第十一話 ~詩織との二回目のデート~ ⑩
第十一話 ~詩織との二回目のデート~ ⑩
「お待たせしました、悠斗くん。こちらが夕ご飯になります」
「これはすごく美味しそうだね。と言うか……スッポン祭りとでも言った方が良いのかな?」
お手洗いから戻って来た詩織は少し元気が無さそうに見えたが、少しすると元に戻ったように見えた。
そして、俺の目の前に出されたのはスッポン料理のフルコースとも言えた。
「個人で料理をするのは難しい。とは聞いていたんだけど、ここまでしっかりと調理をするのは凄いね」
「ふふふ。コツさえ掴めばそれほど難しいものではありませんよ。今は動画とかでも見れますからね」
「確かに。大きな魚とかを捌く動画とかもあるからね」
そして、俺と詩織は「いただきます」と声を揃えた後に夕ご飯を食べ始める。
俺はまずスッポンのスープから口をつけた。
「これは美味いな……」
「ふふふ。スープもご飯もおかわりはありますからね?たくさん食べてください」
「ははは。それは嬉しいな。それじゃあ遠慮なく食べて行こうかな」
そう言って俺は詩織から用意された『精力料理』をたらふく食べて行った。
「今日はとても楽しかったです。ありがとうございました、悠斗くん」
「そう言ってくれると嬉しいな。俺も楽しかったよ、詩織」
スッポンの炊き込みご飯を咀嚼して、飲み込んだ後に俺はそう言葉を返す。
「もうすぐ中間テストですね。勉強は進んでますか?」
「当然だろ。詩織には悪いけど、今度こそ学年首席の座はいただくから」
「ふふふ。そう簡単には渡しませんよ。何故なら私は全教科満点を取る自信がありますからね」
「だったら同点で同率の首位になるだろうね。その場合は俺の勝ちという話だったね?」
俺がそう話を振ると、詩織は首を縦に振る。
「そうですね。その場合は賭けは負けで構いませんよ」
「詩織には悪いけど、そのルールは変えるつもりは無いからね。まぁ賭けとは別に君とは『特別な一日』をプレゼントする予定ではいるけど」
「誕生日ですよね。ふふふ。今から楽しみにしてますね」
「今日よりはもう少し多めに『心』をあげようとは思ってるよ」
俺がそう言うと、詩織は少しだけ涙目になりながら俺の手を取った。
「嬉しいです。大好きです、悠斗くん」
「あぁ、俺も好きだよ詩織」
こうして、俺たちは話をしながら夕ご飯に舌鼓を打ち、全ての料理を美味しく食べ終えた。
「ご馳走様でした、詩織」
「お粗末さまでした、悠斗くん」
食べ終わった食器を台所に持っていき、流しに入れて水で軽く汚れを落としておいた。
こうしておくと洗い物が楽になるからだ。
「ふふふ。ありがとうございます、悠斗くん」
「いや、この位は当然だよ」
そして、ソファの上に座っていると隣に詩織が腰を下ろした。
「キスしてください、悠斗くん」
「うん。いいよ、詩織」
彼女の身体に腕を回し、抱き寄せる。
そして唇を重ね合わせて舌を絡ませあう。
俺と彼女の雫が絡み合う音が、静かな部屋に響いていく。
「好き……好きです……」
耳元で彼女の甘い声が聞こえてくる。
理性が崩れていくのを感じる。
『一線は越えない』
そう決めてここに来ている。
それ以外の行為なら全て許容しようとは思ってる。
とても大切な女性。彼女とは違うけど、詩織は俺にとってかけがえのないもの大切な存在だからだ。
そして、どちらともなく唇を離したあと、詩織は申し訳なさそうな表情をしていた。
……どうしたのだろうか。
不思議に感じた俺は彼女に聞いてみることにした。
「どうしたんだい、詩織。何かあったのか?」
お手洗いから戻ってきてから少しだけ様子がおかしかった。
それと関係があるのかな?
そう思っていると、どうやらそれは当たりだったようだ。
「本当は、今夜ここで悠斗くんと『初めて』をしようと思っていました」
「まぁ……そういうつもりでいるだろうな。とは思っていたよ。俺としてはそれには応えられない。そう伝えるつもりだったよ」
「でしょうね……それでもとは思っていたのですが、私の事情でそれが出来なくなりました」
詩織の事情?あぁ……もしかして
「なるほどね。理解したよ」
「……すみません。ですのでそれ以外で悠斗くんにご奉仕をさせてもらいますね」
「あはは……そうか、まぁ無理はしないでな。辛いって聞くからさ」
予想外の出来事のお陰で、詩織と一線を越えると言うことが無くなった。
まぁ良かったと言えば良かったけどな。
そんなことを考えながら、俺は詩織と甘い時間を過ごして行った。




