第十一話 ~詩織との二回目のデート~ ③
第十一話 ~詩織との二回目のデート~ ③
電車から降りた俺と詩織は手を繋いで駅の中を歩く。
そして、改札口を出たところで目の前にはオシャレなカフェが見えた。
「あれが話をしていたカフェなんだ。落ち着いた雰囲気でコーヒーやスコーンが美味しいと評判なんだ」
「そうなんですね。実は私、コーヒーが好きなんですよ」
彼女がコーヒーを好きと言う話は、実は斉藤さんから話を得ていた。
詩織と仲良くなって色々話す中で知り得た情報らしい。
「斉藤さんからその話を聞いてね、詩織が好きそうな店を探していたんだよね」
「そう言えば、彩さんにお話した記憶がありますね。悠斗くんと彩さんは結構仲が良いと聞いてますが?」
少しだけ探るような彼女の視線。
斉藤さんに対しては『異性の友人』という感情しか持ってない。以上でも以下でもないからな。
石崎が彼女に対して恋慕をしているみたいだけど。
俺から彼女に対しては特に無いかな。
「一年の時から良く話はしてたかな。だけど異性の友人という感情しか彼女には持ってないよ」
「ふふふ。そうですか。彩さんにまで手を伸ばしていたら、流石の私も少し怒っていましたよ?」
「あはは。彼女に対しては俺よりも石崎の方が感情を向けてると思うよ。何回か相談も受けてるしね」
「あら、そうなんですね。では彩さんが石崎くんの告白に前向きな姿勢を見せてるのは悠斗くんのお陰だったのかもしれませんね」
詩織の言葉に俺は少しだけ驚いた。
体育祭の時に告白するとは言ってたけどな。
どうやら斉藤さんは前向きに考えてくれてるみたいなんだな。
「へぇ、そうなんだ。その話を詩織は斉藤さんから聞いてたんだね」
「はい。昨日悠斗くんとのデートの相談をしていた時に、彼女からお話がありましたから」
そんな話が出来るくらいに、詩織は斉藤さんと仲が良くなってるんだな。
親友。と言ってもいいのかもしれないな。
「詩織に親友が出来たこと。俺は凄く嬉しく思うよ」
「ありがとうございます。きっかけは少しアレでしたけど、私にとってはとても大切な人を手にすることが出来ました」
そう言ってふわりと笑う詩織。
彼女からそんな表情を引き出した斉藤さんに、俺は少しだけ嫉妬の感情を覚えた。
ははは……全く。俺はどうしようもない人間だな。
なんて思いながら、俺たちはカフェの扉を開ける。
この店は九時から開店しているので問題は無い。
すると、奥から一名の店員さんがやって来る。
『お待たせしました。二名様ですか?』
「はい、そうです」
開店して直ぐに行く予定だったので予約とかはしていない。
人気店ではあるが、この時間はお客も少ないし静かに過ごせるだろう。
『ではご案内します、こちらへどうぞ』
「ありがとうございます」
俺と詩織は店員さんに案内された席に座る。
メニューを開いて中を見ていると、水が届けられる。
その水を一口飲んでから詩織に声をかける。
「実はこの店はブレンドコーヒーにこだわってるみたいでね」
「そうなんですか。でしたらブレンドコーヒーを頼もうと思います」
「じゃあブレンドを二つ。あとはサンドイッチとスコーンを頼んで軽く朝ごはんとしようか」
「はい。賛成です」
俺は手元の呼び鈴を鳴らして店員さんを呼ぶ。
リーンと言う音が店内に鳴り響くと、先程の店員さんがやって来た。
『ご注文をどうぞ』
「ブレンドを二つにサンドイッチを二つ。あとはスコーンを二つ。以上でお願いします」
店員さんは手元のメモに注文を書きとめる。
『ご注文を確認します。ブレンドを二つ。サンドイッチを二つ。スコーンを二つ。以上で宜しいですか?』
「はい。大丈夫です」
『かしこまりました。少々お待ちください』
店員さんは一礼すると、俺たちの元を去っていった。
「ふふふ。悠斗くんの言うおすすめのブレンドコーヒーが楽しみですね」
「俺も見聞きした情報でしか知らなかったからね。とても楽しみではあるよ」
そんな話をしながら待っていると、ブレンドコーヒーが二つやって来た。
『お待たせしました。ブレンド二つになります。コーヒーのおかわりはサンドイッチとスコーンを頼んでいるお客様は100円で出来ますのでお気軽にお声掛けください』
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺と詩織は店員さんからコーヒーを受け取る。
そして、俺も詩織もブレンドの香りを楽しんだあと、ブラックの状態でコーヒーを飲む。
「まぁ……これは美味しいですね」
「そうだね。これは比率に拘ってるだけの事はあるね」
「サンドイッチとスコーンを頼んでいると、おかわりが安くなるのも嬉しいですね」
「そうなんだよね。だからプラネタリウムは焦らないで11時からのを考えているんだ」
俺はそう言うと、スマホにプラネタリウムのスケジュールを出す。
「11時から12時までの上映を楽しんだ後、館内の施設でお土産を選ぼうか。理由は昼の時間を少し外した方が人が少なくて待ち時間が少なく済むと思うから。そしたらイートインスペースで昼ごはんにしよう」
「はい。賛成です」
「その後はアクセサリーショップに行こうと思ってる」
「…………え?」
俺の言葉に、詩織が驚いたような表情を浮かべる。
「今日の記念にペアアクセサリーを買おうと思ってね。君が望むなら何でも買ってあげるよ。ペアリングでも構わない」
「ほ、本当ですか……」
「もちろん。お金の遠慮なんかいらないよ。今日はそう言うのは何も考えないと決めているからね」
俺がそう言うと、詩織は俺の手を両手で握ってきた。
「悠斗くん……大好きです……」
「ははは……俺も大好きだよ、詩織」
少しだけ瞳に涙を浮かべる詩織に、俺は微笑みながら愛を伝えてあげた。