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さっき一瞬死んだ話。  作者: おみがわ
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おわり。


夫は私の変化に特に気付いていないようだった。

震えながら冷えきった手を擦り合わせていたら手を握ってくれたけど、手の冷たさについて何も言わなかったから、もしかしたら私の感覚だけが冷たく感じていただけかもしれない。


でもとにかく、私は確かに

最短コースで死に向かう自分を体験したんだ。

思い返すとゾッとするほど怖い体験だった。







これで私の臨死体験(?)エピソードはおしまいです。

Kとは本当にネガティブな思い出しかなくて、思い出すと心臓が鷲掴みにされたような感覚を覚えます。

ここからは36年生きてきて私の中に根付いた概念というか。

たどり着いた今のところの答えを書いてみます。



人は、たくさんの選択肢をひとつひとつ選んでいまここに立っている。

ひとつでも間違っていたら死んでいたかもしれない、殺していたかもしれない。


あのとき私がもう少し母として女として強かったら。

夫を捨ててシングルマザーになっていたかもしれない。


あのとき私にもう少し勇気があったら。

死をもって夫とKに抗議していたかもしれない。


あのとき私がもう少し甘ったれだったら。

実家に逃げ帰っていたかもしれない。


今思い返すと、すべての要素がちょうどよく今の私を私らしく生かしている。


どの選択肢をどう進んだら今どうなっていたかはわからないけれど、今わたしが確かに言えることは、

今ここにいる私こそが最善の選択をしてきた1人だということ。

当時は失敗に思えた選択も、なんらかのタイミングでその失敗を役立ててきたはずで結果的に最善の選択だったと言える。


パラレルワールドっていうと胡散臭く感じるけれど、

きっとあのとき呼びかけてきた私の中の私は、選択肢を選び損ねて死んでしまった私なんだと思う。

人生に絶望して、人を恨むことしかできなくなった過去の私。

15年越しに苦しんでもなお死を選ばない私にヤキモチをやいて、連れて行こうとしたのかもしれない。

昔の私は確かにそういう人間だった。


だけどおそらくもう引き込まれることはないと思う。

私は確かに「生きたい」と思っているし、何かで苦しんだとしても、その経験がいつか人生の糧になる時がくる「必要な学び」だとわかる。


まだ「夫が私を置いて友人とどこかへ行く」というシチュエーションには心がギュッと硬くなってしまうけれど、いつかほぐれるかもしれない。

もしちっともほぐれなかったら、今際の際にでも夫にボロクソ言って死のうと思う。


私はもうちょっと生きるよ。

ありがとう私。死は怖いよね、よくがんばった

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