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第九話 ~蒼井さんとの初めてのお出掛け~ ⑦

 第九話 ⑦





「……やべぇ、ガッツリ寝てましたね」

「あはは。そうだね、余程疲れてたのかな?」


 空さんの膝の上で意識を失うこと一時間。

 目に入った時計を見ると、十三時を指していた。


「そろそろ起こしてあげようかなぁ。と思ってた所だったからね」

「す、すみません。せっかくのデートなのに」


 俺はかなり申し訳なく思いながら謝罪をするが、


「いやぁ、気にしなくていいよ。僕もかなり楽しんだからね」


 と、空さんは満足そうに言っていた。


 た、楽しんだって……何をしていたのだろうか……


「さて、悠斗くん。この後はどうしようか?」

「そうですね、個人的にはカラオケブースがあるので歌いたいかなぁと思ってます」


 俺のその言葉に、空さんは嬉しそうに首を縦に振る。


「お、いいね!!賛成だよ。遂に悠斗くんの美声を聴けるのかな?」

「あはは。美声かはともかくとして、恥ずかしくないレベルでは歌えると思います」


 以前。朱里とカラオケに行った時も、恥をかかない程度には歌えたし。

 そりゃあ朱里やほぼプロの司さんに比べたら、へなちょこかもしれないけど、素人にしてはやる方だと思ってる。


「よし、じゃあ空いてるカラオケブースに行こうか。飲み物はさっき飲みきっちゃったから、何か買って行こうか」

「そうですね。歌うなら喉が乾きますからね」


 と、俺たちは自動販売機の前に行く。


 やっぱりこういう所の飲み物って割高だよなぁ……


 なんて思ってると、


「悠斗くんは何を飲むかな?飲み物代くらい僕に出させてくれよ」


 と空さんから打診があった。


 断るのも申し訳ないし、こういう所でご馳走になるのもひとつの礼儀だよな。


 と俺は考えて、


「はい。ご馳走になります。ありがとうございます!!」


 とお礼を言った。


 そして、俺は空さんの奢りで500mlのコーラのペットボトルを買ってもらい、彼女は500mlのお茶のペットボトルを買った。


 少し歩くのカラオケブースが見えてくる。


 三つあるうちの二つは埋まっていたが、一つは空いていた。


「良かったね、空いていたよ」

「はい。一グループ二時間まで。ですので、タイミングが悪かったらそのくらい待つかも知れませんからね」


 俺たちは少しだけ安堵しながらブースへと入る。


 誰かが先に使っていたのか、中は少し汚れていた。

 俺は少しだけため息をつきながら、部屋の中を掃除する。

 散らかってるゴミを捨て、備え付けのペーパータオルで机の上を拭く。


 こういう所を汚す奴の気がしれないんだよなぁ


 なんて思ってると、


「君は偉いね」


 空さんが俺の様子を見てそう言った。


「え?普通だと思いますけど」

「その普通を普通に出来ることは美徳だよ。僕が手伝う間も無く綺麗になってしまったよ」

「汚い場所で歌わせたくないじゃないですか。ですが、そう言って貰えるのは嬉しいです。ありがとうございます」



 そんな会話をして、俺と空さんは歌うことにする。


 まずは俺から歌うことにした。


「えーと……何歌おうかな……」


 微妙に曲数が少ないので少し悩みどころだが、歌えるアニソンがあった。


 俺はその番号を打ち込んで送信する。


 すると、すぐにイントロが流れ始めた。


「お!!悠斗くん、良いチョイスだね!!僕はこのアニメを見ていたよ!!」

「あはは。俺もこのアニメは好きでした。撃っていいのは……」


「「撃たれる覚悟がある奴だけだ!!」」


 なんてやり取りをしながら、俺はアニソンを歌う。


 このグループの曲は結構好きで、ロボットアニメの方も良く歌っている。


 そして、一曲歌い終わると、空さんが拍手をしてくれた。


「ありがとうございます。気持ち良く歌えました」

「なかなか上手いじゃないか!!これは僕も気合いを入れないといけないね」


 と、空さんは番号を打ち込んで送信した。


 すると、イントロが流れ始める。


「あ、これはあれですね、焼肉への愛を歌ったやつですね?」

「この人の曲はみんな好きなんだよね、中でもこの曲が一番好きかな」


 そして、空さんは俺の目を見ながらこの曲を情緒たっぷりに歌ってきた。


 いや、とても上手いんだけどさ……そんな俺の目を見て

『だ〜い好き〜よ〜』

 とか言われるとちょっと恥ずかしいと言うか……

 いや、これは狙ってるのか?


 そして、そんなこんなで俺と空さんはカラオケをたっぷりと楽しんだ。


 一時間ほど歌った時に、空さんが俺に向かって話しかけて来た。


「悠斗くん。ここなら誰にも聞かれることが無いから、秘密の話をするにはもってこいだとは思うんだよね?」

「そうですね。何か話したいことでもあるんですか?」


 俺がそう言うと、空さんは少しだけ気まずそうに視線を逸らした。


 ……な、なんだろ。何か言いにくいことでもあるのか?


 俺が少しだけ不安に思いながら、空さんの言葉を待つと、彼女は意を決して話してくれた。





「たまたま君に生徒会の件で会いに教室に行ったら、君と黒瀬さんの……その、ことを見てしまってね。あまりそういうことは、学校では控えた方が良いと思うんだよね?」




 俺の中の時間が……止まった。



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