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初めての宴

 大広間には大勢の森人がおり、複数の木の台には様々な果物や何かの種や茎か?多種多様な物が置かれていた。少数ではあるが、何かの肉や魚もある。


「アイル様。これらは森の恵みです。わたしたちエルフの食事がお口に合うのかわかりませんが、満足していただければ幸いです。」

『初めて口にする食べ物が多くて、すでに楽しめていますよ。』


「アイル殿!我らエルフは、ヒュームよりも果実酒の出来が良く、種類も豊富ですからな!じゃんじゃん呑みましょうぞ!ワハハハハ!!」

「アイサー、あなた既に酔っているのね。」

「姉上!何を咎めるのです?今日を生き延びたのです!森に感謝を、アイル殿に感謝を!ワハハハハ!」


 アイサーは愉快な声で笑いながら、アイサーと同じように大きな声を出している森人達の固まりへ向かっていった。


「アイル様申し訳ございません。アイサーは普段は頼もしいのに酒を飲むといつも愚弟に成り下がるのです。エルフにしては豪快なところが一部の女性には受けているみたいなのですが。」


 メイサーは、なんだかんだ言いながらも弟が自慢らしい。それにグイグイ来るようなところは姉弟そっくりだ、と思ったが言わないでおこう。それにしても酒というのか、木の容器に並々と注がれている液体がある。あれがアイサーを陽気にさせているのか。

 木の容器の一つを両腕で抱えて一口。何とも言えない豊かな香りが鼻を突き抜ける。美味い。これは幾らでも飲めてしまいそうだ。容器を傾ける腕が止まらない。


「あの、アイル様?」

『はい?どうかされましたか?』

「ハハハハッ!いやー、アイル殿は豪気な方ですね。」


 メイサーから声がかかり振り返ると、メイサーの後ろから叡智の番と呼ばれていたリンシーが笑いながら近づいて来た。


「いやいや、申し訳ありません。普通は樽から、こちらの木のコップに注ぐ物でしてね。顔色一つ変えていないところを見ると、なかなかの酒豪のようだ。」


 周りを見渡すと他の森人達も目を点にしてこちらをみていた。食事にばかり目がいっていて、周りの所作を観察しておけばよかったと反省した。


『申し訳ございませんでした。所作に疎くて。』

「いやいや!良いのです!種族も違いますからね。ドワーフなんて、自分の図体よりも大きな樽を担ぎ飲みするのです。お好きなように楽しんでください。」

『あ、あはははは。』


 何とか誤魔化せたようだ。ドワーフ殿とやらに感謝しなければならない。


「アイル殿、果実酒は何種類もありますので気に入った物があれば土産にお渡ししますよ。」

『ホントですか!?ありがとうございます!』


 今度はコップに注ぎ何種類か飲んでみると、どれも味も香りも豊潤でそれぞれ違う特徴があり面白い。

スッと爽やかに引くものや、濃厚な香りを長く楽しませてくれる物など様々だ。


「ところでアイル殿の種族はドラゴニュートなのですか?立派な翼をお持ちですね。」

『そ、そうですね。』

「わたしがヒュームの街で冒険者をしていた時に稀にですがドラゴニュートにも合いましたが、アイル様は顔が我らエルフやヒュームに近いのですな。」

『え、ええ。小さき、う゛うん、ドラゴニュートにも色々とありまして。』

「左様ですか。あまり里から出てない者たちですからね。自らを変わり者と名乗り、修行と称して冒険者をしているくらいです。あまり拝見した事はありませんが、うん。なかなか実に興味深い。」

『は。ははは。』


 リンシーにじろじろ見られ、なかなかに落ち着けない。変化の参考にしたが、今まで小さき物の区別など特に気にしていなかったし、本当はドラゴンで変身しているとは明かせなかった。

 リンシーにあやこれやと質問攻めにあい、テキトーな返しをしていると正面からやってくる森人から声がかかった。


「リンシー、ジロジロと見るのはアイル様に失礼ですよ。申し訳ございません、アイル様。」


 長のサークラ様が見兼ねて止めてくれるようだ。


「改めまして、この度は村の者の命を救っていただき誠にありがとうございます。」

『いえ、私もこのような宴を開いていただいて。』

「私たちエルフは、肉は最低限しか食べない者が多く、果物や豆などばかりなのですがお口にあっておりますでしょうか。」

『初めて口にするような物ばかりで、どれも美味しいですよ。』

「それは良かったです。アイル様は相当な酒豪のようですし、それに戦闘の腕も立つとか。あのアイサーが興奮しながら教えてくれましたよ。今度、修行をつけてもらうとか。」


 いやいや、そんな約束した覚えもない。メイサーには空間魔法を暇だったらといったが、アイサーには訓練を積めばぐらいしか言っていないはずだ。前のめりが過ぎるだろう。


「アイル様。不躾なお願いなのですが、しばらくこの村に滞在しフォレストタイガーの群れから御守り頂くことは可能でしょうか。もちろん、相応の待遇・対価をご用意しますし長期間とは言いません。森の神がこの村に訪れるまでで良いので。」

『あ、あの。私からも教えていただきたい事があるのですが。森の神や天空の神というのを耳にするのですが、神とはどのような存在なのでしょう。』


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