episode 8
「立て、そして俺と戦え!」
刃を俺に向けるタク、俺は冷たくなったスナイパーの身体を抱き抱えたままうつむいていた。
「...お前はなんでそんなに甘いんだ?
相手は今のいままで自分を殺そうとしていたんだぞ!」
「お前は...人の命を無下にできるのか?」
俺がそう聞くとタクは突然俺の髪を引っ張り持ち上げた、俺は反射的にスナイパーから手を離しタクの手を掴む。
「殺し合いしている相手の事なんて考えていられるかっ!自分の事を守るだけで精一杯なんだよ!!」
激昂するタクの目は見開き息を荒らげている。
「そうだろうけど...そうだろうけどっ!」
ゆっくり立ち上がりタクの目をまっすぐ見た、あちらも冷たい目で俺を見ていた。
「何だよ?俺には向かうのか?」
頭から手を離し、俺の胸ぐらを掴むタク。
俺は彼の目をまっすぐ見た。
「俺達は親友だ、上下関係なんてないだろっ!!」
そうだ、俺達に上下関係なんてない。いつも対等で、いつも一緒だったのに…
俺はタクの手を振り払う、するとタクは俺の喉元に刀を向けた。
あまりの衝撃に動けなかった。
何で……何でこんなことを…
「やっぱりお前は甘い…お前はここで、俺が殺すっ!!」
「タク…お前はそんな奴だったのか?他人の命なんて関係ない、自分の事のみしか考えない。
お前の本性か?」
そう聞くとタクは一瞬、視線を逸らした。何故そうしたのかは分からないが、タクは話を続けた。
「お前にそんな事は関係ないだろ?お前はここで死ぬんだからなっ!」
タクは突然、刀を振った、首を掠めた刀は先に血が付いていた。俺の首からも血が少し流れている。
「タク…お前は本気なのか?」
「ああ。」
躊躇いもなく、彼は答えた。
どうやら俺はタクの気持ちに答えなきゃならない、そんな気がしてならなかった。
「分かった。」
懐からハンドガンを出し、タクに銃口をむけイメージした。
タクは殺さない、怪我もさせない、だけど…死ぬ程痛い目にあってもらう。
引き金を引いた。
するとタクは刀で弾丸を弾き、一気に俺との距離を縮め刀を振り下ろした。
俺はハンドガンでそれを受け止め左手で刀を握った、手の皮が切れ血が滴る。タクは刀を抜こうとする、さらに強く握るとタクは怒りの顔を見せて俺の顔面を殴った。
あまりの力に耐えきれなかった俺は刀から手を離し吹っ飛ばされた。
「ぐっ…くそ、強い。」
口から出る血を拭う、タクはこちらを冷たい目で見ていた。
「弱いな、マサル。やっぱりここじゃ生きていけない。
俺が…殺してやる。」
そう言うとタクはゆっくり俺に近付いてくる。
「だからさ、なんでお前は人を殺せるんだよっ!!」
タクに3発打ち込むと、それを彼は全て弾いた。俺は立ち上がり突進した、しかし顔を蹴られた倒れてしまう。
もう一度立ち上がろうとすると突然、右肩に激痛がはしる。視線を肩にやると、刀が肩を貫通し地面に刺さっていた。
「あ"あ"あ"あ"ぁ!!」
痛みに耐えきれず悲鳴をあげるとタクは刀をねじった。
「弱い…」
小さく呟くタク、タクと目が合った。
「弱い弱い弱い……弱い弱い弱い弱い弱い弱いぃっ!!!」
そう言いながらタクは刀を何度も突いた、止まらない激痛に俺は意識を失いかけた。
刀を抜き、タクは俺の頭を踏んづけた。
「今まで戦った誰よりも弱いな、だが心配するな。」
ゆっくりと上げられ、今にも振り下ろされようとしている刀は鈍く光っていた。
「…ふざけるな。
俺は、お前を止める。お前は俺の…親友だ、これ以上人殺しさせてたまるかっ!」
立ち上がり銃口をタクの鼻頭に当てた。タクは刀を振り下ろすが、それより先に引き金を引いて鼻に弾丸を当てた。その衝撃で後方に仰け反ったタクの首を掴み持ち上げた。
器官が締まり、声を発せなくなったタクは暴れ始めた。
「苦しいか?ならお前は今生きている。
痛みを感じなくなった時、人は死ぬ。
お前は人を何人も殺したっ!!」
首を締めたまま胸に何発も発射した。
タクは息を止め、刀を振った。するとその刀は俺の左脇腹に深々と刺さる。
「ぐっ!」
手を離しタクを押すが、自分の力に耐えられず俺も後ろに倒れた。刀は抜け、タクも後ろに倒れ、起き上がれなくなっていた。
「ハァ…ハァ……
くっそ、マサルめ。」
顔を上げこちらを見るタク、俺もタクの顔を見るがその表情はどこか笑っている様に見えた。
「な、何で笑ってんだ?」
考えている事が声に出ていた。
「黙れ。」
冷たい言葉だが、その言葉はいつものタクの雰囲気が感じられた。
ドスッ
何の予兆もなく、鈍い音が聞こえた。
「うぅっ!」
右腕を見るとそこにはナイフが刺さっていて、視線の先には森林ステージで戦ったマスクの男が立っていた。服は焦げ付き、露わになっている体にはいくつか火傷のあとがある。
「会いたかったよ…小僧。
あの時の屈辱、はらしてやる。」