アイを助けた後。魔王学校 1年目(4月22日。19時ごろ。続き)
「あんた、ホント、バカねぇ〜。
こんな私を……。
危険をおかしてまで……。
普通、来ないでしょ……。
しかも、王族である私に、正体を明かすようなことをして……」
アイは、泣きながら、ポカポカと、薫を殴った。
「おい、おい。
助けたのに、バカはないだろ。
まあ、何より無事でよかったよ。
正体を明かしてって、元勇者ということだよなっ?」
薫は、握りしめている聖剣を見ながら言った。
「そうよ。
祖父の仇として、ここで剣で刺したっていくらいなんだからね。
剣がないからできないけど……」
アイは中腰になって、上目使いになり、人差し指を立てて、薫の腹を突っついてくる。
「助けに、来たのに刺されるのは、ごめんだな。
けど、なんで、俺と結婚しようとしたの?」
薫はアイの人差し指を優しく握って聞く。
「実は、その聖剣を見る前から、あんたの正体を知っていたわ。
魔界の住人は基本的に、強いものを求める傾向があるわ。
それが、祖父の仇であってもね。
だから、あんたと結婚しようと思ったわけ」
アイは、結婚しようとした本当の理由を話さなかった。
なお、アイは、祖父が生きていることを知っているが、知らないふりをした。
「そうか……。
けど、俺の正体ってみんな知ってるの?」
「知らないわ。
すくなくても、兄のアキは知らない。
私は特殊な事情があって、私は知っているだけ。
ただ……。
知らないのが普通なのに、あの黒い羽を持つ相手はなぜか知ってたわ……」
「あの黒い羽を持つ相手は、何者なんだ?」
「知らないわ。
また、ちょっかい出してくるっていたから用心しておかなきゃね。
それに、薫はどうする気?」
「どうするって……?」
「学校に戻ったら、薫は何者ってことになるでしょ?
私とアキが一緒に戦っても勝てなかった使い魔の操っている相手を追い払ったことになるのだから……」
「いや、戻らない。
今回のことで、俺の正体を気づき始めるやつも出てくるだろう。
こんなんじゃ、3年も持たない」
アイに背を向けて、聖剣を消した。
「ダメよ。
ちゃんと戻って、魔王になって、私の夫になってもらうのだから」
「いや、戻らない。
つぅ〜か、当然、夫にもならない。
そもそも、元勇者である俺が従う必要はないからなっ」
「だぁ〜めっ。
じゃぁ、こんな肩書きはどう?」
薫は魔王学校を辞めるつもりだったが、最終的に、アイに説得されて学校に残ることにしたのだった。




