表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒトノモノ  作者: Kusakari
本田 パート2
32/120

ヒトノモノ その32 失恋

三十二

 「そんなに謝らなくてもいいよ」

藤原は本田に対して申し訳なさそうに頭を下げた。そのとき、本田は藤原の家で酒を飲んだことを思い出した。


 「以前、藤原さんの家で飲んだ時、藤原さんは何か嫌なことがあったって言ってませんでしたか?」

「言ったかなあ」

「藤原さんが酒を飲んで、泣き出した時です」

「ああ、あれか。フラれたときのことかい?3年生の時か。もうとっくの昔に解決しているよ」

「フラれたんですか?」

つい本田は好奇心に負けてしまった。

「嫌なことを思い出させるなあ。いろいろあるのさ、男にはねえ」

「どうしてですか?」

「そんな興味あるの?」

「藤原さんって、恋愛するんですね」

「いいだろ。別にねえ」

藤原は話を終わらせようとした。


 「全然、そんな話を今まで話してくれなかったじゃないですか?」

「話したくないから、話してないんだよ。もういいだろ」

藤原は再び握り拳をつくった。本田はそれを察した。

「すみません。調子に乗って」

「分かればいいよ」


 藤原は洋書を開き始めた。


 「すみません。勉強の邪魔をして」

本田はその場から立ち去った。


 本田にとって、藤原の失恋は意外だった。あんな人が人を好きになることがあるのか。本田は不思議で仕方がなかった。確かに藤原は酒に酔ったら、猥談をすることがあった。けれども、具体的な恋愛の話などしなかった。だからこそ、藤原のエピソードが聞きたかった。


 数日後、本田はまた藤原に会った。その時の藤原の機嫌は良かった。本田はその日以来、藤原のプライベートには触れないことにした。そのおかげで、二人の間に緊張が生じることはなかった。すべてがいつものようにうまく進んだ。けれども、今となってはうまく進んだように本田の目に見えただけだった。おそらく、藤原は何かを抱えていたのだ。それを必死に藤原は本田に見せないようにしていたのだ。


 けれども、本田はそれを見抜く目を持っていなかった。自分がもっと気をつけていれば、あんなことは起こらなかった。本田は車を運転しながら、回想から現実の世界に戻った。もう少しで、藤原の実家に着く。本田は後悔の念とともに、最後の日のことを思い出した。本田は昨日のことのように鮮明に覚えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