episode 9
「あ、あんたは……!?」
あまりの驚きに考えが追いつかなかった。
目の前に居るのは森林ステージで最初に遭遇した男だ、今までどこで戦っていたんだ?
「貴様の事を探していたら、何人か邪魔をしてきてなぁ。
ま、倒したのは火の親父だけだがな。」
火の親父、俺が知る限りそう呼ばれるのはアイツしか居ない。ゲーム開始直後に遭遇した火炎放射器のおっさんだ。
アイツがやられた、つまり残っているのは…コイツ、俺、タク、そしてもう一人。
この状況、非常にまずい!
今の俺とタクはさっきの戦いでボロボロだ、手負いとはいえマスク男と十分に戦う余力は残ってない!
一体どうすれば…?
「さあ、じっくりと味わえ。
敗北と屈辱を…」
顔全体を覆っていたマスクは焼けたのか左目とその周辺部が無くなっていた、そこから見える目は冷たく深い怒りを抱えて俺を見つめる。
男は俺に刺したナイフを抜くと視線を俺の腹の辺りに向けた、不気味な笑みを浮かべてその刃を左脇腹に深々と刺した。
何度も味わったが慣れることはない、そんな痛みに耐え歯を食いしばった。涙が出る程痛い、でも負けられない。
「ほう、叫ばないのか?偉いなぁ…」
イメーシが追いつかない。スナイパーとの戦いからぶっ続けで動いてる、疲弊して頭が回らない。
「っの野郎…」
怒りを露わにして男を見ると、彼はナイフをねじった。
「ぐっ!!……うぅ。」
「なぁに声出してるんだ?」
男が左手で拳をつくり振りかぶった、まずい…
「うおぉぉぉおおお!!!」
突然男の後ろから聞こえる雄叫び、その主はタクだった。
タクは刀を前に突き出し男を刺そうとする、男は咄嗟に俺からナイフを抜き刀を反らした。
タクは空いていた左手で、男がナイフを持つ左腕を掴んだ。倒れるタクに引っ張られ男も一緒に転げた。
タクはすぐに身体を起こし、俺の前に来て刀を男に向けた。
「マサル、大丈夫か?」
「あ…あぁ……
右はボロボロだし、左も重症だけど……なんとか…」
「全然ダメじゃねぇか。」
視線をタクから男に向けると奴は倒れたままだった。
「……ダメじゃないか。
邪魔しちゃあ。」
男はゆっくりと立ち上がりタクにナイフを向ける、すると男は段々と身体が透明になり遂には見えなくなってしまった!
「何っ!?
どこだ?一体どこだっ!?」
タクはうろたえて辺りを見渡した、俺も探そうとできる限り近くを見るが男の姿は見当たらない。
どうゆう事だ?何で姿が見えない?奴の能力なのか?
色々な事が頭を回った、その時ふと頭の中である出来事を思い出した。
森林ステージで奴と出会った時、俺は能力を発動していた。俺の能力は「透視」、もしかしたら奴が見えるかもしれない!
目を閉じ、俺は能力のイメージを高めた。全てを見透す、奴を捉える目を。
目を開き辺りを見渡すと男は俺の頭の上でナイフを掲げていた。
「タク!俺の頭上!!」
タクは俺の言葉に応えるかのように刀を振った、すると刀は男の背中を深く斬った。
男の能力は解除され姿を現す。その背中には大量の血が流れていた。
「がっ…あぁ……
くそっ…ガキ共めぇ!!」
振り返りながら男はタクの右手首を刺した、耐えきれずタクは刀を落としひざまずく。ナイフを抜きタクの身体目掛けて振り下ろした、それを反らそうと右腕を前に出すとナイフはそれを通過し腕と胴体に深々と切り傷を残していった。
「タク!!」
咄嗟に声を出すとタクは右腕で男の手を払い除けナイフを離させた。
「ちっ!!」
男は手刀を作りタクの首めがけて腕を振った。
どうにかしようともがいた時、俺の手に何かが当たる。
これだ!!
俺はそれを手に持ち、男の手刀へ向けた。
目に映るのは俺のハンドガン、トリガーを引き発射すると銃弾は男の手を貫いた。
勢い余ってタクにのしかかる形で男は倒れ込む。
「こんのやろおぉぉぉぉ!!」
タクは渾身の右ストレートを男の左頬にぶち込んだ。
「がっはぁ………」
男は地面に倒れ込んだ。立ち上がろうとしてもうまく力が入らないのか、腕が震えていた。
「くそっ…くそっ!くそっ!!」
なおも立ち上がろうとする男に対して俺は銃口を向けた、相手の足を狙いトリガーに指をかけた。
男はさらにもがいた。地面に拳を叩きつけ、膝を立て、顔を上げる。
まずい!このままでは!!
俺がトリガーを引こうとしたその瞬間、男の頭上で何かが光るのが見えたと同時に男の頭は落ちていた。
ゴンッ
頭は血を流しながら地面を転がり、身体は首から血しぶきを放ちながらゆっくりと倒れる。その首元にはピアノ線のように細い糸が何本も束になって引っかかっていた。
「どうもぉ、お二方。」




