#6
【作者より】
この作品は実際に出版打診の経験がない作者が書いたものです。
実際の出版打診と全く違いますと思いますので、あらかじめご了承ください。
「ここが噂の「なろうブックス」の編集部かぁ……」
日下部氏は「なろうブックス」のビルを眺めている。
彼は何度かホームページに載っていた写真を見たことがあった。
まさか、自分が「なろうブックス」で書籍化作家になれるとは思っていなかったので、奇跡なのだろうか。
彼は鞄を肩にかけ、服のポケットから携帯電話を取り出した。
その建物の写真を何枚か撮ってみる。
「やっぱり、高層ビルが並んでるよね…………よし、こんなところでまごまごしてても何も始まらない!」
彼はそののビルの中に吸い込まれるように入っていった。
*
同じ頃、益子は「なろうブックス」のエントランスで日下部氏がくることを待っている。
この職場ではじめて担当するというわけで、かなり落ち着きがなく、何度か編集部からエントランスまで往復していた。
その時、見慣れない人物がそこに姿を現し、エントランス内を見回している。
彼は「この方が日下部先生なのかな?」と思い、その人物に声をかけようと近づく。
「あ、あの……日下部先生で、よろしいでしょうか?」
「そ、その声は担当編集者の益子さんですか!?」
「えぇ。改めまして「なろうブックス」編集部の益子と申します。よろしくお願いします」
「ボクは日下部良介と申します。こちらこそよろしくお願いします」
彼らは電話で話したことがあったとしても、今日、ここで実際に会って話すのはお互いにはじめてなのだ。
「早速で申し訳ありませんが、こちらで受付をしましょうか」
「ハイ」
日下部氏は益子に教わりながら受付を済ませる。
彼は受付の女性から「来客者」と書かれたバッジを受け取り、自分の胸元につけた。
「では、ご案内します」
彼らはたまたま扉が開いていたエレベーターに乗り、益子は3階のボタンを押す。
「な、なんか緊張しますね……。出版社や編集部に足を運んだのははじめてなので……」
「そうですね。自分もはじめてここに就いた時は凄く緊張しました。今では笑い話ですが――」
いろいろと話しているうちに、エレベーターはあっという間に3階に到着していた。
「こちらが「なろうブックス」編集部です」
エレベーターから降りると、そこには何作品かのポスターやパネルが展示してある。
「ここにボクが書いた『いくつになっても恋をしたい』のポスターとかが展示されるのですね!」
「ハイ、お察しの通りです。こちらが打ち合わせとかするブースです。日下部先生には大変申し訳ありませんが、こちらで少々お待ちしていただきますが、よろしいですか?」
益子は日下部氏にブースに案内する。
彼は急いで編集部に戻ると日下部氏は空いているブースの椅子に腰かけ、原稿とボールペン、メモ帳を鞄の中から取り出し、準備をした。
2016/07/24 本投稿
2017/01/29 大幅改稿に伴い、話数変更