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第十話 ~狂乱の体育祭~ ④

 第十話 ④




 生徒会としての確認業務。体育祭実行委員としての確認業務。朱里からの『おしおき』


 それらを終えた俺はぐったりとしていた。

 朱里には色々と搾り取られた……


『ふふふ……ごちそうさま、悠斗』

『お粗末様でした……』


 これから頑張らなきゃならないのに……


 グラウンドには続々と生徒たちが集まってきている。


 開会式の時間はもうすぐだ。


「……悠斗くん。なんだかやつれてますね。実行委員の仕事はやはり大変でしたか?」

「……あはは。そうだね、ちょっと『色々』あったからさ」


 生徒会側に居る俺の隣に立つ詩織さんが心配そうに聞いてきた。


「色々……なるほど。朱里さんですね」

「あはは……まぁ、わかるよね」


 スっと目を細くした詩織さんに俺は苦笑いで答える。


「ズルいです。私も参加したかったです」

「……体育祭の前に体力が無くなっちゃうよ」


 そんな会話をしていると、開会式の時間になったようだ。


 校長先生が壇上に上がってありがたいお話をしている。


 それを聞き流しながら隣を向くと、視界には空さんが入る。


 視線が合うと、彼女はニコリと笑ってくれた。


 あはは。緊張とかは無さそうだ。


 そんなことを思っていると、校長先生の話が終わった。


 そして、生徒会長の空さんが壇上に上がる。


「皆さんおはようございます!!とうとう待ちに待った体育祭の当日になりました!!」


「三年生にとっては最後になります。気合いが入りますね!!二年生にとっては去年の経験を活かして活躍してください!!一年生にとっては初めての体育祭、存分に楽しんでください!!誰にとっても大切な一日になることは間違いありません!!」


 蒼井さんの言葉をみんながしっかりと聞いていた。


 先程の校長よりも真剣に聞いてる。


 彼女の人気の高さが良くわかるな。


 俺はそんなことを考えていた。


「そして、皆さんにはこの体育祭を怪我なく終えてもらいたい。そう思っています。この日を迎えるためにたくさんの人が頑張って来ました。体育祭実行委員を始め、先生方、各委員の協力がありました!!しかし、今日一日は保健委員だけは暇にさせてあげてください!!」


 あはは。


 みんなが笑っていた。


 俺が言っていた『少しだけユーモアが欲しい』を取り入れてくれたみたいだ。


「最後になりますが、この体育祭が皆の最高の思い出になるものにしていきましょう!!」


 空さんがそう締めると、生徒からは拍手喝采が起きた。


 それを見ながら、空さんは少しだけ恥ずかしそうに壇上を後にした。


「お疲れ様です。とても良いスピーチでした」

「あはは。ありがとう、悠斗くん。君にそう言って貰えて安心したよ」


 生徒会側に戻って来た空さんに俺は労いの言葉をかける。


「空さんはこの後50m走ですよね?」

「そうだね。元バスケ部だからね。短距離を走るのは自信があるんだ」


 ふふん。と胸を張る彼女に俺は年上なのに可愛いな。と思ってしまう。


「俺はメインイベントの男女混合のリレーに出るので出番は午後ですね」

「午前のメインイベントは借り物競争だね。毎年ここでは色々な珍事が起きるんだよね。今年も何か起きそうな気配がするよ」


 空さんはそう言うと、詩織さんに視線を向けた。


「ふふふ。さぁ……どうでしょうかね?」


 詩織さんはその視線をしっかりと受け止めた上で、笑って見せた。






『今日。悠斗はみんなの前で詩織ちゃんからキスをされる』





 朱里のその言葉を思い出す。


 きっと、借り物競争で呼び出させるのは俺だろう。


 そして、彼女から『キスをしてください』と言われるだろう。


 俺はそれを『断れない』


 ははは。今からどうなるか考えると頭が痛くなる。


 でも仕方ない。俺が選んだのはこういう道だ。


 二人の女性と関係を深めると言うのはこういうこと。


 覚悟を決めろよ桐崎悠斗。絶対にお前は地獄に堕ちる。


 その地獄を……楽しんで見せろ!!

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