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番外編 ⑮ ~星くんの恋愛相談~

 番外編 ⑮





 星視点




 放課後。俺は彼が返事を聞きにやってくると言っていた校門の前に立っていた。


 隣には俺の想い人。首藤美月さんが不安気な表情で立っていた。


「心配しないでも大丈夫だよ。君のことは俺が守るから」


 俺はそう言って彼女に笑いかける。


 あはは……ちょっとセリフがキザ過ぎたかな。


 なんて思っていると、


「は、はい……ありがとうございます……」


 と首藤さんは顔を赤くして俯いた。


 はぁ。可愛いな。この娘を好きになったのはこういうところなんだよな。

 と俺は思った。





 桐崎くんと話をした昼休み。


 その後、五時間目の授業が終わった時に、首藤さんが俺のところにやって来た。


『あ、あの……星くん。聞きたいことがあるんだけど、良いかな?』


 少しだけ申し訳なさそうな彼女の表情から、俺はある程度の事を察してしまう。


『あはは……もしかして蓮堂れんどうくんの事かな?』


 蓮堂伊月れんどういつき


 首藤さんに迷惑極まりないアプローチをかけてる張本人の名前だ。


『うぅ……やっぱり朱里ちゃん経由で知ってるんだね』

『ごめんね。俺も結構本気なんだ』


 俺がそう言うと、首藤さんは大きく深呼吸をしてから、俺の目を見て言った。


『私を助けてください。星くん』


 ようやく聞けた、彼女のSOS


 俺はそれに笑顔で答えた。


『うん。俺に任せてくれ』

『は、はい!!よろしくお願いします!!』



 そんなやり取りを経て、俺はこの場に立っている。


 すると、


「へぇ、お前がこの場に立ってるってことは……俺の敵ってことでいいんだな?」

「……蓮堂くん」


 短く切り揃えた金髪に威圧的な視線。

 身長や筋肉は武藤くんと同じくらいはあるだろう。


 蓮堂伊月が両手をポケットに入れながらこちらへ歩いて来ていた。


「先に言っておく。君のアプローチに首藤さんは迷惑をしている。何度も断りを入れているそうじゃないか。いい加減諦めたらどうだい?」


 俺のその言葉を、蓮堂くんは鼻で笑う。


「は!!モテモテ王子様の星にはわからねぇよな!!本気で惚れた女ならどうしたって欲しくなる!!一度や二度、断られた程度で諦めるかよ!!」

「……ひぃ」


 威圧的な蓮堂くんの言葉に、首藤さんが怯えたように俺の後ろに隠れた。


「だが、俺も紳士だからな。二人きりで一度デートをさせてくれと話をしたんだよ。それでも気持ちが変わらなければ諦めてやるってな」

「そんな君の言葉が信じられるとでも?」


 俺がそう言葉を返すと、蓮堂くんは挑戦的な笑みを浮かべる。


「なぁ、星。まどろっこしいことはもう辞めようぜ?本題に入れよ」

「そうだな。お前の知能でもわかるように話をしてやるよ」

「あぁん!?」


 こんな安い挑発に乗る程度の短気な性格。

 サッカープレイヤーとしては羨ましくなるような体躯をしているが、なんの怖さも無い。


「首藤さんとのデートを賭けて俺と勝負をしてもらおうか。お前が勝ったら好きにすればいい。俺は今後一切何も口を出さない」

「……へぇ」


「ただし、俺が勝ったなら今後一切首藤さんには近寄らないでもらおうか」


 俺がそう言うと、蓮堂くんはニヤリと笑った。


「その言葉に嘘は無いな?」

「当たり前だろ」


「良いぜ。てめぇとはもう一度やり合いたいとは思ってた。チームとしての勝敗では負けたが、俺とお前では負けてないと思ってる」

「圧倒的な力の差を見せてやるよ」


 蓮堂くんの視線から逃げずに、俺はそう言い返した。


「勝負は来週のこの時間。うちのグラウンドでやらせてもらうぞ」

「構わないぜ。ならルールは俺が決めさせてもらう。一体一で先に三点取った方の勝ちだ」


 多少の身体的な接触はありにする。


「このルールでやらせてもらうぜ」

「あぁ、構わない」


 多少の身体的な接触。かなりのラフプレーは覚悟しておこう。


 俺が了承を示すと、蓮堂くんは唇をつり上げる。


「来週が今から楽しみだな!!待ってろ、首藤美月!!直ぐにでもお前は俺の女にしてやるからな!!」


 あははははは!!!!!!


 そう言い残して、蓮堂くんは帰って行った。


「……ほ、星くん。そ、その……大丈夫なの?」


 心配そうな首藤さんの表情。

 それはきっと俺の勝敗と言うよりは……


「かなりのラフプレーは覚悟する必要があるね」


 俺のその言葉に首藤さんは顔を伏せた。

 やはり彼女の心配の種はそこか。


「でも大丈夫だよ。俺はそんなのには負けないから」


 俺はそう言うと、首藤さんの肩に手を置く。


「首藤さんは俺を信じて待っててくれればいい。絶対に負けないから」

「は、はい!!」


 彼女はそう言って、頷いてくれた。





 さて、そうは言っても彼のラフプレーになんの対策も打たないのは馬鹿だと思う。


 良いアイディアを求めて、彼に助言を求めようかな。


 きっと俺が考えもつかないことを話してくれると思うんだ。


 明日の昼にでも、桐崎くんにまた会いに行こう。


 俺はそう考えていた。



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