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番外編 ⑦ ~星くんの恋愛相談~

 番外編 ⑦






 朱里視点




 放課後。私とゆーこちゃんは隣のクラスの美月ちゃんの所へと向かっていた。


 久しぶりに話しに行く元クラスメイトで友達の女の子。


 特に用事が無ければ話しに行くなんて出来ないなぁ……


 なんて思ってたけど、こうした理由があるなら会いに行ける。


 それに、今日は部活が休みの日。


 バスケとサッカーと野球が休みだったはず。


 サッカー部のマネージャーをしてる美月ちゃんも、放課後は空いてると思うんだ。


「こんにちわー!!美月ちゃん居る!?」


 私は教室の扉を開けると、中を見渡す。


 突然の私の登場に、中の生徒達は驚いたように声を上げてた。


 あはは……ちょっとテンション高かったかな……


「朱里ちゃん。私なら居るよー」


 教室の真ん中から、温厚な声が聞こえてきた。


 セミロングの髪型に、私と同じくらいの背丈。


 体型は私の大切なお仲間で、性格は気配りが出来る優しい人。


 彼女は去年、美化委員をしてた。教室の花瓶の水換えを学級委員だった私が忘れちゃった時に、代わりにやってくれてたりした。


 あはは。懐かしいな。


「朱里ちゃんがこっちに来るなんて珍しいね?」

「朱里だけじゃないよ、美月。私も居るよ」


 と後ろからゆーこちゃんも姿を見せた。


「わぁ、優子ちゃん。久しぶり!!」


 美月ちゃんは笑顔でゆーこちゃんを迎え入れる。


「今日は部活休みでしょ?良かったら久しぶりに三人でお茶しない?」


 恋バナしよーよ!!


 と私が美月ちゃんを誘うと、


「うん。いーよ。ちょうど今日の放課後は空いてるし。朱里ちゃんの惚気話に付き合ってあげるよ?」


 と美月ちゃんはイタズラぽく笑った。


「あはは。悠斗の話もそうだけど、私は美月ちゃんの話も聞きたいな?」


 私がそう言うと、美月ちゃんは顔を赤くした。


「わ、私!?……私なんて聞いても面白くないよー」

「お!?その反応。もしやお相手がー」

「朱里。こんな所で話してると邪魔だから、場所変えるよ?」


 と、ゆーこちゃんに言われて私は気が付いた。


 あはは……ここは教室の扉の前だ。


「ごめんね、ゆーこちゃんに美月ちゃん。さっそくだけどスタバに行こうか!!」

「う、うん!!久しぶりに三人で話せるのは私も楽しみだよー」



 私たち三人はそうして、近くの喫茶店へと場所を移動したんだ。




 スタバへと到着した私たち三人は、各々で好きな飲み物を頼んで席に座った。


 周りには私たちと同じように、部活が休みだった女の子達が、友達グループを作って話をしているのが見えた。


「結構人居るねー」

「私たちみたいに部活が休みだった女の子が多く居るね」

「考えることはみんな一緒。って事だね」


 私は頼んだ甘さたっぷりのバニラフラペチーノを、チョコレートでカスタムした通称『ゴディバ』って呼ばれてる奴をひと口飲んだ。

 うーん!!美味しい!!


「朱里ちゃんは本当に甘いの好きだねー。それで太らないのはやっぱり運動してるからかな?」


 そう言う美月ちゃんは白桃フラペチーノを飲んでる。

 果物のフレーバーが好きだったよね、美月ちゃん。


「あはは。太らないのは良いけど、もう少し……欲しかったなぁって……」


 と、私は自分の胸を見た。


「仲間だよー。私ももう少し欲しかったなーって。その点優子ちゃんはそこそこあるよね?」

「……まぁ、そこそこはね。でも私と朱里の近くにはとんでもないのが居るけどね?」


 と、ゆーこちゃんは笑いながら少しビターに仕上げたカフェモカをひと口飲んだ。


「あはは……詩織ちゃんは確かにすごいよね……」


 私がそう言うと、美月ちゃんは少し意外そうな顔をした。


「わー。名前で呼んでるなんて、黒瀬さんと随分と仲良くなってるんだね。たまにここで彩ちゃんと話してるのを見掛けてたけど、あの人も去年とすごい変わったよねー」


 へぇ。ここを使うんだ詩織ちゃん。


「すごく自然に笑うようになったと思うよね。なんか可愛くなった?元々すごい可愛かったけど」


 恋は人を変える。って奴かな……


 やはり敵は強い!!宣戦布告はしてるんだし、私も負けないように頑張らないと!!


