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2008年6月29日、俺たちの体育館

どうも、ルチャブルです!

初投稿になるんだよね〜、いろいろ間違ってたらごめん!

キュッ、キュッ、というシューズの摩擦音が、古びた小学校の体育館に響き渡る。


「うおおおおっ! 俺のスーパーウルトラ・アタック!!」


カケル(小学2年生)がカエルのように力強くジャンプし、空中で右腕を思い切り振り抜いた。

バシンッ!……という音は鳴らず、スカッという空振り音と共に、カケルは顔面から盛大に床に突っ込んだ。


「んべぇっ!」

「……カケル。お前、さっきからボールじゃなくて空中の見えない忍者と戦ってんの?」


あきれ顔でネットの下から顔を出したのは、同級生のソラだ。整った顔立ちで、すでにどこか大人びた雰囲気を漂わせている。


「ち、ちげーし! 今のは地球の引力が急に強くなったからだし! それよりソラ、お前のトスが低かったんじゃないの!?」

「僕のトスはミリ単位で正確だ。お前がジャンプする前に『今日の晩飯、唐揚げかな』って顔して集中力切らしたからだろ」

「なっ……!? なんで俺が唐揚げのこと考えてたってわかったんだよ! お前、エスパーか!?」

「口の周りに、昼飯のお弁当で食った唐揚げの油がまだテカテカ光ってんだよ、バカ」


ソラがため息をつきながらタオルを投げつけると、カケルは「うひゃっ」とそれを受け取って顔を拭いた。

2008年6月29日。

二人が地元のバレーボールクラブに入部して、まだ数ヶ月。元気すぎるお調子者のスパイカー・カケルと、冷静沈着なひねくれ者のセッター・ソラ。性格は水と油だが、なぜか二人はいつも一緒にいた。


「でもさ」カケルが床に寝転がりながら、天井の照明を見上げてヘラヘラと笑う。「ソラの上げるトス、スゲー打ちやすいんだよな。なんかこう……『フワッ』と来て、『ピタッ』て止まるっていうか! 俺専用!って感じがする!」


「……語彙力が小学生未満だな。まあ、小学2年生だけど」

悪態をつきながらも、ソラの耳は少しだけ赤くなっていた。彼は転がっていたボールを拾い上げ、カケルの胸元にポンと投げる。


「当たり前だ。僕が最高のセッターになって、お前みたいなバカでも打てる最高のトスを一生上げてやるよ」

「マジで!? じゃあ約束な! 俺も絶対、お前のトスで世界一のスパイク打ってやる!」


カケルが立ち上がり、突き出した拳。ソラは「世界一って、気が早いな」と笑いながら、自分の拳をコツンと合わせた。

体育館の窓から差し込む夕日が、二人の小さな影を長く伸ばしていた。

明日は今日より上手くなる。明後日はもっと。

そんな当たり前の日々が、ずっと続くと思っていた。


カレンダーのページが、風に吹かれるようにパラパラとめくれていく。

笑い合い、喧嘩し、共に泥だらけになってボールを追いかけた日々。


そして、時は無情にも飛ぶ。


2011年3月11日。


「うわああああっ! ソラのバカ、俺のプリン食っただろ!」

「バカはお前だ。冷蔵庫に『ソラへ』って書いてあったから食べたんだ。お前の字が汚すぎて『カケル』が『ソラ』に見えたお前自身の責任だろ」

「どんな視力してんだよ!!」


6年生になった二人は、もうすぐ卒業を迎えようとしていた。

クラブの古いプレハブ部室で、いつものようにくだらない言い争いをしていた、午後2時46分。


――ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


地鳴り。

いや、それはまるで地球の底から響く獣の咆哮のような音だった。

「……え?」

カケルが声を上げた瞬間、立っていられないほどの激しい揺れが部室を襲った。

棚からボールが次々と落ち、ホワイトボードが倒れ、窓ガラスが嫌な音を立てて軋む。


「カケル、机の下!!」


ソラが叫び、カケルの首根っこを掴んで強引にスチールデスクの下に引きずり込んだ。

鳴り響くサイレン、校舎から聞こえる悲鳴。永遠にも感じられる長い長い揺れが収まった後、二人は泥だらけになって校庭に避難した。


「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」

カケルが膝に手をついて震えていると、隣で避難所の炊き出しの手伝いをする大人たちの声が聞こえてきた。


どうやら、ここは安全らしい。

安堵の息をついた直後、カケルの顔色が一気に青ざめた。


「あっ……!」

「どうした、カケル。どこか痛むのか?」

「ぼ、ボール……! 昨日、憧れのVリーガーにもらったサイン入りボール、部室の机の上に置いたままだ!!」


カケルはパニックになり、校庭を飛び出してプレハブ部室へ向かおうとした。

「おいバカ、待て!!」

ソラが慌ててカケルの腕を強く掴む。


「今は危ない! 建物に近づくなって先生も言ってただろ!」

「でも、あれ俺の宝物なんだよ! 潰れたらどうすんだよ!!」

泣きじゃくるカケル。その頑固さを誰よりも知っているソラは、強く唇を噛んだ。


「……お前は本当に、世話の焼ける大バカだ」

ソラはカケルの頭をガシッと撫で回すと、くるりと踵を返した。


「ソラ?」

「ここで待ってろ。僕が取ってきてやる」

「えっ……でも」

「僕の足の速さ知ってるだろ? 秒速で戻ってくる。だから、絶対ここから動くなよ」


ソラは、いつもの少しあきれたような、でも優しい笑顔を見せると、校舎の裏手にあるプレハブ部室へと走っていった。

「……ソラのやつ、あんなこと言って、絶対あとでプリン10個要求してくるぞ……」

カケルは涙を乱暴に袖で拭いながら、ソラが戻ってくるのを待った。


1分経過。

「……遅いな」


2分経過。

「あいつ、迷ってんのかな……」


その時だった。


『ヴィィィィン! ヴィィィィン! 地震です、地震です!』


町中に設置された防災無線から、けたたましい緊急地震速報の不協和音が鳴り響いた。

直後、先ほどを上回るような、地面が跳ね上がるほどの強烈な余震。


「うわあっ!?」

カケルは地面に叩きつけられた。

砂埃が舞い上がる中、カケルの目に信じられない光景が飛び込んできた。


校舎の裏手。

老朽化していたプレハブの部室が、重たい軋み音を立てたかと思うと――次の瞬間、ぐしゃりと音を立てて、完全に崩れ落ちたのだ。


「え……?」


カケルの頭の中が、真っ白になった。

さっきまでソラが走っていった場所。

プレハブは、無残な瓦礫の山と化していた。


「……ソ、ラ……?」


喉がひゅっと鳴った。

嘘だろ? あいつ、最高のセッターになるって言ったじゃんか。

秒速で戻ってくるって、言ったじゃんか。


「ソラぁあああああああああああああっ!!!!」


カケルの絶叫は、再び鳴り響いたサイレンの音と、崩れていく日常の轟音の中に、無残に掻き消されていった。


――俺のせいだ。俺が、あいつの未来を奪ったんだ。


砂埃の向こう側から、誰かの悲鳴が聞こえる。

カケルの視界は、どす黒い闇に飲み込まれていった。

ここまでスクロールして読んでくれてありがとう!ルチャブルです!

第1話、楽しんでもらえたかな?次回もよろしくね!

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