よく寝るビビはよく育つ〜天才王子の爆睡事件を添えて〜
読んでいただければ幸いです
ノスタット公爵家末子ビビの世界は、甘いものと綺麗なものでできていた。
優しい父と母、活発な姉と文武に秀でた1の兄様とまだまだやんちゃな2の兄様。
流行し始めたジュレを閉じ込めた宝石のようなチョコレートと香高い紅茶。
ペールブルーの壁紙と白いふわふわのベッド、猫型の使い魔のダレンと大好きな次女のナーナ。それから時折屋敷を訪れる従兄弟のイゼル兄様。
ビビは銀色の髪に明け方の薄い空の紫に少しだけ日の光を入れた美しい瞳と華奢な体ほおは薔薇色でいつも本を読んでいる子供だった。
本を読んで楽しそうに感想を伝えてくれるときその瞳がキラキラしてとても美しいので、屋敷の人は全員ビビから感想を聞くことを楽しみにしていた。
国力は安定し、ノスタットの経済力も安定していたので、子供達は貴族の子にしては珍しく婚姻政策以外でも良いと父公爵からお墨付きをもらっていた。
経済力、政治力ともに安定した家の末子。
ビビの箱庭は平穏で美しくこのままずっと続いていくのだと思っていた。
そんな平和な箱庭に時折やってくる従兄弟のイゼルはビビにとって初恋の王子様だった。
イゼルはルルジェット王国の第3王子でビビの従兄弟に当たる。
燻した金髪に日に透かした熱帯の海の水色の瞳を持つ綺麗な少年だった。
ビビは3人の兄も姉も大好きだったが、イゼルが一等好きだった。
姉は騎士団に入り遠征が多く、1の兄様は次期公爵として父につき領地を周り、2の兄様は活発すぎてよくビビ連れまわして泣かせ、兄、姉から搾られビビお気に入りのおやつを一緒に食べて仲直りするまでがセットだった。
大変仲がよろしいことで有名なノスタット夫妻、上の子3人までは1〜2年おきにぽぽぽぽーんと授かった。流石にもうあとはないかな〜という空気を破って2の兄様が8歳の時にビビは生まれた。
8歳違うと遊びが違う。2の兄様は活発で公爵家の敷地で遭難するくらいヤンチャ坊主だったのでおっとりしたビビは一緒には遊べない。悪気なくビビを置き去りにするから。
「ビビ!俺の妹ならば屋敷の探索は完璧でなければいけない!!!」とよちよち歩きのビビを連れ出し、途中ではぐれ、晩餐の時間になっても見つからないビビに真っ青になった2の兄様は家令に泣きつき、フットマンに縋りつき、父と母に大目玉をくらい、屋敷の手下全員でビビを探したが見つからず俺のせいでビビが!ビビが!と泣いていたところ公爵家と王家の森から4歳のイゼルと侍従がすよすよ眠る小さなビビを抱えて公爵家の屋敷に連れてきた逸話は今でも語り草だ。
ビビが見つかったのは王家の森の奥にある精霊樹のうろであった。王子様に抱っこされながら無事の帰還を果たした末っ子公女は自分を助けてくれたイゼルを大変好きになった。
イゼルは大変賢い子供だった。経営学に王子教育第1、第2王子が手間取った科目もスイスイこなしこれは神童か取り替えっこかと言われるくらい浮世離れした4歳児だったがいかんせん心がかけたまま生まれてきた子供だった。
なきもしなければ笑いもしない食べることも眠ることも遊ぶことも「模倣する」ような虚な天才児。王家の血筋は精霊まじりと呼ばれていて、時々このような心がかけた子供が生まれる。イゼルは典型的な心がかけた天才児だった。
侍従ノーマンは大変自分の主人を心配していた。何せ、魔術も勉強も剣術も4歳上の第2王子を抜いてしまった。戦乱の時代であれば秀でた君主は皆に求められるが今は太平がかなった時代。この変わった天才児が活躍できる場がないのだ。しかも主人には「何かをやりたい」という欲が見受けられない。遊びたい、サボりたい、褒められたい当たり前の欲がない。
王家の天才児は生きる気力を見つけられなければ自死してしまう儚い子供。
ノーマンはイゼルが生きる気力を見つけられるように手伝うために、儚く精霊王の元に帰らないように付けられた子供だった。
妖精たちの時間が迫る夕刻 昼の王と夜の女王が夜の支配権を引き継ぎするあわいの時間。外にいる子供は妖精の隣人。つまり妖精の仲間として常若の国に連れて行かれて人間の国には戻れない。
子供はかくせ。夜の女王がやってくるぞ。夜の女王は子供が欲しい、いらない子供は夜の女王の元に連れて行かれてしまうよ。
妖精に子供を取られた家には富が転がり込むと言われているが、この太平の時代子供を妖精に捧げる家はあまりなかった。
夜の女王が支配権を広げる時間
自室で法律判例を読んでいたイゼルは不思議な音を聞いた、胸の奥がざわめき全身の皮膚が泡立つような不思議な感覚。異形のものの手が伸びてくることを感じたイゼルは確かに森から呼ばれた気がした。普段ならそのまま晩餐を済ませて寝支度するが、どうしても切り離してはいけない気がしたイゼルはノーマンの静止を振り切り駆け出した。
認識阻害魔法を自分とノーマンの周りにはり、黙々と音のする方へ歩いていく。宵闇の妖精が手招きをしているのを無視し、先ほど呼ばれた音を頼りに黙々と進む
ビビり散らかすノーマンの悲鳴をBGMにたどり着いたのは満月の光を受け静かに脈打つ巨大な精霊樹。精霊樹の周りには宵闇の妖精が入ってこない。
その大きなウロにころんとした丸いふにゃふにゃのものを見つけた。イゼルはなぜだかわからないが「これは自分の心のかけらである」と感じ丸っこいそれをうろから取り出した。
その丸フニャは小さなビビだった。ビビは精霊樹の小枝を握りしめて眠っていた。
自分が抱えようかと差し出したノーマンの手をはたき落とし外見的特徴からノスタットの血縁者かと当たりをつけて公爵家の屋敷に向かう
なぜかその道では妖精たちは3人によってこなかった。
公爵家の敷地に出ると、大泣きしている家令に迎えられビビを抱っこしたまま家令に抱えられ屋敷に招待された。
ビビの部屋の小さなベッドにビビを寝かせるとこれまで味わったことのないような安心感を感じ、イゼルは初めて訪問した公爵家の末子の部屋ですこんと寝落ちしてしまった。
第3王子人生初の寝落ちをかましたのだった。
ベイビー爆誕幼女無双書きたかったですわどうぞよろしくお願いいたします




