番外編 ③ ~星くんの恋愛相談~
番外編 ③
四時間目が終わるチャイムが鳴った。
俺はグッと身体を伸ばすと、いつものメンバーに声を掛ける。
「なぁ、みんな。ちょっといいか?」
俺のその言葉に、朱里が返事をした。
「どうしたの、悠斗。もしかして、さっきの星くんの件?」
そう言う朱里に、俺は首を縦に振る。
「うん。ちょっとさっき相談を受けてね。詳しい話をご飯を食べながらしよう。って話になったんだ」
「ねぇ、いーんちょー。本当は予算の話なんかじゃないんでしょ?」
と、鋭い佐藤さんは俺に本当のことを求めてきた。
「その事について話しながら食堂に行こうか」
俺はそう言うと、席から立ち上がって食堂へと向かうことにした。
「なぁ、悠斗。星からなんの相談を受けたんだ?」
食堂へと向かう途中で、健が俺に聞いてきた。
「あぁ、実は恋愛相談を受けたんだ」
「「「恋愛相談!?」」」
詩織さん以外の三人が驚いて声を上げた。
「……あまり大きな声で言わないようにな。結構デリケートな案件だから」
俺は周りを少し見ながらそう言う。
幸い、周りに人は居なかった。
「サッカー部のエースストライカーで、学園の王子様が女たらしのハーレム王のいーんちょーに恋愛相談?」
「おい……まあ、俺も驚いたけどさ。なんでも最近部長たちの相談を解決してたら、怜音先輩が俺に相談すれば何でも解決してくれる!!みたいな噂を流してるみたいでな」
「あはは……あの先輩らしいね」
「というわけで、今日は星くんと一緒にご飯を食べながら話を聞く予定。一応、彼にはみんなにも一緒に相談に乗って貰うことに了承を得てる」
「なるほどね。で、いーんちょーは知ってるの?学園の王子様が恋慕してるお相手をさ」
そう言う佐藤さんに俺は首を縦に振る。
「聞いてるよ。ただ、それは本人の口から言ってもらおうかな」
俺がそう言ったところで食堂へとたどり着いた。
「ここだと誰が聞いてるか、わからないからね」
俺はそう言うと、雫のお弁当を持って丸テーブルへと向かう。
そこには既に星くんが座っていた。
「やぁ、星くん。待たせてごめん」
俺はそう言うと、雫のお弁当をテーブルの上に乗せる。
「いや、俺も今来たところだよ。ところで……それが噂の愛妹弁当かな?」
「……噂になってるのか。まぁそうだよ。俺の可愛い妹が作ってくれたとっても美味しい最高の弁当だな。……あげないぞ?」
俺がそう言うと、星くんは楽しそうに笑う。
「あはは。噂通りのシスコンぶりだね。さて、君たちも来たことだから、俺も注文をしてくるよ」
星くんはそう言うと、注文をしにテーブルを離れていった。
そして、少しすると皆が昼ご飯を買ってテーブルへと戻ってきた。
詩織さんはいつもの焼き肉。健はラーメンに炒飯。佐藤さんと朱里は日替わり定食。星くんはカレーだった。
「……星の王子さま」
なんて健が言ったのを、俺は聞いてしまって、笑ってしまった。
「……おい、武藤くんに、桐崎くん。後で覚えていろよな」
「ご、ごめんな星くん。わざとじゃないんだ。全部健が悪い」
「おい、悠斗!!そりゃないだろ!!」
そんなやり取りをしながら俺たちは丸テーブルへ座った。
「じゃ、じゃあ、食べようか!!」
俺は声を張り上げて、いただきます。と音頭をとった。
『おい、あそこのテーブルまたやべぇことになってるぞ』
『いつものメンバーだけでもやべぇのに、星くんまで座ってるぞ……』
『学園の王子様レベルじゃねぇとあそこには近寄れねぇよな……』
『この学園の美男美女を全部集めました。みたいになってるな……』
「……なぁ、桐崎くん」
「ん、どうしたんだ星くん?」
俺は雫の作ってくれた卵焼きを頬張りながら聞く。
「いつもはこのテーブルを見てる立場だったけど、こうして座って見るとやばいくらいに視線を受けるね……」
「あはは。いつもはここまでじゃないよ。今日は君も座ってるからだと思うよ?」
俺が苦笑いを浮かべながらそう言うと、星くんは申し訳なさそうな顔をする。
「す、すまない。昼の時間を邪魔してしまって……」
「気にしないでいいよ。で、星くん。そろそろ話してくれるのかな?」
俺はそう言うと、星くんは水をひと口飲んだ。
「桐崎くんからはどこまで話してるんだい?」
「君から恋愛相談を受けた。とまで話してる。君が誰を好きなのか?までは話してない」
人の目もあったけど、それは他人の言伝で知るようなものでは無いとも思ってたからね。
俺がそう言うと、星くんは神妙な顔をして呟いた。
「……こういう所なんだろうなぁ」
「ん。なんか言ったか?」
俺が首を傾げると、星くんは苦笑いを浮かべる。
「いや、何でもないよ。君がモテる理由の一端を見ただけだよ」
「……君から言われると嫌味にしか聞こえないな」
俺が半眼で睨むと星くんは笑った。
「あはは。許してくれ。さっきの星の王子さまはこれで水に流してあげるよ」
星くんはそう言うと俺たちを見渡した。
そして、食事が終わっていることを確認すると、話をする決意を固めたようだった。
「桐崎くんには既に話しててね、君たちにとっては去年のクラスメイトだったと思う。俺が好きなのは」
サッカー部のマネージャー。首藤美月さんなんだ。
彼は顔を真っ赤にしながらそう言うのだった。