51話 見た目に騙されるな
国の中を歩いているととても庶民的で顔がとてもきれいな人が正面から歩いてきた。
(あの人の顔綺麗だなぁ……顔のケアに苦労してるんだろうなぁ)
通り過ぎていくととてつもない殺気と共に嫌悪感が襲ってきた。
(あの人が私の横を通り過ぎたら急に殺気が……!?)
私は振り向き、あの人を見ようとした。だがどこを見てもあの人は居なかった。
「……いったい何だったんだ?」
「どうしたんだ?急に振り向いて」
マルセラは不思議そうに私に問いを投げかけていた。
(一瞬のうちに消えたのか?透明化?にしても嫌な殺気だな)
「さっきすれ違った人が気になるのか?」
「うん、さっきすれ違った人から私に殺気を向けてるように感じ取れたんだ」
「だろうね。私も感じ取れたんだ。そういえば私のペンタグラムの内容知らないのよね?」
「うん、知らないね」
「私のペンタグラムはあそこにいる」
「いる?まるで人のような言い方だな」
するとマルセラはどこかに連れていかれるような足取りで宿がある方角に歩き出した。
「ちょっとマルセラ!?」
私とナナシは走ってマルセラの後をついて行った。マルセラは宿に入っていった。
「一体なんだ?この連れられているような感覚は」
すると私たちが部屋を借りている場所から物音がした。
「なんだなんだ!?」
すると窓から何者かが飛び出してきた。
「セラフィス!?どうしたの!?」
「いやぁ……あれ敵」
「はぁ!?」
「私の足元に及ばないけどさすがに不意打ちは死ねる。だけどあいつの後ろにもう一人いたんだよな……そいつは確か弓を持っていたな」
「それが私のペンタグラムだ」
宿からマルセラが出てくると後ろから何者かが出てきた。
「敵か!?」
「いいや、私のペンタグラムだ。像を飛ばして遠隔攻撃をするんだ。シンプルだけど不意打ちが決まれば強いんだ」
「へぇ……そうなんだ」
すると後ろから槍が飛んでくると象の肩を貫いた。
「ウッ……言おうとしたんだけどなぁ」
「どうした!?」
「私の象が食らったダメージは私にフィードバックされるんだ。像が肩に槍を受けただろう、私にその槍のダメージがフィードバックされるんだ」
「なるほど、つまりデメリットもあると」
「そう言ってる間にまた槍を投げてくるよ!?」
私たちは物陰に隠れ、一旦作戦を練っていた。
’(恐らくここで粘っているとシュバルァーさんが駆けつけてくる。駆けつけてくる前に私たちで始末するしかないか)
「セラフィス、あの槍って何か特殊能力はないよね?」
「ある、傷が一定数越えたら即死だ」
「なるほどな……わかった」
私はとにかくこの状況を打開できる策を考えていたが全く思いつかない。
「この状況を打開できる策が無いんだけど!?」
「それは私も一緒、どうする」
「どうするって言われても私にはどうしようもできないよ!?」
その時、マルセラは像を出していた。
「私の象は壁や床、なんなら地面を貫通するんだ。だから後ろに視線を向けさせることが出来るのだ」
「後ろに視線……?」
その時、私の脳内でとある戦術を思いついた。
「マルセラは奴の視線を後ろにしておいて」
「おっけー」
マルセラが生み出した象は奴の後ろに現れ、弓を射る。その時私はすでに動いていた。
(土のエレメンタルで坂道を!そして私のペンタグラムで跳躍力増強!)
私は坂道を思いっきり駆け上がり、思いっきり上空に飛びあがった。
「来た!ここからなら狙える!」
私は上から奴を狙い撃ちできる場所に飛びあがり、じっくりと狙った。だがそれはどうやら予見されていたようだ。
「うおっ!?」
私の胴体に槍が飛んできていた。
「ゴフッ」
槍は私の腹を貫き、思いっきり私は吐血した。
「こりゃ……やべぇ……」
私は地面に叩きつけられ、セラフィスが近くに寄ってきた。
「なるほどな……ゴフッ……奴のペンタグラムが」
「その前に治療でしょ!?」
「そうだな……槍抜いてくれ、慎重にお願いだ」
「分かった」
セラフィスは慎重に槍を引き抜いた。血がいっぱい出る中、私は奴のペンタグラムの可能性を2つ考えていた。
「奴のペンタグラム、恐らく危険を察知する能力か空気の揺れを感知できるペンタグラムかもしれん」
「考えられるのはそれか……」
「奴は一瞬のうちに私に槍を投げていた。マルセラの矢を避けつつだ」
「なるほど、傷は治ったけど痛みは残ってるだろ?」
「まぁ多少残っているけど許容範囲だ」
すると私はセラフィスにこう言った。
「セラフィスはまた別の方向から攻撃をお願い、出来れば薙ぎ払いの方がいいかも」
「分かったよ、だけどスイはどうするの?」
「突撃する」
「突撃って……馬鹿でしょ」
「普通に考えて突撃は馬鹿のすることだ、だけど奴のペンタグラムの穴を突くんだ」
私は別の方向に歩いて行くとさっきと同じように飛び跳ねた。
(今度は3人で同時に叩く!)
さっきより前のめりで飛んだ私はさっきと同じように槍が飛んできたが肩に突き刺さった。
「痛ってぇ!!」
そのまま私は奴がいる場所に転げ落ちた。血がどんどんと流れていっているがこれでいいんだ。
「まずは一人、すべてはヴァルチャー様のために」
奴はどんどんと私の方にやってきて死亡確認に来ているようだった。
「どれどれ、戦果はどうだ?」
「オーノーだズラ、お前はもうだめだズラ、逆にお仕置きされてしまったズラ、エレメンタルを撃ち込まれてしまったズラ」
「は?馬鹿言うな」
その時、私の腕から電気が流れ出し、血を通って奴を痺れあがらせた。
「アバババババ」
「ヘヘッ、血ってのは本当に電気を通しやすいんだよな~?」
電気のエレメンタルのおかげでとりあえず奴を気絶させ、セラフィスの到着待ちだ。だけどさすがに痛いのはどうにかしてほしいものだ。
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