~エピローグ~ 悠斗視点
~エピローグ~
朱里との二度目のキス。
頬の痛みを忘れるような甘い時間。
どちらともなく唇を離す。
「……」
「……」
再び訪れる沈黙。
しかし、先程とは違う雰囲気がそこにはあった。
「……名前。朱里って呼んでくれたね」
「うん。朱里も、俺の事、悠斗って呼んでくれたね」
「うん。呼び捨てにしてくれたの、嬉しかったから」
「俺も、朱里から呼び捨てにされたのは嬉しかった」
二人で、笑い合う。
こんな時間が、随分と久しぶりのような気がした。
「ねぇ、悠斗?」
「なに、朱里」
「……責任、取ってくれるんだよね?」
彼女の言う、『責任』とはあのファーストキスのこと。
朱里は言った。最低のファーストキスだったと。
「勿論。俺の一生をかけて、朱里を幸せにする」
彼女が俺に抱き着いてきた。
「幸せにしてね、悠斗。信じてる」
「あぁ、絶対に。約束するよ」
俺がそう言うと、朱里は身体を少し離す。
そして、俺の後ろを見て、固まった。
「……え?どうしたの。もしかして後ろにお父さん?」
ま、前もそんなことがあったよね!!??
俺がそう言って、後ろを振り向こうとした時だった。
「見ちゃダメ!!」
「え?」
朱里はそう言うと、俺の顔をガシッと掴む。
そして、そのまま俺を抱き寄せ、三度目のキスをした。
「……ん」
「…………」
一度目よりも、二度目よりも、強く、強く、唇を押し付け合う。
そして、
「…………っ」
「…………んぅ」
朱里の舌が俺の口の中に入ってくる。
俺はそれを迎え入れ、絡め合う。
早朝の公園に、唾液が絡み合う音が響く。
ザッザッ……
誰かが立ち去るような音がした。
見られてたのかもしれない。
なんて思考が読まれてたのか、朱里が更に強く俺を抱き寄せる。
彼女の身体の温かさと柔らかさが、俺の理性を溶かしていく。
お互いを求め合うようなキスは、とてもとても、長かった。
そして、唇を離すとお互いの口から赤みがかった唾液が糸を引いた。
俺の血だった。
口の中が切れていたらしい。
……悠斗は、渡さない……
「………え?、今、なんて?」
彼女から囁かれた言葉を、俺は聴き逃した。
「うぅん。何でもないよ」
彼女は笑った。
俺はその表情に、彼女の独占欲のようなものを見た気がした。
俺の知らないところで何かが始まっている。
そんな感じがした一幕だった。




