第1章:レベル0 ― 血の洗礼 ~チュートリアルで『痛覚と死』を知り、残り寿命のカウントダウンが始まる~
読者の皆様へ。
本作『プロジェクト0:プレイヤー1』を開いてくださり、本当にありがとうございます!
もし目の前のサバイバルホラーが「現実の死」に直結していたら? そして自分の「残り寿命」が弾薬を買う通貨だったら?
数々のホラーゲームを解剖してきたプロ配信者・エリアスが、開発者の悪意とバグに満ちたデスゲームに挑む物語です。どうぞ最後までお楽しみください!
カーソルが点滅していた。黒焦げになったピクセルの背景の上で、単色のリズミカルな鼓動のように繰り返される。点灯。消灯。点灯。消灯。
エリアスは携帯ゲーム機を見つめていた。骨のように白いその無垢な筐体は、湾仔にある彼の散らかり放題の寝室の中では異質なものに見えた。窓の外では、香港の街が滝のような豪雨の中で溶け出しており、20階下の濡れたアスファルトの上にネオンサインの万華鏡が血のように滲んでいた。街は生命の叫びを上げていたが、この四方の壁のَ中だけは息が詰まるような静寂に包まれていた。
エリアスは、自分自身の人生がコンパイルを拒否するギザギザのコードの断片であるかのように、あてもなく漂っている感覚を抱いていた。
ディスプレイの上には、名前のないファイルがひとつだけ表示されていた。部屋のわずかな光を吸い込んでいるかのような暗い長方形――『PROTOCOL 0』。
買った覚えのあるゲームではなかった。プレゼントでもなければ、ダウンロードした記憶もない。それでも、親指がそのアイコンにかすめた時、エリアスは奇妙で背筋が凍るような引力を感じた。彼は「Aボタン」を押した。
その移行は、ロード画面ではなかった。現実そのものが暴力的に引き裂かれたのだ。
世界が内側へと崩壊した。歪んだ物質の金切り声と共に天井が無限の彼方へと引き伸ばされ、壁が冷たく無骨な工業用の灰色へと硬化していく。重力が抜け落ち、直後に反転した。エリアスは息を呑んだ。オゾンで飽和した空気と、腐敗物と強烈な化学薬品が混じり合ったむせ返るほど甘ったるい悪臭――肺から命を絞り出すような死臭が喉を塞いだ。
エリアスは、工業用グリスのような粘り気のある汚物で滑りやすくなった、氷のように冷たい金属格子の上に激突した。そこはコンクリートの回廊――香港の地下深くに隠された極秘研究所の『レベル1』だった。自分の意識がデジタル化され、空っぽの殻にアップロードされたかのような虚脱感がある。腰が妙に軽く感じられ、空のホルスターが脇腹で揺れていた。
「チュートリアルか?」オゾンの鼻をつく味を噛みしめながら、彼は呟いた。「いいだろう。このゲームエンジンの挙動を見せてもらおうじゃないか」
彼は動いた。金属の上で響く足音は鮮明で、正確で、あまりにも完璧すぎた。前方へとダッシュすると、キャラクターは不気味なほどの滑らかさで反応した。金属ケースの上から重いベレッタM92Fを掴み取る。重量バランスは完璧で、エイムアシスト(照準補助)は見えないリードのように機能し、反動は手のひらをわずかにくすぐる程度に過ぎなかった。
前方の影から、よろめくシルエットが現れた。白衣がボロボロに裂け、顎が腱の糸1本でぶら下がった研究員だ。エリアスはニヤリと笑った。ゾンビ。王道だ。
頭部に照準を合わせる。バン。銃弾は正確に命中し、赤いピクセルの飛沫と共に頭蓋骨を粉砕した。怪物は崩れ落ち、グリッチ(映像の乱れ)と共に消滅した。「簡単すぎるな」エリアスはすでに回廊の奥へと走り出しながら思った。
その時、ゲームは自らのルールを書き換えた。
出口の扉は開かなかった。代わりに、壁そのものが粉々に吹き飛んだのだ。何十体もの人影――腐りかけの肉の津波が前方へとなだれ込んできた。エリアスは発砲したが、マガジンは空のクリック音を立てただけだった。ポーズメニューも開かない。クイックリロードのヒント表示も出ない。
鉄のように冷たい手が、彼の肩を強く掴んだ。指が肉の奥深くまで食い込んでくる。エリアスは『GAME OVER』の画面を待った。リスタートメニューが出るのに身構えた。
だが、それは決して訪れなかった。
