20世紀。魔法少女は全て死んだ。
日本がまだ開国する前には、世界各国でハムスターと人間の戦闘が繰り広げられて、日本は開国をきっかけに、各国からその情報を得た。
歴史と由緒ある血筋におらずとも、霊能力が使える少女というものは、何時の時代にもいたものだが、その多くは宇宙飛来のハムスターによる魔法少女契約であることは、歴史が重なり技術が進歩していく中、人々の間にも知られるようになり、国は対策を取ることとなる。
世界大戦に隠れた宇宙規模での侵略ハムスターたちのとの戦いは、ノストラダムスの大予言まで続き、そして予言の年に、人間側が勝利して、世界の少女たちは救われたはずだった。
しかし、逃げ延びたハムスターは、本物のハムスターにまぎれて、ハム太郎などのブームを仕組み繁殖して数を増やし、近年また魔法少女を増やそうと画策していたわけである。
レンは、元々政府の役人で、赤崎とは幼馴染の同級生、それは漫画に描きたくなるほどのすれ違いぷりラブコメを繰り広げていたらしいが、魔法少女内紛の時にレンが潜入して私と出会い、三角関係にもならないようなもだもだのなかで2人はようやく結ばれて、幸せなはずだった。
しかし、1年前の竜巻。。いや、真名神愛梨の害獣化による公害で腹部に致命傷を負い、私の母のように死ぬことはなかったが、そのときお腹にいた2人の子供は永遠に失われた。
そう、これは弔い合戦なのだ。私の母と、レンと赤崎の子供、2人を殺したその原因となったアイドルと魔法少女達のことは、私は絶対許すつもりはなかった。
誤解しないで欲しいが、母は私を愛してはいなかった。
自分が酒におぼれて遊びすぎたせいで手足に麻痺が起きて書けなくなったことで、普段から遊びの時代理で原稿を書かされていた私にお役が回ってきた。
母の漫画は、もう何年も前から書いていたのは私だったのだ。
母は混乱して、怯え、今までの私に行った暴力をばらされないのか気が狂い、狂ったなかで、忘れかけていた、ノリで昔作った女との間の子供に、私にはない本当にお母さんと呼んでくれそうだという希望を勝手に妄想して見いだし、呼ばれてもいないのに撮影地に押し掛けて、はっきり恨んでいたその娘に殺されたのだ。
私は知っていた、母を殺したのは、自分の姉だと。
まあ、姉は私の存在を知る由もなかったので、私が恨まれ狙われることはなかったことには安心していた。鳶緒がそれを突き止めていたのか揺さぶられていたときは冷や汗をかいたが。彼は最後まで、私は母親を殺された悲劇のヒロインとしか思っていなかったようで、詰めの甘い悪魔だったなあと今更ながら思う。
そして、学校で接触してきたことで、私とレンは、内紛と母殺害の真犯人にたどり着け、今回正当な法にのっとって、彼ら彼女らの持っているものを全て壊し、二度と再起不能にすることができた。
香山桜子は死んでいないが、手術で堕胎した。魔法少女の出産例はなく、害獣を生み出す危険性があるという理由だ。子宮の中で育っていたのは人間の子供なのか害獣の子供なのかは、私はあえて聞かないことにしている。回復と取り調べが終わったら、両親と姉のいる家に戻し、廃人状態の家族の介護を強制させる。
風谷尚美と桃井明日奈は、父親を殺せると鳶緒に提案されて、桜子を殺そうとしたそうだ。彼女たちの移民手続きは秘密裏に却下され、国外退去させる予定だ。
親族全員殺したと本人たちは思っているが、彼女たちの故郷は、出産率も高く、街一つが親戚みたいなものだ。彼女たちの本当にいるべき場所は、故郷だったのだ。
魔法少女たちは薬がなければ死ぬと思っているが、本当はそんなことはなく。投薬と、肉親血縁の血や体細胞でもとの体に戻ることは可能だ。
皮肉にも、彼女たちが一番嫌いな存在である血のつながった肉親しか、彼女たちを救えないのだ。
きっとそれがいちばんの罰になるだろう。
まあ、真名神愛梨は、生物兵器として研究されるけれど、もう彼女に個人意志はないので、ある意味一番幸せなのかもしれない。復讐も、惚れた男とのキスも、全て手に入れて死ねたのだから。
