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番外編 ⑪ ~星くんの恋愛相談~

 番外編 ⑪





 体育祭も終わり、通常の授業に戻っていた。

 日常が戻って来た。そんなある日の事だった。


 俺の急性虫垂炎。所謂盲腸は、手術の必要は無く、薬で対処することになった。


 入院も長引くことも無く、こうして登校することができるようにはすぐになった。



 ガラリと教室の扉が開くと、美形アイドルも裸足で逃げ出す、とんでもないレベルのイケメン男子生徒が顔を出した。


「桐崎くんは居るかな?」


 少し長めの二時間目の休み時間の始まり。

 星明くんが教室の入り口で俺の名前を呼んできた。


「やぁ、星くん。俺なら居るよ。なんか用かな?」

「盲腸はもう良くなったんだね、大事にならなくて安心したよ」


「あはは。君の目の前で倒れるとかちょっと心配をかけてしまったね」

「あれは流石に少し衝撃的な光景だったよ……」


 なんて話をした後に、俺と星くんは本題に入る。


「で、君がここに来たってことは、あの事かな?」

「そうだね。ここでは少し人の目があるから外でも良いかな?」

「良いよ」


 そう言うと、俺と星くんは廊下に出る。

 教室の扉を閉めたところで彼が話しを始める。


「綱引きの前に話してたことだけど覚えてるかな?」

「もちろん。学年優勝を引っ提げて、首藤さんをデートに誘うって話だろ?」


 俺がそう返事をすると、星くんは首を縦に振った。


「君には申し訳ないけど、学年優勝は俺のクラスになった。そして、俺は首藤さんをデートに誘ったんだよね」

「まぁ、向こうも少なからず君に対して好感は持ってると思うからね。OKを貰ったんじゃないか?」


 俺がそう言うと、彼は首を横に振った。


 ……え?嘘だろ……


 俺の聞いてる話だと、彼と首藤さんは両片思いだったはずだけど……


「断られてしまってね……」

「嘘だろ……理由は聞いたのか?」


 俺が詳しい内容を聞こうとしたところで予鈴が鳴った。


「なぁ、星くん。今日の昼の時間に生徒会室に来て欲しい」

「……君と二人で話せる環境を作ってくれると言うことかい?」


 彼のその言葉に、俺は首を縦に振った。


「そうだね。君としても他の人には聞かれたくないだろうしね」

「ありがとう。君の配慮に感謝するよ」


 星くんはそう言うと、自分の教室の方へ身体を向ける。



「詳しくは昼の時間に話すよ」

「わかった。その……こんなことを言うのもあれだけど、あまり落ち込むなよ」


「あはは。PKを外したような気分だけど、頑張るよ」


 星くんは手をひらひらと振って去って行った。


 それを見送った俺は、教室へと戻り、朱里の所へ行く。


「なぁ、朱里。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「……あはは。多分美月ちゃんと星くんの事だよね?」


 どうやら彼がここに来た時点で朱里も察していたようだった。

 そして、彼女はきっと事情を知っている。


「その様子だと、首藤さんが星くんのデートの誘いを断った。その理由を知ってる感じかな?」

「うん。知ってるよ。そして、その事は星くんには話さないで欲しいって美月ちゃんからは言われてる」


「なるほどね。それなら『問題は無い』かな?」

「……え?」


 首を傾げる朱里に、俺は笑いながら言う。


「首藤さんがデートを断る理由を『星くん』に話すことは出来ない。でも『俺に』話すことはダメじゃないだろ?」


 俺がそう言うと、朱里は苦笑いを浮かべた。


「あはは……本当に悠斗はそう言うのが得意だよね」

「悪いね。俺も友人の恋路に結構本気なんだ」


「わかった。話すよ」


 朱里はそう言うと、俺の目を見て言う。


「美月ちゃんに付きまとう他校の男子が彼女に言ってきたのよ」

「なんて言ってきたのかな?」


「一度でいいから二人で出かけて欲しい。それでも君の気持ちが変わらないなら諦める。ってね」

「……嘘だろ、そんなの」


 俺がそう言うと、朱里はため息を一つついた。


「私もそう思う。だけど、美月ちゃんは考えちゃってるみたいだよ」

「まだ返事はしてないんだよな?」


 その言葉に、朱里は首を縦に振る。


「うん。でも、今日返事を聞きに来るって話みたい」


 それを聞いた俺はチャンスだと思った。


「なるほどな。これはチャンスだぞ、朱里!!」

「え?」


「首藤さんとのデートを賭けて、星くんとその男で勝負をさせてやればいい。勝った方が彼女とデートが出来る。そんなストーリーにしよう!!」


 俺はそう言うと、隣で話を聞いていた詩織さんに話を振る。


「ふふふ。では、そのようにシナリオを作って行きますね」


「今日の昼の時間に、俺は星くんと話をする予定だから、朱里の方では首藤さんに話をしておいて欲しい」

「うん。わかった!!」


「詩織さんは台本のシナリオを演劇部の永瀬さんに話をしに行って欲しい」

「はい。了解です。では、悠斗くんのキスひとつで承ります」

「うん。いいよ」


 目を閉じて唇を差し出してきたので、軽く彼女にキスをする。


「ん……ありがとうございます、悠斗くん」

「詩織ちゃんずるい!!悠斗、私にも!!」

「あはは。了解だよ」


 俺はそう言って朱里にもキスをする。


「んぅ……えへへ。ありがとう、悠斗。これで頑張れるかな!!」

「うん。じゃあ二人ともよろしくね」


「「はい!!」」



「なんか……あの光景が普通に見えるとか、俺の頭がバグってるのかな……」

「いや、健は間違ってないと思うわよ……」


 佐藤さんと健が微妙な視線を送ってたけど……気にしないことにした!!


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