蛇足
私がその2ゆんのれいむを見つけたのは偶然だった。
心ここにあらずといった感じでただ一点を見つめるれいむ達。
生気のない瞳は、ここで何か絶望的な出来事があったことを容易に想像させる。
気が付くと私はペットショップでゆっくりフードを買ってれいむ達に与えていた。
食べる様子は無かったが、半ば無理やり口に押し込む。
私はこのれいむ達の絶望的な様子に一目惚れしたのだろう。
この子達をずっと見ていたい。
この絶望を長引かせたい。
こんなところで、死なせたくない。
何日か過ぎた頃、ようやくれいむ達は私に語りかけてきた。
どうして、こんなことするの、と。
私は答える。あなた達に死んでほしくないから、と。
嘘偽りない本心だ。
さらに何日か過ぎた頃、ぽつりぽつりとかつての出来事を語り始めた。
それを聞いて私は納得する。
ゲスなまりさだった可能性もあるが、多分人間が父まりさのお飾りを着けて虐待したのだろう。
ゆっくりはお飾りで他ゆんを判断する。
お飾りを着けるだけで容易く騙すことが出来るのだ。
おねーさん、まりさは、どうして、おちびちゃんを・・?
母れいむが尋ねてくる。
私はなんと答えるべきだろうか。
本当のことを言うべきか、言わないべきか。
いや、せっかく2ゆんもいるのだ。
両方楽しんでしまえばいい。
「まりさがあなた達のこと嫌いって言ってたなら、残念だけどその通りなんじゃないかな?ごめんね。お姉さんにはわからないよ。」
どこか都合のいい答えを期待していたのだろう。
私の言葉を聞いて、目に見えて生気がなくなっていった。
それからさらに何日かたった頃。母れいむは餡子の残骸に成り果てた。
ぱっくりと割れた体。お食べなさいをしたのだろう。
ゆっくりフードは私が与えていたのだ。
誰に食べられる理由もなく。 まだ隣にいる子れいむも目に入らず。
母れいむの心境はいかほどのものであったろうか。
隣では子れいむがただただ放心している。
私が母れいむのお飾りを頭に乗せると、子れいむは驚いて私を見上げる。
おかー・・しゃん?
私は何度もお飾りを着けては外し、子れいむに見せつける。
幸いにも比較的賢い個体のようで、目の前の私が母親に見えて母親でないこと、なんとなく理解できたようだ。
さらに私は子れいむにゆっくりと語りかける。
かつての父まりさの行動と、人間がそれを起こした可能性について。
しばらく放心していた子れいむ。
しかし、やがてその瞳に光が差したのを、私は確かに見た。
ゆるしゃない。ぜったいにゆるしゃないよ・・!
怒りにプルプルと体を震わせる姿はとても可愛い。
しかし現状、子れいむだけで何ができるわけでもなく、そもそも生きていけるかも怪しい。
「近くに他のゆっくりの群れがあるよ。よかったら案内しようか?」
ゆっくりと頷く子れいむ。
私は子れいむを持ち上げると、お飾りに白いバッチを取り付けた。
おねーさん。これは・・?
「ん?おまじない。れいむちゃんが今日のことを忘れないように。私の誕生日、1108番をあげるね。」
何を言っているのか一瞬呆ける子れいむだが、なんとなく応援しているのは察してくれたようだ。
ありがとうおねーさん!れいむ、じぇったいにんげんさんにふくっしゅう!するよ!
いや、私も人間なんだけどね。
子れいむを連れた私は近くの群れの、長ぱちゅりーの元へ向かう。
ゲスではないのですんなり群れには馴染めるだろう。
さて、私の誕生日番号をあげた子れいむ。
これからどうなるのか。
ずっとずーっと。
見守ってあげるからね・・?