陲ハインリヒは、予想通り精神崩壊しており、親族のいるドイツの病院に帰国し、治療を受けている。害獣をスマホに隠ぺいしていたことで、日本国籍をはく奪されることとなり、重罪人として、もうこの国の土は踏めない。
東大寺鳶緒は、やったことが犯罪なので、正式に逮捕されこれから裁判だ。いつかのイケメン死刑囚以上に傍聴は大人気で、ようやく人気1位が不動のものになれたのは笑えない皮肉だ。
まあ、整形のメンテができずに崩れてきていて、最近包帯を巻いてしか表に出れないので、その人気もすぐなくなるだろうけれど。
香山譲は、実は母親の家系が政治家一族だった。
親族から助命の嘆願が来るかと思ったら、むしろ絶縁したいので殺してくれと積極的に頼まれたのには、私もレンも言葉が出なかった。彼は全て手に入れたイケメンを彼は演じていたようだけれど、本当に欲しいものは手に入らなかったようだ。
出所後は、レズを隠している政治家の跡取り娘に、子供を作るためだけに結婚したらしい。
空木飛馬と・・・一番かわいそうなのは彼らかもしれない。やりたくないアイドルを我慢してやっていたら周りが全員犯罪者だ。さらに、Plutoの不祥事によって損害を受けたスポンサーへの違約金は、彼らが払い続けなければいけない。
これからは、今以上に、やりたくもない音を作り続けて必死に金を稼ぐのだろう。もう二度と今までの人気は手に入れることはできないけれど。
まあ、女に誠実であれば、こんなことは起きなかったはずなので、因果応報なのだろう。
こうして、大人気アイドルプルートは、メンバー全員のスキャンダルにより解散。
所属事務所は違約金を支払えなくなり、あっけなく倒産した。
彼らが消えてから一週間ほどは、その話題で持ちきりだったが、すぐに他のアイドルが人気を台頭させ、ファンもみなそちらに目を移し、一カ月もたてば、皆忘れてしまうほどのあっけないことだった。
また、渋谷に近い少子化に悩む私立一貫校から、三人の少女がいなくなったが、思春期にはよくあることと皆悟ったように陰口を言って、それからすぐあった定期試験の後には、いなくなった学友の事は誰の頭にも残っていなかった。
私は今、電車に揺られて自宅に帰る前だ。
赤崎とレンに、待望の赤ちゃんが出来たのだ。
一時期はもう妊娠はできないと諦めかけていたが、治療と本人たちの努力でまた命を授かることができたのだ。
幸せそうな2人には、私も幸せな気持ちになれた。嘘偽りない感情だ。
駅について夜の街を歩く。
私は、誰かから愛されることはないのだろう。
あまりにもたくさんの愛の形を見すぎて、自分に普通を手に入れられることはできないのだと、嫌でも感じられた。
才能があると母が恨みながら死んでいった漫画も、これからの時代はお金にならない。
それは芸能人、アイドルも同じだと私は考える。
もう、空想や夢にお金を払える時代は終わったのだ。
その証拠に、つい最近まで駅や電車に貼られていた、ハリーと譲が出演し、Plutoが主題歌担当だった私の漫画を原作にした映画は、公開中止に追い込まれた。
企画自体が白紙化するらしく、今後の私のメディアミックスに影響があると憤慨する赤崎だが、私はそこまで気にはしていない。
私も普通の女子高生らしく、大学受験の為に勉強して、絵画と漫画以外の道を探すことにしたからだ。
そのためにはまず勉強だと、最近学校に真面目に行くようになって、周りはみな驚いている。大学も、推薦の美大ではなく外国語学部を志望したら、教師は予想外に背を押してくれて、色々な学校を紹介してくれた。内申と出席日数がこれ以上悪くならないよう、今は仕事をセーブしながら勉強に励んでいる。
明日から、どうしようか。
私は若く、いろんなことができるしいろんな可能性がある。
でもきっと私は、お金にならなくても、物語を描き続けて、そして、醜く無様にぼろぼろでひとりで死ぬのだろうなと、確信して、見上げた星を見て、心の底から微笑んだ。
完結




