番外編 ① ~星くんの恋愛相談~
番外編 ①
「桐崎くんは居るかな?」
予算会議が終わったある日の休み時間。
俺の元に来る部長たちも少し落ち着いてきた頃、一人の男子生徒が俺を訪ねてきた。
「居るよ。なんの用かな、星明くん?」
俺はそう言いながら、教室の扉の前に居るとんでもないレベルのイケメン男子生徒。星くんの元へと歩いていく。
星明
俺と同じ高校二年生。サッカー部のフォワードでエースストライカー。身長も180cmと俺と同じくらいに高く、甘いマスクと柔和な声。熱狂的な女性ファンにも紳士的な対応で性格もすごく良い。
学力も詩織さん、俺に次いでの学年三位の秀才。
整った顔立ちに優しい性格。さらには文武両道で着いたあだ名が『学園の王子様』
『女たらしのハーレム王』なんて、あだ名が着いていた俺とはまるで違う、ハイスペック過ぎる男だ。
「あはは。俺の名前を知っててくれたんだね?」
俺を目の前にして、星くんは苦笑いを浮かべる。
「そりゃあ知ってるだろ?『学園の王子様』なんて言われてる星くんはかなりの有名人だからな」
俺がそう言うと、星くんは少しだけ形の良い眉を寄せた。
「可愛い女の子の名前と長所を網羅してて、的確に相手を褒め称える。そんな手腕から着いたあだ名が『女たらしのハーレム王』君も結構な有名人だと思うよ?」
……へぇ。『学園の王子様』は彼にとっての地雷か。
「ごめんな、星くん。『学園の王子様』なんて呼んだことを謝るよ」
俺はそう言って先に彼に謝罪した。
それを聞いた星くんも苦笑いを浮かべて、
「いや、俺も『女たらしのハーレム王』なんて言って悪かったよ。ごめん」
俺たちはそう言ってお互いの失言を謝罪し合うと、本題に入ることにした。
「で、星くん。わざわざ他クラスの俺を訪ねてくる理由を聞いてもいいかな?」
俺がそう言うと、彼は少し苦笑いを浮かべる。
「ここだと教室の中の目があるから、廊下で話してもいいかな?」
俺は後ろを振り返ると、かなりの数の視線を受けていた。
あはは……これじゃあ話せるものも話せないな。
「OK。じゃあちょっと外に出よう」
俺はそう言うと、彼と一緒に廊下に出て、教室の扉を閉めた。
「……ありがとう。その、話したいことなんだけどさ」
「うん。なんだい?」
俺が聞く体勢を整えると、星くんは息を整えて話を始めた。
「実は君に相談したいことがあるんだ」
「……相談?」
首を傾げる俺に、星くんが続ける。
「君に相談すると、的確に答えを出して解決に導いてくれる。そんな噂が立ってるのは知ってる?」
「……初耳だぞ」
もしかして、部長たちの相談に答えてたのが原因か?
「誰から聞いたんだ、そんな話」
「新聞部の三輪部長が言ってたよ」
「……はぁ。やっぱり怜音先輩か……」
だいたい困った噂の根源は、あの人が原因な気がする。
「で、星くんは何を相談したいんだ?」
俺がそう言うと、彼は少しだけ顔を赤くした。
ん?……なんだ、その反応は。
まるで、恋でもしてるような。
「その、俺がしたいのは……」
「したいのは?」
「恋愛相談なんだ」
星くんは俺の目を見ながら、そう言うのだった。