アイとの昼食。魔王学校 1年目(4月22日。12時すぎ)
アイは馬車の窓から外を見ていた。
薫も外を見ると森林の中だった。
太陽の位置を見ると昼を過ぎた頃だと思われる。
そう考えていると薫はお腹が空いてきた。
アイはそのことを気づいたのか、
「昼食にしましょう。
お弁当を作ってきましたの」
と言ったのだった。
森林の木陰の中で、2人で昼食にした。
「あれ、俺の箸は?」
「必要ありませんわ。
私が食べさせてあげますから。
王族である私が食べさせてあげるのだから、感謝してくださいね」
「いや、俺は自分で箸を持って食べたい」
「えっ。
私がお嫌いですか?
それに、ナナさんの時は、全部食べさせてもらったと聞いてますのに……。
私の時は、そんなに嫌がるなんて……」
アイはとても悲しそうな顔をしている。
薫は、この雰囲気だと、箸は1膳しか持ってきてないだろう。
「わかったよ。
食べさせて欲しい」
「薫君のためなら、毎日でもして差し上げますよ」
と、アイは嬉しそうに言ってきた。
弁当を半分ぐらい食べ終わった頃だろうか、薫は魔力の発動を察知した。
アイも気づいているのだろう箸を動かすのをやめ、真剣な表情になった。
2人でしばらく何が起こるかあたりを観察していると、空に大きな氷の塊ができており、落下しながら薫達に向かってきたのであった。
薫は、その氷の対処をしようと、魔法を発動させようとする。
が、アイが、
「私がやりますわ」
と言って、手を開き、氷にの方に向ける。
すると、氷は落下をやめ、くるくると回り出し、回転が止まったと思ったら、砕けていた。
アイが氷の支配権を奪ったのだろう。
森林の中、攻撃してきた者達が木で隠れていて見えないが、ある程度、位置ならわかる。
アイは、砕いた氷を、攻撃してきた者達がいると思われるところに落とした。
すると、森林の中から、
「ぎゃぁー」
という声が聞こえてきた。
自分が作った氷が、まさか戻ってくるとは思っていなかっただろう。
「さっ。
薫君、どうなっているか行ってみましょう」
と、アイが無表情で言って、そっちの方に向かって行った。
おそらくアイは、こういう場面に慣れているのだろう。
薫はアイの魔法を見て、アキよりも力があるのでは?と感じた。
アイが氷を落としたところに行くと、ナナをいじめていた奴らがいた。
ところどころに氷の粒が当たっているところがあるが、致命傷になっていない。
アイが力を加減したのだろう。
アイが、
「どうしてこのようなことをしたのですか?」
と、落ち着いた声で聞いた。
アイは怒っているのであろう。体を震わせている。
「うっ。
……、……。
そこにいる薫に復讐したくて襲った」
ナナをいじめた奴らは、全員退学となっている。
その腹いせで、薫を襲ったのだろう。
だが、ここにいるのは、退学になったはずの人数より少ない。
「復讐はこれだけで終わりか?」
「……、……」
いじめた奴らは、横を向いたまま答えない。
薫は、再度聞きながら、剣を抜いた。
すると、いじめた奴らは、殺すことができるくらいの攻撃をしたのだから、殺されるかもしれないと思ったのだろう、
「今、他の奴らが、ユイとナナを襲っている。
殺さないでくれっ。
助けてくれっ。」
と言ったのであった。
薫はそれを聞いて、アイの方に向かって、
「すまない。アイ。
ユイとナナでは、こいつらの攻撃を防げない可能性がある。
これから、学校に戻ってもいいか?」
薫の表情は、とても焦っている。
アイは、表情には出てないが怒りのオーラが出ている。せっかくのデートを邪魔されたと。
そして、攻撃してきた奴らに、アイは無言のまま攻撃魔法を使おうとした。
その瞬間、薫達は別の誰かから攻撃されたのであった。




