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墓地アンデッド討伐戦 その四

 今回は撫子三角州から分隊をつれて来る事になっている。

 九七式飛行艇でいつものイッソス郊外の砂場につけて、この館で一泊して作戦に投入という段取りだ。


「だが、気になるな」 


 船から戻った翌日。

 薬の滾りを抜く為に素振りをする俺に、湯浴みして体を拭いていたベルが俺の呟きに反応する。


「ご主人。

 何が気になるのかい?」 


 ベルの質問に俺は虎徹を振りながら答える。

 こちらでは盾持ちだった事が多いので使っていないが、すり抜ける幽霊相手だとエンチャントがかけられるこっちの方が使えるという判断からである。


「この国の騎士団や勇者の動きの鈍ささ。

 もっと前に出てもおかしくはないのだが、こんなによそ者に出張らせていいのか?」


 俺刀を振りながら尋ねると、ベルは気にする様子も無く答える。


「勇者や騎士団の動きなんてそんなものじゃないの?

 彼らはまず蟲に備えないといけないからね」


 ベル曰く、この国の北にある国は、内乱の果てに竜や蟲にそなえる戦力すら内乱に使い、蟲に襲われて滅んだという。

 それは、蟲が湧き、魔物が押し出されてくる虚無の平原と隣接する国にとって、絶対に忘れてはいけないルールなのだろう。


「という事は、騎士団の主力って国境沿いなのか?」 

「本拠はここだけど、ここはペガサスやグリフォンライダーみたいにすぐに動ける連中が主よ。

 従士や兵士みたいに徒歩の連中は国境沿いで守らせている方が効率がいいのさ。

 勇者についてはそれぞ上の連中の話であたしらが知ることすらできゃしない」


 そんな事を話しているベルはなんか不機嫌そうに俺の素振りを見つめる。


「どうした?ベル?」


 刀を振る手を止めてベルに尋ねると、ベルも首を捻る。


「それがわかんなくて。

 なんだろうなぁ。

 ご主人の素振り見ていると、なんかもやもやするのよねぇ」


 このあたり、大陸で片桐少尉にも言われた事があったなと思い出して苦笑する。

 着任後で右も左も分かっていない俺の仕草を見て、まどろっこしいと後で教えてもらったのだが、素振りを見てその反応という事は多分何かが違うという事なのだろう。


「ベル。

 良かったら振ってみるか?」


 俺が虎徹を差し出すと、ベルは首を横に振った。


「そんな長いの、私が使うものじゃないし。

 でもそっちの短いのだったら扱えるかな」


 置いていた虎徹の脇差を手にとってベルが構える。

 盗賊だけあって、構えが手傷を負わせるのを目的とした構えではないとこちらにはまだ短い俺でも分かる。

 ベルが脇差を横に構えて一文字に振る。

 その位置がちょうど首のあたりと気づいて、ベルが一撃で相手を絶命させるだけの技量を持ち、またやってきたのだろうとわかってしまう。


「うん。

 わたしはすっきりしたけど、ご主人の素振り見てたらもやもやしていたのよね。

 何でだろう?」


「何をやっているんですか?」


 浴室に一緒に入るとそのままするので男女別に入る事にした結果、最後に出てきたリールがメイド姿で現れる。


「あ、わんこ良かった。

 あんた長剣使いだったよね。

 ちょっとご主人の剣振ってみてくれない?」


「その呼び方止めてくれませんかって無駄でしょうけど。

 ご主人様。この野良猫が何を言い出したのかよろしければご説明を頂けると助かります」


 相変わらずの仲だが俺の素振りを見てベルが違和感を感じた事を話すと、失礼ながらとリールが虎徹を構える。

 元の身体能力が違う上に実戦経験もある為に、構えからして俺がまず違和感を受ける始末。

 なるほど。

 極めるとこういう風になる訳だ。

 一振り。

 だが、その一振りでリールも違和感に気づく。


「あれ?

 何かおかしいですね?」 

「でしょ。

 わんこが感じているという事は多分何か引っかかるのよ」


 リールから虎徹を受け取って、俺がいつもの素振りをするとベルとリールが同時に手をたたいた。


「音だ!」

「音ですね」


 いや、俺に説明してくれと言おうとしたら、ベルが先に口を開いてくれた。


「つまり、ご主人の長剣って斬るに特化しすぎているって前に言いましたよね?

 そのせいか、振る音が違うんですよ」


 ベルの説明にリールが補足してゆく。


「私達獣耳族は耳がいいですから、戦場における音をかなり重視しているのです。

 この世界の長剣は叩いたり突いたりも意識するので、両刃でまっすぐ伸びているのが主流です。

 で、そういう剣の音をずっと聞いてきたのでご主人様の剣の音に違和感を感じてしまったんでしょう」


「待てよ。

 ベルはさっき俺の脇差振っていたぞ」


 俺の疑問にベルがその脇差しを持って答える。


「この剣短いから反りがこれだけ。

 ご主人が持っている長剣はこんなに反っている。

 これじゃあ、音が違うって訳」


 なるほど。

 とはいえ、人間の俺にはまだ区別がつかないのだが、達人までなるとまた別なのかもしれない。

 せっかくなので、ワイト戦に向けての対策を二人に聞いてみる。


「ご主人を前に出すって、危ないでしょ。

 ワイトは宙を飛ぶし、地面や壁に隠れる厄介な相手。

 ご主人庇いながら戦うのはちょっときついと思う」

「同感です。

 周囲どこからでも襲ってくるワイトは、一番弱い所から突いてくるでしょう。

 我々だとご主人様。貴方です」


 こうも断言されると苦笑するしかない。

 ついでに、また部隊を率いる事を告げると二人とも露骨に嫌な顔をする。


「ご主人。

 断れないの?それ」

「私は反対です。

 多くの損害を出して、ご主人様の評価に傷がつきます」


 それだけやっかいな仕事という事なのだろう。

 虎徹を鞘に直して俺は二人に尋ねる。


「俺たちだけならば、なんとかなる訳か?」

「まぁね。

 ご主人をわんこに守らせてあたしとボルマナで動けるのが大きいからね」


 ベルの即答にリールも頷く。

 この二人仲は悪いが、互いの才能までは嫌っていないあたり凄いと思う。


「ベルの探査能力は私ですら勝てません。

 ならば、彼女に任せて私はご主人様を守る事に全力を尽くせます」


 二人の言葉を聴いて、俺は二人の前で頭を抱える。

 内海審議官からの命令にはこたえないといけない訳で、とはいって連れて行くと大損害確定で俺の身すら危ないときた。


「何をやっているんですか?

 食事冷めちゃいますよ」


 皆が戻って来ないのでボルマナが俺たちを呼びに来た時、三人とも見事に頭を抱えていたのだが、事情を説明したらボルマナがいとも簡単に言ってのける。


「簡単じゃないですか。

 来てもらう方々には地下水道で大鼠やスライムとかを相手にすればいいだけの事。

 で、私達だけでワイトを相手にすれば」


「あ」

「あっ」

「!」


 驚愕する俺たちを前に簡単に回答を出して見せたボルマナは笑顔のまま、こう言ってのけたのだった。


「さあ、食堂にいそいで。

 ご飯冷めちゃいますよ」

持病の準備に描写をかけちゃう病発動中。

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