第1話 朝活
「かつての未来。■■によってすべての世界と一柱の女神以外を壊した男がいた。」
「その男は、真実を知り自らがしたことを後悔した。」
「そして今度は、同じく■■によってすべてをやり直した。」
「男はやり直した世界の神々と契約した。」
「神々に呼ばれた時、あるいは自ら必要と判断した時、対象となる世界へ現れ、その力で救済を行う責務を負った。」
「二度とこのようなことが起こらぬように。」
「そして自らの罪を背負うために。」
以上は、すべてを壊した男と、ともにやり直した女神しか知らぬ終わりと始まりの秘話である。
今はまだ覚える必要はない。
・・・そして以下は、『世界を壊した存在』と『一柱の女神の記憶』を除くすべてがやり直された数多の世界の一つで起こる物語である。
4:00 起床
少し眠いが、いつものようにさっさと着替える。昨日作っておいた朝食を済ませ、家を出る前に今日の予定を確認する。
今日は学校で使い魔を召喚するという行事がある。特に特別なものはいらないらしい。
ざっと荷物を確認し、軽い準備運動をして、まだ眠っている街の中を駆けていく。
目的地に着いた。毎日4時30分から予約している騎士団訓練場である。こんな時間に使う人はほとんどいないし、料金も良心的だ。
騎士「ジャックじゃん。どしたよ?」
ジャック「ロットさん。おはようございます。」
僕がお世話になっている騎士団に所属しているロットさん。こんな時間にここにいるということは夜勤だろう。
・・・少しお酒の匂いがする。
ジャック「僕は毎朝ここでトレーニングしてるんです。しっかりと予約してますから気にしなくても大丈夫ですよ。」
ロット「そっか。どうりでお前、異様に強いのか。」
・・・どうやら本当に酔っぱらっているようだ。
確かにそこそこ強くはあると思う。しかし、生まれ持った『神の加護』の性能でいえば、僕は圧倒的に弱い。
ジャック「ロットさん。夜勤で疲れているのですか?僕なんてまだまだですよ。」
ロット「それはひょっとしてギャグで言ってるのか?」
ジャック「お酒飲んで夜勤してるあなたに言われたくないです。」
ロット「oh。まて、お酒なんて飲んでな
ジャック「じゃあ後ろのビールは元の場所に戻しとくべきでしたね。」
ロット「何!?戻しといたはず!?」
ビールはなかった。
ロット「え」
ジャック「語るに落ちましたね。ちゃんと隠しきれてはいます。しかし、アルコールの匂いがしてるのは本当ですから。バレちゃったら怒られるでしょう?黙っときますから今後はしっかりと夜勤を頑張ってください?」
ジャックは右手の小指を唇の前に持ってきて微笑んだ。
ロット「だっ、だってよぉ、眠いし、暇なんだぜ?」
ジャック「言い訳しない。あなたは騎士でしょう?多くの人にとってあこがれの存在です。僕にとってもそれは変わりません。あなたのように夜も守ってくれる騎士がいるから、僕や朝早くから働く人が安心できるんですよ。」
ロット「くっ、まぶしいっ」
ジャック「目は覚めましたね。あと少しでしょう?頑張ってください。」
ロット「おう!」
これで大丈夫だろう。まあ、後で団長に叱られるだろうけど。いや、団長は遠征していたな。なら副団長か。あの人は僕の師匠でもあるが、おおらかというか適当というか。最強ではあるんだがなぁ。
そんなことを思いながら日課に取り掛かる。
体に重りを付ける。腕立て伏せや腹筋、スクワットなどを行い自分の体を追いこむ。
終わったら、案山子や木の柱に向かって手段にこだわらず様々な攻撃を試してみる。
僕の神の加護は貧弱で、1日に4発しか魔術を使えない。そのうえ、魔術の打ち合いが弱く、戦闘向きではない水属性だ。その出力も平凡。だから鍛える必要がある。
ジャック「さてと」
いろいろやって疲れた。しかし最後にやらなくては。
ジャック「アクア」
空に呼びかける。頭の中で声がする。
アクア(マスター。1対1の前に一つよろしいでしょうか。)
ジャック「なに?早くしたいんだけど。」
アクア(いい演出を思いついたのです。ついでに付き合ってください。)
ジャック「・・・めんど」
アクア(いいじゃないですか!それにほら、二人で戦うときにかっこよくなれますよ?)
ジャック「前に教会の子供たちに見せたあれでいいじゃん。好評だったぜ?」
アクア(あれは漫画のパクリじゃないですか!著作権とか怖いです!)
ジャック「そうか?」
アクア(そうですよ!)
ジャック「じゃあ言ってみ?」
アクア(やった!えっとですねえ・・・ごにょごにょ)
ジャック「・・・まあいいか。早く実践したいし。」
アクア(よしきた!)
ジャック「じゃあ行くぞ。」
空中を右手でノックする。空中であるにもかかわらず波紋が広がる。
波紋の揺らぎが形を成し、鏡合わせのようにもう一人の水でできた自分が現れた。
アクア「どうです!かっこいいでしょう!」




