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第八話 ⑦ ~昼休み~ 詩織視点 前編

 第八話 ⑦




 詩織視点




 四時間目が終わるチャイムが鳴りました。


 今日の朝は悠斗くんと甘美なひとときを過ごせました。


 少しだけ『えっちな悠斗くん』を見られたのは私としても嬉しいことでした。


 キチンと私の身体を欲してくれている。


 好きな人に求められる。女にとってこれ以上の至福は無いですから。


 その後の教室では、私への『独占欲』をクラスメイトの皆さんにお話していただけました。


 ふふふ。やはり驚かれていたようですが、あぁして言葉にしていただけるのはとても感激いたしましたね。


 その後は、あの女の登場で『少しばかり感情を乱されるシーン』がありましたが、悠斗くんのお陰で冷静さを取り戻すことが出来ました。


 ……ふぅ。やはりあの女は油断なりません。


 目下の敵はやはり、朱里さんです。


 蒼井さんもそれなりに危険かも知れませんが、そこまでの驚異では無いでしょう。

 あの予算会議での対応を見る限りでは、所詮は見た目だけの人。という印象しか持てませんでしたから。




「今日は山野先生に呼ばれてるから、進路指導室でご飯を食べるよ」


 そんな思案をしていると、悠斗くんが席から立ち上がり、そう言いました。


 そうですね。山野先生から朝の時間に呼ばれていました。


 予算の件。……ふむ。『卒業生の支援金』あたりの話でしょうか。あとは『高額な備品の購入』についての話もありそうです。どちらも、部長の方々を納得させるために悠斗くんが提示したものです。

 それらが成されなければ『ペテン師』という言葉が本当のことになってしまいますからね。


「はい。了解です」


 私は悠斗くんに了承を伝えました。


「うん。わかったよ」

「いーんちょーもなかなか大変だね。まぁ、頑張ってね」

「……悠斗。また俺を一人にするんだな」


 あとの三人も同様に了承を伝えました。


 脳筋……おっと、須藤部長のような切れ者と比べると、知性の低い武藤くんだけは微妙な表情をしていますが。

 まぁ些事でしょう。


「さて、皆さん。食堂へ向かいましょうか」


 私は悠斗くんが居なくなった後、三人にそう声を掛けました。


「今日は詩織ちゃんは彩ちゃんとじゃなくていいの?」


 と、朱里さんが聞いてきました。


「はい。あの日は彩さんとお話がありましたので。特別な日でした。彼女の交友関係に少し無理を言った形でしたので」


 彩さんにも、本来なら一緒に食べるお友達が居ますので。


「そうなんだ。じゃあ一緒に食べよ!!」


 朱里さんはそう言うと私に笑いかけました。


「えぇ。よろしくお願いします」


 私はその笑顔に、こちらも笑顔で返しました。




 なんで、今朝あんなことがあったのに、笑い合えるんだよ……




 なんて言葉が近くから聞こえてきました。


 まぁ、別に朱里さんが『嫌い』な訳では無いですからね。


『恋敵』『ライバル』そういうものですから。


 ふふふ。脳筋には理解出来ないでしょうけど。



 私はそんなことを思いながら、食堂へと向かいました。





 食堂へとたどり着いた私たち四人の前には、やはり空いている丸テーブルがありました。


 その場所を毎日使っているのを理解しているのでしょうね。


 私はいつものように肉増しの焼肉を頼みました。

 この間のカツ丼にはシャキシャキの玉ねぎが入っていて、彩さんの前で醜態を晒しましたが、このようにきちんと火が通っている玉ねぎなら嫌いではありません。


 むしろ、タレと肉汁を吸った玉ねぎはもはやお肉です。


 私の数少ない『嫌いでは無い野菜』とも言えるかもしれません。


 ふむ。ある一面では嫌悪し、ある一面では嫌いでは無い。

 まるで私にとっての朱里さんは玉ねぎですね。


 なんてことを思いながら、私はテーブルへと座りました。


 皆さんは既に座っていたようです。


「すみません、お待たせしました」


 私はそう謝罪を入れました。


「そんなに待ってないから平気だよ、詩織ちゃん」

「焼肉って意外と時間かかるからね」

「早く食おうぜ、麺が伸びちまう」


 皆さんの優しさに少しだけ心にゆとりが出来ました。


 では、食べましょうか。


 私が「いただきます」と言おうとした時でした。


「……ごめんね、僕も同席してもいいかな?」



「……蒼井……さん?」



 少しだけ申し訳なさそうにしている、蒼井生徒会長が、日替わり定食を持って私たちの前に居ました。

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