第八話 ⑯ ~体育祭の練習の後、生徒会の時間に蒼井さんからデートに誘われました~
第八話 ⑯
星くんとの綱引きの後、俺のクラスは続けて蒼井さんのクラスとも綱引きをした。
格上の相手クラスに加えて、連戦ということもあり、あっという間に負けてしまった。
ちなみに、その次は蒼井さんのクラスと星くんのクラスの戦いだったが、連戦にも関わらず、三年生の力を見せつけて星くんのクラスを破った。
負けてはしまったが、良い練習が出来たし、本番では今の人たちは全員味方だ。
そう考えれば力の底上げが出来たと考えて良いと思ってる。
てか、そう思わないとやってらんないよな……
流石に二連敗は……
そして、体操着から制服に着替えて、帰りのSHRを迎える。
山野先生から諸連絡を受けて解散となった。
「悠斗くん。今日なのですが、少し放課後に予定がありまして、生徒会はお休みさせて貰おうかと思ってます」
と、詩織さんから話があった。
「へぇ、そうなんだ。予定の内容は聞いても平気?」
「はい。朱里さんと少し喫茶店でお話をする予定です。今日はバスケ部はお休みと聞いていますので。あ、学級日誌は私が書いておきますので、悠斗くんはこのまま生徒会室へ向かっていただいて平気ですよ?」
朱里と?先程の一件といい、なにか二人の間であったのかな。
……まぁ、あまり勘繰らないようにしよう。
「わかった。じゃあ行ってくるね。予算会議も終わったし、簡単な業務で終われると思うからね。学級日誌よろしくね」
「はい。了解しました」
俺はそう言うと、教室を出て行き、生徒会室へと向かった。
『生徒会室』
目的の場所へと辿り着くと、俺は扉をノックする。
コンコン
すると中から「鍵は掛かってないから入って大丈夫だよ!!」と聞こえてきた。
俺はガチャリと扉を開けると、中には蒼井さんが業務をしていた。
「こんにちは。蒼井さん」
「こんにちは。桐崎くん。さっきぶりだね?」
そうだよな。体育祭の練習の時にあってるよな。
「はい。先程は綱引きで負けてしまいましたが、本番では味方ですので、心強いです」
俺はそう言うと、自分の席に座る。
「今日は詩織さんは休みのようです。その分も自分が働こうかと思ってますので安心してください」
すると、蒼井さんは少しだけ申し訳なさそうに、
「そうなんだね。実は琴音を今日は怜音と出掛ける予定があるみたいでね、僕がその分働く予定だったんだ」
と話した。
ふ、二人きりか……
期せずして起こってしまった密室に二人きりという状況に、俺は少しだけ緊張する。
はぁ……予算会議のときの『悲劇のヒロインとして祭り上げる』なんて言ったこと。まだ俺の心に引っかかってるんだよなぁ……
それもあってか、俺と蒼井さんは少しギクシャクしてると言うか、まぁ夏休みに一日を渡すことにはなってるけど。
蒼井さんからの『好意』と言うのは感じてはいるけど、流石にこれ以上増やすのは不誠実過ぎるよな。
てか、二人の時点で誠実もクソもないか……
なんて考えながら業務をしていると、
「なぁ桐崎くん。業務をしながらでいいから聞いてくれ」
「……はい。了解です」
なんだろ?世間話かな?
「予算会議のこと。まだ気にしてるだろ?」
「……はい」
やっぱり見抜かれてるよなぁ……
「僕は気にしてないよ。とは言っても君はそうでは無いだろ?」
「えぇ、まぁ……」
俺のその返事に、蒼井さんは笑った。
「会長と副会長がいつまでもギクシャクしてるのは運営に差し障る。そうだろ、桐崎悠斗生徒会副会長?」
「あはは……そうですね」
すると、蒼井さんは俺にひとつ提案をした。
「今週末の日曜日。君と僕で出掛けないかい?」
「……え?」
俺は顔を上げて蒼井さんを見る。
すると彼女は笑顔でこう言った。
「駅前にレジャー施設がある。そこで一日身体を動かさないかい?なに、君の彼女と側室の二人には話はしてあるよ」
「そ、側室って……」
俺はその言葉に苦笑いを浮かべる。
だが、その案は悪くないと思った。
「ですが、身体を動かすのは賛成です。何かを忘れるのには最適かと思いますね」
「だろ?と言うわけで、夏休みの件とは別に少し親睦を深めようじゃないか」
「あはは……了解です」
俺が了承を出すと、蒼井さんは嬉しそうに笑った。
「では、詳しい時間とかは後日決めるとしよう」
「はい。了解です」
「それと、当日は僕がお弁当を作ってこよう。期待していてくれ」
へぇ、そこまでしてくれるのか。
「はい。期待してますね」
俺はそう言うと、残っていた業務を再開した。
先程よりも軽くなった空気のお陰で、業務はだいぶ捗った。