ヒトノモノ その47 暴露
四十七
アカネは無理をしてまで、朝ごはんを食べた。これ以上、食べずには生きていられないと悟ったからである。
「よかった。食べてくれて」
母親は胸をなでおろした。
けれども、アカネは食べてしまったことを後悔した。「太るぞ」という声が胸の中で響いた。もうやめて。アカネはその声を振り切ろうとした。しばらくすると、その声が止んだ。
「メガネを外すと可愛い気がするよ」
「メガネを外しているところ、見たことないよ」
また、ケンジの周りに男子が群がっていた。メガネをかけていたアカネは自分のことが話題に上がっていることを理解した。また、採点されている。アカネは「やめて」と言いたかった。けれども、そんな勇気がなかった。
「じゃあ、平均点を出そう」
「80点」
「お前、高すぎない。45点」
こうして、男子たちが好きな数字を言い合っていた。
「はい、ということで。60点」
「前回より、上がってるね」
「一人、80点がいるからだよ」
とケンジは冷やかした。
放課後、アカネはケンジの机にあるルーズリーフを見た。アカネは60点だった。順位が8位になった。アカネは順位が上がったことを喜びはしなかった。むしろ、不愉快だった。というのも、そこに書いてある理由が品のないものだったからである。メガネを外すと可愛い、胸が大きい、おっぱいがいい、身長が高い、瘦せた。
男が性的な視線をアカネに注いでいることがありありと書かれていた。普段、何食わぬ顔をして、男はいやらしい視線を送っていたのである。気持ち悪い。気持ち悪い。アカネは男という生き物に敵意を覚えた。
アカネはルーズリーフをビリビリに破りたくなった。けれども、それよりも効率的な仕返しを思いついた。アカネは黒板にルーズリーフを磁石で張った。こうすれば、クラスのみんなの目に止まる。我ながら、良いアイデアだと思った。
「なにこれ」
とクラス中の女子が騒いでいた。アカネは何も知らないふうに装っていた。ケンジがどんな反応をするのかをアカネは今か今かと待っていた。
「これ、ケンジがしていたことでしょ」
学級委員であるサワはルーズリーフをケンジの机の上に突き出した。クラス中の視線がケンジに向いた。
「知らねえよ」
とケンジはごまかそうとした。
サワとケンジの喧嘩をアカネは楽しそうに見ていた。