「やっぱり恋は人を変える。って奴だよね。そう言えばさ、美月。風の噂で聞いたんだけどさ、あんた今困ってるんじゃない?」


 と、ゆーこちゃんが本題を話し始めた。


「な、なんか気になる言葉が聞こえたけど……そうだね。ちょっと今、困っててね……」


 美月ちゃんはそう言うと、飲み物をひと口飲んで話をする。


「その……他校のサッカー部の男子から変に絡まれててね……」

「……うん」


 私が相槌を打つと、美月ちゃんは下を向いて言葉を続ける。


「私、こんな性格だから、なかなか強く嫌だっていえなくて。本当は嫌なんだけど、ずっと付きまとわれてるんだ……」

「なるほどね。聞いてた通りだね」


 ゆーこちゃんはそう言うと、美月ちゃんに続けた。


「そんなあんたを助けるために私たちが力を貸すよ。って言ったら、手を取ってくれる?」


 ニコッと笑ってそう言うとゆーこちゃん。


「……え?」


 ゆーこちゃん……かっこいい!!


 私は隣の親友に尊敬の眼差しを送る。

 美月ちゃんもゆーこちゃんの言葉に驚いてた。


「た、助けてくれるの?」

「そのためにこうして話をしに来たんだよ。本当はね」


 ゆーこちゃんのその言葉に、美月ちゃんは泣いてしまった。


「う、嬉しい……本当に最近辛くて、でも……誰にも言えなくて……星くんに、言おうかなって思ったけど……あんまり迷惑にもなりたくなくて……」

「ちなみに、あんたを助けたいって言ってきたのは、星だよ」

「……え?」


 私はハンカチを美月ちゃんに渡した。


「使って、美月ちゃん」

「あ、ありがとー」


 私のハンカチで涙を拭いた美月ちゃん。


「今日の昼にね、星くんから話を聞いたよ。もともとは悠斗に相談してたみたいだけど」

「そ、そうなんだ……星くん、気がついてくれてたんだ……」


 顔を赤くしながら、そう呟く美月ちゃん。

 すごく可愛い……


「でも、大丈夫なのかな。星くんに、すごくいっぱい支援金?が来てるの……私を助けたりなんかしたら、変な噂とか立って、支援金が減っちゃうかも……」


 そしたら部員のみんなに迷惑が……


「そこは私の彼氏が何とかしてくれる案を出してくれたよ!!」

「……え、桐崎くんが?」

「まぁ、支援金なんて制度を作ったからね。責任を感じてたみたいだよ、いーんちょー的に」


「ど、どんな案なのかな?」


 そう言う美月ちゃんに、私は悠斗の案を話した。


「学園の王子様が深緑の令嬢を悪漢から救い出す。そう言うストーリーを作ろう。だってさ」

「え、ええええええええええええ!!!???」



 あはは……そりゃ驚くよね……


「まぁ簡単に言えば、星があんたを助けるのをドラマや映画のワンシーンに見立てることで、周りの非難を反らして行こう。そういう案だよ」

「そ、そんなことが出来るの?」


 首を傾げる美月ちゃんに私は言う。


「うん。悠斗が新聞部に話をしに行ってるし、詩織ちゃんが今脚本を書いてる。星くんもこの話に乗り気だから、あとは美月ちゃんがそれに賛同してくれたら、話が前に進むよ!!」


 私がそう言うと、美月ちゃんは少しだけ思案したあと、私の目を見て言った。


「う、うん!!私、やるよ!!」

「そうこなくちゃ!!」


 美月ちゃんの手を握りながら、私は笑った。


 そして、一番大切なことを聞いてみた。


「ねぇ、美月ちゃん?」

「え、なに……朱里ちゃん……」


 私はニコーっと笑顔を向けながら彼女に聞く。


「美月ちゃんはさ、星くんのこと……好き?」

「……え?」


 私のその質問に、美月ちゃんは顔を真っ赤にしていた。


 あはは……答えみたいなもんだけど……


 そして、少しした後、美月ちゃんは言う。


「うん……好き。あの人のそばに居たいから、マネージャーになったから……」

「そうか!!じゃあ尚更頑張らないとね!!」


 私はそう言うと、美月ちゃんの手をギュッと握った。




 とりあえず、悠斗に言われてたことは全部やり遂げたよ!!


 私は彼の信頼に応えることが出来て本当に良かった。と心からそう思った。

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