出発
長かった冬が終わり、ようやく春の陽気が訪れはじめた頃。
木の根元に掘られた巣穴から、ゆっくりまりさが顔を出した。
「ゆぅぅぅ!おちびちゃんたち!おそとはぽかぽかさんでゆっくりできるよ!」
「「「ゆわぁぁぁぁい!!」」」
まりさとともにぞろぞろと子ゆっくりたちが這い出てくる。
ソフトボールほどのまりさが2個とれいむが1個、巣穴の奥からは番のれいむが顔を覗かせていた。
この辺りでは雪が降らない。そのため越冬は比較的楽ではあるが、それでも食料問題は深刻だ。
「まりさはかりにいってくるよ!れいむとおちびちゃんたちはまりさがかえってくるまでゆっくりまっててね!」
「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」
「まりさ。きをつけてね。いってらっしゃい!」
「ゆっくりいってくるよ。おちびちゃんたち。かりがおわったらいっしょにこーろこーろしようね!」
「「「こーりょこーりょ!おとーしゃん!いっちぇらっちゃい!」」」
ゆっくりにとって越冬は命がけだ。
家族そろって生き残ることができたあたり、比較的優秀な一家と言えよう。
「おかーしゃん!まりちゃおそとであそびちゃい!」
久しぶりのお外に目を輝かせるのは兄まりさだ。
「まりちゃも!まりちゃも!」
それに続くのは弟まりさ。いつも兄まりさにべったりなのだ。
「れっ・・・れいむはおとーしゃんがかえっちぇくるまでまっちぇるよ・・・。」
小心者の妹れいむ。まだまだ両親に甘えたいようだ。
「おそとはあぶないからね。ちかくであそぶんだよ。」
「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」
元気に返事する2ゆん。
母れいむの前できゃっきゃと遊びはじめた。
「れいむはれいむといっしょにおうたをうたおうね。ゆっくりーのひー。まったりーのひー。」
「ゆわーい!ゆっきゅりーにょひーまっちゃりーのひー。」
それぞれが思い思いに春の訪れを満喫し、最後のゆっくりを楽しんでいた。
父まりさは森の中を駆けていた。
「まりさはぺがっさすさんなのぜ!だれもまりさをとめられないのぜぇぇぇぇ!」
ぽよんぽよんと跳ねる父まりさだったが、突然巨大な壁にぶつかり歩みを止められてしまう。
「にっ・・・にんげんさん!?」
そこにいたのはゆっくりよりはるかに大きな人間。ぶつかってきたまりさをただじっと見ている。
父まりさは優秀だった。人間との力の差も十分に理解していた。
「ごめんなさいなのぜ!ゆっくりあやまるのぜ!まりさにはれいむとゆっくりしたおちびちゃんがいるのぜ!だからみのがしてほしいのぜ!」
「へぇ。おちびちゃんがいるのか。どこにいるんだ?」
「あっちのきのしたにおうちさんがあるのぜ。だからみのがし」
ひょいっと、鬼威惨はまりさの帽子をつまみあげた。
「まりざのおぼうじざん!かえしてね!ゆっくりがえじびゅばっっ・・」
懇願も虚しくあっさり潰される父まりさ。
鬼威惨は父まりさの帽子を頭にのせると、父まりさの示したほうへ歩き出した。