(いち)19
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
感情を失った声で、ただひたすら謝罪を続けるのは、桃井明日奈だ。
制服から伸びる手は、分厚い手袋をして、手には不釣り合いな拳銃が、彼女の手の重さに耐えきれないのか、自重で落ちそうになっていた。
私が近づき、彼女の手を取ると、抵抗もなく、銃は手から離れた。
安全装置を確認して、そして目の前の光景を整理する。
部屋の中で待ち構えていた桜子は、扉が閉められた後、すぐに私の背後から飛んできた銃弾に倒れて、硬い床に体を叩きつけるように、崩れ落ちた。
予想はできていた。
悪魔のような男、鳶緒が、計画の為に協力させているのは、私だけではないと。
戦闘に長けた2人は、相手を油断させて、そしてすぐに息の根を止めることなど造作もなかった。
倒れた桜子の肉体を、尚美は変身すると、無言で痛めつけ、手に持つ拳銃は、明日奈と私と同型のもので、2人も同じ人間から援助を受けたのだとは簡単に想像できた。
「見てないで手伝って!!復活したら私達も死ぬよ!!!。」
尚美はそう言いながら、明日奈に言葉を投げかけるが、明日奈は肩を震わせて泣き続けるだけで、声に答えない。
だから2人は気が付かなかった。
廊下に響く大勢の規則的な足音、なぜこの時間のこの一帯に誰もいないのか。
なぜ、私が、死体や拳銃を見ても動じないのか。
ガラリとドアが開いて、そして窓からもなだれ込むように人が入ってくる。
大体は制服を着た警官で、中には女性もいる。私が目くばせすると、察したように桜子の安否を確認して搬送の準備に入ってくれた。
尚美も抵抗はしたが、しょせん16の少女は屈強な成人男性に勝てるはずはなく、すぐに取り押さえられた。まあ、茫然として油断していたのもあるだろうけれど。
「尚美!」
泣いていたはずの明日奈が、動揺しながらも、拘束を振り切るように引き留めようとしたが、あっけなくふたりは連れていかれてしまった。
桜子はストレッチャーで運ばれて行ったが、きっともう駄目だろう。
「お疲れ様。」
振り返ると、レン 「赤崎蓮華」が、制服ではなくスーツを身にまとい、私に手を差し出してきたので、私はおとなしく彼女に拳銃を渡して、部屋の隅にある、鳶緒から渡された武器詰め合わせを指さす。
レンがそちらを見ただけで、部下の人たちが足早に回収していったので、人使いが荒いなあと相変わらずのことにため息をつく。
「向こうは?」
と、私が聞くと、レンはあっさり教えてくれた。
「テレビ局でPlutoメンバー全員拘束。その場で陲ハインリヒのスマートフォンは破壊して、専属部隊が害獣トウバツ完了済。香山譲は未成年との許可ない婚姻強制と性暴力、東大寺鳶緒は殺人教唆。あとのメンバーも堕胎強制やら未成年者での性売買やら余罪まみれだから。もう外に出れないのは確定してるし、瞳を解剖して実験動物にしても、世間からも家族からも何も疑われないわ。」
あっけないものだ。
私はとりあえず終わったことにほっとして、美術室の片づけに入る。
後ろで手伝いなさいと部下に指示を出すレンに、あんたも生徒なんだからやれと指示して、いつかの魔法少女が戦闘で学校をめちゃくちゃにしたときみたいに、実況見分しながらの清掃となった。
ぽかんと立ち尽くす




