第23話 コンビ名は…
ボブからの『コンビ名は?』という質問に、乱子と華は困り顔である。
「一番大事な所やのに、全く頭に無かったわ。」
「乱子が考えてな。あたしネーミングセンスないから…。」
「ふむ…。」
乱子は顎に手を置いて数秒考え込んだ。
「うちらは偶然あの時出会った…。まぁ運命やねんけど…。だから『たまたま』とかでええんちゃう?」
「適当やん!」
「ほなカタカナにしたら味出るんちゃうか?『タマタマ』でいこうや。」
「絶対嫌っ!!違う意味になるやんか!!この前事務所前で話した下ネタと一緒やん!!」
そこで、急にボブが手を挙げる。顔は自信に溢れているようだ。
「ならば、『ポコチン乙女』などいかがでしょう?」
「もう!なんなん!この界隈は下ネタしか言わへんの!?ボブさんが自信ありげなんもムカつくし!」
ボブは満足したのか、腹を抱えて笑っている。すると、鉄平が真面目に考えを出してくれた。
「う〜ん…。普通は名前を合わせて作ったり、コンビの特徴を名前に入れたりとかすんねんけどなー…。」
「うちらの特徴って何?まだ笑いの方向性も決まってないねんけど。」
「特徴なー…。女の子らしくて可愛い華ちゃんと、男らしくて狂った乱子のコンビやな。」
「鉄平の事、やっぱ好きになられへんわ。」
「いや、鉄平さんは良く分かってると思うよ。最初の頃からあたしの事ちゃんと見てくれてる。」
「なんやねん!自分は可愛い可愛い言われてるからやんか!」
鉄平の意見を受けて、改めて華と乱子はコンビ名を考える。先に案を出したのは華だった。
「女の子らしい…ガーリッシュ…狂ってる…クレイジー…。『ガーリッシュ・クレイジー』は?」
「ちょっと長いし覚えにくいな。それにうちがクレイジー担当っていうのが解せん!」
「う〜ん…。じゃあガーリッシュはガーリーに変えて…。クレイジーを他の言い方に変えたらなんやろ…。」
そこで、ボブが恥ずかしそうにまた手を挙げる。
「ボブさん…なんですか?照れながらとか…もう下ネタは禁止ですよ。」
「ちゃうちゃう。乱子の生き様はクレイジーやが、格好ええとこあるからな。自分の芯を持ったロックって感じの。」
「ボブ!たまにはええ事言うやんか!そうや!うちはクレイジーじゃなくてロックや!」
「じゃあさっきのと合わせると…」
乱子と華は、頭の中でさっきまでの意見と合わせて答えを出す。それがどうやらしっくりきたようで、満足気に声を揃えてこう言った。
『ガーリー・ロック!!!』
このコンビ名について、鉄平とボブも満足そうに頷いている。
「ええやん!短いし覚えやすいし!何より可愛い!あたしはこれがええな!」
「うちもこのコンビ名はええと思う!ほんなら『ガーリー・ロック』、『タマタマ』、『ポコチン乙女』の3つで決選投票しよか!」
「なんでやねん!その2つが割り込む余地なんかないわ!」
「いやぁ、やっぱ多様性の世の中やし…。」
「股間の話しかしてないのに何が多様性なん!?やっぱクレイジーなん!?」
ここぞとばかりに漫才を始めようとする乱子に、後れを取らずにツッコむ華。その2人を見て、鉄平とボブも大声で笑っている。
「鉄平。この2人ならひょっとするんちゃうか?」
「これは期待できるかもしらんな。ガーリー・ロックか。ええやないか。」
じゃれ合う乱子と華を、鉄平は親のような気持ちで見ていたが、もう一つ大事な事を思い出した。
「おい乱子、ほんで事務所はどうするんや?まさかアマチュアのままいくわけにはいかんやろ。『カンサイ』に戻るんか?」
「あそこには戻らん!絶対に嫌や!」
「『カンサイ』って『関西芸能』の事?乱子って元々あそこに居たんや!芸人事務所でトップやし、戻れるなら戻った方が良くない?」
「あそこに戻るぐらいなら死んだ方がマシや!その辺は、次に会うまでにうちがちゃんと考えとくから!華は待ってて!じゃあちょっと用事思い出したからうちは先に出るわ!」
乱子は無理矢理に話を終わらせると、さっさと足早に店を出ていった。
「ちょっと乱子!あたしも帰るって!待ってよ!」
華が店を出た乱子を追いかけようとしたが、それを鉄平が止める。
「華ちゃん!ちょっと待って!今は追いかけん方がええ。あいつにとって嫌な話が始まる予感がして逃げたんやろ。」
「嫌な話…ですか?」
「そうや、あいつが関西芸能を辞めた理由やな。」
「それ、教えてもらえますか?」
「まぁ…気になるわな…。全部が全部俺が勝手に話されへんから、少しだけになるけどかまへんか?」
「はい…。お願いします!」
そして鉄平は、重たい口を開くように、乱子の過去を話し始めた。




