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ヘンタイはタイヘンだ  作者: 窓井来足
第六章
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第六章 その1

亜犯、偉止、宇焚という異能力者の強敵を乗り越え。

ついに敵のボスの部屋にたどり着いた夕輝。


しかし、そこまでの間に今回の事件への依頼主である釉美。

そして頼りになる相棒の観基も倒れてしまった。


さて、相棒抜きで一人夕輝はどうするのか――

 エスパーの人間が、その相手の思考や感情を読む能力を人々に疎まれ孤立する。

 超能力者を扱った物語の展開としてはままある話だが、観基(みき)の場合もその例に漏れず、幼い頃は周囲から気味悪がられていたらしい。


 また、幼い頃の観基は自身の能力が制御できていなかったともいう。

 その為、知りたくもないのに他人の心の内が自分の頭の中に入ってきてしまっていたらしく、観基はそれを嫌がって他人になるべく近付かないようにしていたそうだ。


 こうして、相手から避けられるだけではなく、自分からも相手を避けるようにして幼い時期を過ごした観基は、成長してその能力がほぼ制御できるようになった後も人付き合いが苦手になっていた。


 とはいえ、人付き合いが苦手に育った観基は、決して人付き合いが嫌いに育ったワケではなかった。

 むしろ、彼女は望むようになっていた。

 自分の、エスパーの能力を持っていても気にせず友人になってくれる。そんな人物を。


 そして観基は考えた。

 普通の人間なら、観基のようなエスパーの能力を、例え本人が制御できるとしても気味悪がってしまうのかもしれないが、自分と同じように特異な能力を持っている人の中にならば、自分の気持ちを理解してくれる人がいるかもしれないと。

 そして、そんな人物の中には、友人になれる人がいるのではないかと。

 ならば、そういう仲間を集め、そのお互いがもっている特異な能力を活かして仕事をすればよいのではないかと。


 そう思い至ったため、観基は特異な人物が集りやすいこの雄飛町に引っ越し、そして超常現象を扱う仕事を始めたワケだが。

 残念ながらそう上手くはいかなかった。


 何故なら観基の能力はほぼ制御できるようになったとはいえ、一緒にいる時間が長くなればなるほど相手の心を無意識に読んでしまうという部分に関してはどうにもできていないということが、この町で人と付き合っているうちにわかってきたからだ。


 こうして、自身の能力の問題点に気がついた観基は、結局、一緒にいる仲間を作るのを諦め、

一人で事務所を構えて仕事をする事に決めたのだった。

 そして、その状況は俺と観基が出会うまで続いたのだった。


 さて。

 じゃあなんで俺は観基の側に普通にいることができるのか。


 それは俺がエスパーの能力でも内面を読むことができない特異な精神をしているから――では、当然のことながら、ない。

 今回の事件の最中に何度か行っているように、観基は俺の思考をいともたやすく読むことができる……のだが。


 が、俺はその事を気にしない。

 別に思考を読まれても構わないと思っている。


 すると、観基には俺の思考が全て見えてしまうのだが。

 結果として、それがかえって俺の思考の深いところを観基に読めなくしている――とのことだった。


 どういうことか。

 観基が俺に説明したときにはそれを本に例えてこう説明してくれた。


「本を読むとき、一部分だけに集中すればそこに何が書いてあるのかわかるけど、一ページ丸ごとを目にしても『そこに文章が書かれている』程度のことしかわからないよね? それと同じ事が私の頭の中で起こっているんだと思う」


 と。

 まあ、そんな感じで。

 俺の内面の深いところは観基には読めないのだった。


 そしてその事によって、俺は観基にとっていつも一緒にいることができる友人、相棒のような存在となっているワケだ。

 観基はこの事に関して、


「相手が何を考えているのか、本当のところがわからないからこそ、友情とかそういうのって成り立つんだよね」


 などと言っていた。


 人の心がわかり過ぎたために友人ができなかった観基が言うと説得力のある言葉だ。


 で、観基は俺に出会ってから「一人そういう思考の人間がいたんだから、この世の中には他にも思考を読まれても気にしない人がいるかもしれない」と考えるようになったらしい。


