知らないとおっしゃっていましたが、その母方の実家は、決して豊かではなかったようです。園田は新聞配達のアルバイトをしながら、家計を助けていたみたいです。その上、園田が中学に上がって間もなく、祖父が脳梗塞で半身不随となってしまいました。母親は独身生活を謳歌していて、実家に寄りつかなかった。園田は祖父の介護まで背負ってしまったようです」
「それは大変でしたね」
「抑圧された生活が、園田の人格を破壊して行ったのかもしれません。家計を支え、介護をし、表向きは孫の鏡のような人物ですが、園田に関しては悪い噂が多いのです」
「悪い噂?」
「高校を卒業してすぐに働き始めたようですが、学生時代、同級生の虐めの主犯格として名前が挙がっていました。出席日数もギリギリで、授業態度も悪かったようです。高校を卒業後、工務店に働きに出ました。最近、要介護だった祖父を亡くしています。頭の上の重石が取り除かれた気分だったでしょう。それでタガが外れてしまったのか、仕事に身が入っていないと、クビを言い渡された直後でした」
「破れかぶれになっていた可能性がある訳ですね」
「そんな折、ヤマさんが尋ねて来た。ヤマさんは忘れていたようですが、園田は覚えていた。余計なお世話で、幸せだった家庭を破壊した憎いやつが刑事になっている。許せない。そう考えたとしても不思議ではありません」
「隣人のことで情報があると、ヤマさんを呼び出して殺害した――という訳ですね」
一瞬、間があってから、「そうだと思います」と木村が答えた。
「そして、遺体を捨てに千葉まで行った」
「そして、帰り道、事故を起こして亡くなった」
「人を殺したのです。極度の興奮状態にあったのでしょう。一刻も早く遺体を捨てた現場から立ち去りたかった。スピード感覚を失っていたのでしょう。無謀な運転を繰り返し、自滅した。それが事件の真相のような気がします」
「私もそう思います」
「ふう・・・なんという負の連鎖なのでしょうね」竹村がため息をつく。
「金本一家惨殺事件がヤマさんと園田を再会させた。園田は遺体を捨てに出て、あおり運転を行って亡くなった」
まさに負の連鎖、連鎖殺人事件、ひとつの殺人事件が次の殺人事件を生み出し、その殺人事件が、またひとりの犠牲者を生み出してしまった。
「・・・」最後は二人、無言になってしまった。




