ヒトノモノ その34 友達
三十四
やっと、本田は藤原の実家に着いた。
「お久しぶりです」
「どうぞ」
そう言って、藤原の母は本田を家に上げた。
本田は藤原の仏壇に線香をあげて、手を合わせた。本田は故人の写真を見て、十五年という長い月日に想いを馳せた。
「ありがとう、来てくれて」
「いえいえ」
「毎年、あの橋に行ってらっしゃるんですか?」
「はい。今年も行きました」
「あの子のためにありがとうございます」
藤原の母は丁寧に本田に応じた。
「あの」
本田はどのように本題を切り出すべきかが分からなかった。
「電話でおっしゃっていた話ですか?」
「そうです。橋に僕以外の人が花を手向けに来たんです。誰か分かりませんか?」
「分かりません」
「そうですか」
「でも、今さら、どうしてあの子のために花なんか持ってきたのでしょうか?」
「僕もそれが不思議なんです。こんな十五年も経ったあとに」
「気になるんですか?」
「はい」
「もしかして、今でもあの子がどうして、ああいうことをしたのかを気にしてらっしゃるんですか」
「ええ。後悔しているんです」
「本田さん、あなたのせいじゃないですよ。もう十五年経ったんです。あの子のことで思い悩まないでください」
藤原の母は懇願するように言った。
「そういうわけにはいかないんです。前日に一緒にいたものですから。僕がずっとそばにいれば、あんなことにはならなかった」
「誰もあんなことになるなんて予想できなかったはずです」
そう言われればそう言われるほど、本田は自分の責任を感じた。
「知りたいんです。どうして、あんなことになったのか」
「知ったところで、本田さんのためになるんですか?」
「何もしないで時が過ぎるよりはマシです」
「あっ」
藤原の母は思い出したように声を上げた。
「あの子の友達に長岡さんという人がいます。会ったことありますよね?長岡さんが花を手向けに行ったのかもしれません」
「ありますよ」
本田は法事のときに、長岡に会ったことがある。けれども、長岡は藤原については何も知らないと言うだけだった。
「ええ。ちょっと、待ってください」
藤原の母は年賀状を持ってきた。
「今でも、同じところに住んでいるか分かりませんが」
本田は長岡の住所をメモした。
「ありがとうございます」
「何か分かるといいですね」
本田は長岡に会うことにした。




