14・暴れる力
ガサッ。
物音と共に崖が崩れようとする。
あわててメイアが東洋魔法。タイムを使う。
時間の流れを極端に遅くする魔法だ。
「ルルスちゃん!そこに何かいる!捕まえて!」
時間の流れをかえるということはそれ相応の大きな負荷がかかる。
今のメイアにそんな気力はない。
つまり、魔法が消えるのも時間の問題なのだ。
「急いでっ!」
「はい!」
慌ててその何かを追い掛ける。
すばしっこくて魔法を使うにもメイアのタイムが邪魔をして使えない。
「ええいっ!そのもののあるべき姿にかえれっ!」
とたんにキーホルダーになっていた本が大きくなり鍵が表れる。
鍵はひとりでにその動物?をとらえ、一枚のカードに変えた。
「誰の・・・・・・?」
誰のカード?と聞こうとしたが、聞くまでもなくカードはミョンハクの元へと飛んでいった。
ミョンハクの思い出した記憶は七歳くらいの記憶。
裏の裏の記憶だった。
いつも疫病神呼ばわりされて一人でいた時期。
勉強もまったく手につかないほど孤独で罵られたことに恐れ、ただ。叫ぶことしかできなかった頃の。
「違う。俺は疫病神なんかじゃない。違う。違う!疫病神なんかじゃない!ただ・・・・・・ただ、強くなりたかっただけだ!」
七歳で大きな龍神を呼び起こし、自分の体内に龍を住まわせたことを母親に知られ、母親に恐れられた記憶。
母はいつも俺だけを恐れて近づいてこようともしなかった。
何故セイ家の一番弱い家系の人間が父のような上級家系と婚約できたのだろう。
母だけはいつも俺を恐れた。
父も驚きはしても誉めてはくれない。
「・・・・・・くん・・・・・・ミョンハクくんっ!落ち着いて!」
「あ。あれ?」
「うん。大丈夫だよ?ミョンハク君は疫病神じゃないよ?七歳で龍をおろしたのはすごいけど。」
メイアが俺に笑いかける。
どうやら無意識に叫んでいたらしい。
「ミョンハク・・・・・・顔が赤いですよ。」
冷やかすような目で見られ、カチンとくる。
「?・・・・・・とにかく、私たちは恐がったりしないから。ね?」
メイアが同意を求めるようにルルスを見た。
「はい。」
ルルスは力強く頷き、その後に、メイアは、こう続けた。
「ルーナさんのところもどろっか?」
そして爆睡をした一夜明けた朝。
町の人たちの騒ぎがあった。