温かく鉄錆びた血の奔流を感じた。「痛み」を感じた――筋繊維を引き裂く、焼けるように鋭く、否定しようのないほどリアルな激痛だった。コントローラーの振動などではない。彼自身の首筋が食い破られていたのだ。エリアスは膝から崩れ落ち、泥と血で滑る金属格子を爪で引っ掻いた。視界が暗闇へと狭まっていく。『チュートリアル』は想像し得る最悪の形で終わった――骨から皮膚の一片一片が引き剥がされる感触を味わいながら、エリアスが絶叫し、死んでいくという形で。
◇ ◆ ◇
エリアスは前のめりに跳ね起き、湾仔の寝室の椅子から派手に転げ落ちた。心臓が檻の中の鳥のように肋骨を激しく叩いている。自分の呼吸にむせ返り、汗まみれの肌に部屋の冷たい空気が突き刺さった。周囲は真っ暗だった。
「ただの……悪夢か」喘ぎながら、彼は反射的に自分の喉元へと手を当てた。
指先が、濡れてどろりとした粘り気のある何かに触れた。息を呑む。指の腹が、黒く凝固しかけた血で染まっていた。肩と首の激痛は消えていなかった――開いた傷口の痛みが生き物のようにドクドクと脈打っている。あれはゲームなんかじゃなかった。
カチリ。
デスクの上の携帯ゲーム機が、ひとりでに光を放った。ディスプレイの上に新しいテキストが流れる。
【レベル1:本当の始まり】
【ステータス:負傷】
【痛みはリセットされないぞ、エリアス】
エリアスは壁を見つめた。部屋の静寂はもはや安らぎを失っていた。下で何が自分を待っているのか、彼にはわかっていた。床板がうめき声を上げ始め、木製のフローリングが剥がれ落ちて、汚物がこびりついた氷のように冷たい金属格子が露わになっていく。彼の聖域は溶け去り、地下の悪夢の建築構造へと置き換えられていった。あのファイルはもはやデータではなかった。彼の新しい「現実」だった。
首の傷口が焼けるように痛む中、彼はよろめきながら立ち上がった。武器もない。防具もない。暗闇の中で視線を走らせ、部屋を探索する。錆びたロッカーをこじ開ける――何もない。黄ばんだ書類に埋もれたデスクを動かす――何もない。その時、壁に埋め込まれた金庫がわずかに半開きになっているのに気づいた。
血まみれの爪をかけて扉を引く。中には悪臭を放つボロ布に包まれた『9mmベレッタ』、マガジンが1本だけ、そして『タクティカルナイフ』が入っていた。
エリアスは銃を握った。今度の銃は軽くなかった。おもちゃではない。冷たく、重く、機械油で滑った。鋼鉄そのものの重みが、背筋に冷たい戦慄を走らせた。
彼は回廊へと一歩を踏み出した。空気は濃密で重く、化学消毒剤と錆びた鉄の鼻をつく悪臭で飽和していた。壁は鉄筋コンクリートで、低い天井には血管のように脈打つパイプが絡み合っている。建築構造がどこかおかしかった――ユークリッド幾何学に逆らう、あり得ない角度で歪んでいるのだ。
不規則な彼の呼吸音を、別の音が切り裂いた。唸り声。足を引きずる音。喉の奥からのうめき声。
回廊の奥、不規則で不気味な唸りを上げるサーバー群の向こう側から聞こえてくる。エリアスは壁に身を張り付け、心臓が胸骨を叩くのを感じた。赤いネオンが執拗なグリッチを起こして明滅する影の中から、ひとつの人影が現れた。
研究員だった。灰色の皮膚には血の通わない深い裂傷が刻まれ、目は2つのガラス玉のように虚ろで無表情だった。ゾンビは詰まったような息を漏らし――空気を求める腐りかけの肺の音――彼に向かってよろめきながら歩き始めた。
エリアスは銃を構えた。両手が震えていた。エイムアシストはない。体力ゲージも見えない。あるのは乱れた呼吸と、当てなければならないという必死の欲求だけだ。
バン!
銃弾は怪物の肩を切り裂いたが、その前進を止めることはできなかった。エリアスは悪態をつき、深く息を吸い込んで神経を落ち着かせた。
バン!
弾丸が頭蓋骨を捉えた。頭部が割れ、骨の破片と灰白質が壁に飛び散る。今度こそ、怪物は死体となって地面に崩れ落ちた。
エリアスは焼けるような肺で息を吐きながら、死体の上で足を止めた。消費した弾丸は2発。残りはほんのひと握りしかない。
網膜に焼き付けられた烙印のように視界の端に浮かび上がるタイマーへと、彼は視線を投げた。
【大脳皮質崩壊まで:05:59:40】
これはゲームではなかった。「狩り」だ。そして彼は、飢えた迷宮に放り込まれた唯一の獲物だった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
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