 とは言っても自分の頭の中を読まれても気にしないヤツなんて珍しいらしく(自分がその珍しいヤツなんで、イマイチ実感がないけど)今のところ、観基の友人は俺しかいない。

 そう、いないのだ。


 だから観基が俺に対して、過大評価をしているというか、頼りになると思い込んでいるというか、そういうところがあるのは俺もわかっていたのだが。

 まさか、敵のボスを俺だけに任せて意識を失ってしまうなんて。

 俺は一体、この先どうしたらいいんだろう。


 まあ、それは考えるまでもなく一人でボスの部屋に乗り込んで、事件を片づければいいんだろうけれど。

 それが、果たして俺一人の力で可能なのだろうか?


 何せ思えばここまでの間、現われた敵、起こったトラブル、そのほとんどを観基が一人で片付けていると言っても過言ではない状況だ。

 つまり、俺は今回の事件、色々と頑張ってはみていたが結局のところ、ここまでほとんど役に立っていないということだ。

 そんな役に立たないヤツが一人で敵のボスに立ち向かって、それで何とか事件にケリをつけるなんてことができるとは、客観的に見たらとてもじゃないが思えない。


 もし、これが物語だったら「仲間に後を任された事により、覚悟が決まり、気合が入って強くなる」なんて展開もあるのだろうが。現実的にはそういうもので何とかなるというものには限度があるワケでそう簡単にはいかないというか。

 気合や覚悟でどうにもならないってのはここまでの戦いで経験しているからより一層、上手くはいかないと思えてくるというか。


 ……なんて。

 最初はそんな弱気なことを考えた俺だが。


 倒れた観基に駆け寄って、その何かに安心しているような寝顔を見て、そんな情けのないことを考えている自分が恥ずかしくなった。


 観基は、ここまでほぼ一人で事件を解決してきた。

 そんな観基が、この先を俺に任せられると踏んだから自分の全ての力を使って宇焚(うふん)を倒したのだ。

 ならばその期待に応えるために俺は先に進まなければならない。


 今は現実的な事を考えて冷静になったフリをして、落ち込んでいる場合ではない。

 むしろいつものように、「こんなとき、ヒーローなら一人でも事件を解決してカッコよく決めるはずだ」とか考えて、その勢いで進んでいくべきところだ。


 大体、あれだけヒーローがどうだとか、自分が主人公になったらこうだとか考えておきながら、こういう状況になった途端に怖じ気づいてしまうのでは話にならないというか、カッコ悪過ぎる。

 更にいえば、物語に登場するヒーローに憧れておきながら、「気合や覚悟で解決なんてありえない」なんて冷めた事を考えてしまっているというのも問題があるだろう。そうやって考えているようなヤツに先に進む希望は与えられないはずだ。


 確かにここまでの戦いでは気合や覚悟でどうにかなったりはしなかったが、だからといって今から敵に挑むというときに自分のテンションを下げるようなことを考えるというのはヒーローを目指す者としてはあるまじき態度だろう。

 ここは「ヒーローなら、仲間に後を任されたらその期待に応えるのが当たり前。それができなければヒーロー失格」ぐらいの事を思って突っ走った方がいいはずだ。

 そうしなければ俺は「口先だけでいざというときには何の役にも立たないヤツ」ということになってしまう。


 そんなヤツになってしまうのは嫌だ。

 ならばここは意地でも進むしかない。


 よし。

 やろう。

 覚悟を決めてやってやろう。


 そう、決意した俺は。

 観基のことを頼むため、事務所に連絡をしてから。

 ボスのいる部屋の扉の取っ手を握り。

 そしてドアを開けた。


(続く)

次回、ついに敵のボスと夕輝の戦いが幕を開ける!!

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