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そのED

 無事に帰ってきた私たちは、まず報告するために店長のいる店へ。

 報告後、解散との声がかかり、シミットたちは先に帰ることになった。

 ……今は私と、店長の二人だけだった。

 他の店番の人も、ちょっと出ているらしい。


「……なんですか店長」

「……ちゃんと、整理はついた?」


 ……まさか、今回のことはそれが理由だったのか。何となくわかっていたけど、やっぱり腹が立った。


「……何でこんな事させたんですか」

「環境省のお偉いさんからもらったのは本当よ。本当に偶然だった。だから、ね」

「……最悪でしたよ本当に」


 そんな店員の報告を受けてるのに、店長の表情はいつも通りだった。思わずため息が出て、ついでに言葉も出る。


「……ほんと、貴女という人は……」

「嫌い?」

「……大っ嫌いです」


 正直な気持ちで、本心だ。心は見透かすし、嫌がらせのような発言。

 そして……分かっていて行かせた。これが嫌いじゃなかったら何といえばいいのか。

 ……でも、心のどこかでは感謝の気持ちが混ざっていた。

 こうして、もう二度とないかもしれない、兄との再開のために引き合わせてくれたのも、店長なのだから。


「うん、それでいいよ」

「……」


 嫌ってていいのか。だったら私は嫌い続けることにすることにした。そんな嫌いな店長は私にゆっくりと、何かを物色するような目で見た。


「でも、ちゃんと整理はついたの? 私はそれが疑問だな」

「もちろん。ちゃんと整理しました」


 即答した。その答えに、店長はゆっくり頷いた。


「そっか。ならいいよ」

「……聞かなくていいんですか?」

「うん」


 ……意外だった。

 こういうのを聞いてくる人だと思ったからだ。というか、聞かれると思ったからだ。

 ……本当に、本当に意外だった。


「……」

「ルヴァンの真似だけど、あくまで私はパン屋の店長。関係は聞かなくていいかな」

「……そう、ですね。はい」


 ……うん。

 あんなことやってたけど……あくまでも店員だ。だから……今思ってる気持ちは、出さないほうがいい。


「あ、今出さなくていいって思ったでしょ?」

「……だから何で心を読むんですか」

「出してもいい感情と、出さなくてもいい感情があることを忘れずに。例えば……あなたがパンを食べた時に思った気持ちとか」

「……いや、あれはただの……」

「どうしてここに来たのかも、理由も言っちゃうほどだったしね?」


 ……前言撤回。

 大っ嫌いなんかじゃない。……本当に嫌いだ。


「と、とにかく……それだけなら帰りますよ」

「ふふ、いいわよ」


 ……本当に嫌な人だよ。

 ……でも、そんな嫌な人でも……感謝はしてる。他の人なら笑ってしまいそうな、私がパン屋の店員になった理由なのに、それなのに店長はちゃんと受け止めてくれてる。

 その感謝の気持ちは……ずっと隠すつもり。

 嫌いだから。


「……」


 ドアを開き、空を見上げる。夕焼けだった。


「……明日も快晴。パンを売るには絶好でしょう」


 しばらく休みだけど……でも家でこっそりとパンを作ろうと思う。

 もしかしたら、兄は店じゃなくって……家に来ちゃうからかもしれないからね。

 ……なーんて。そんなことはないか。

 ……

 この世界は魔法は当たり前、魔物は当たり前。

 そんな当たり前の中。

 私はパンが好き。だからパン屋にいる。

 そんな事情があるけど……

 いや、あるからこそ。

 この気持ちは……ちゃんと出さないように、でも、気持ちのほんの少しは伝えていきたい。

というわけで、全部で3章編成のこの物語でした。


実は当初は5章編成でしたが、1章(現実では1話と言ってました)のボリュームを見て「あ、5章は無理だな。だったら重要な1話と3話と5話だけにするか」と思ってこの原稿を書き上げました。

因みにボツになった2話と4話ですがそれぞれ「ルヴァンと依頼主の魔法使い見習いが入ったら数日はしばらく出れない森に入っちゃったこと」「ドワーフに囲まれてルヴァンとシミットとその魔法使いがどうこうすること」がありましたが、共通ワードである「ルヴァン(主人公)が何の能力もない一般人でどうやって生活しているかが」が分かりやすく伝わり、尚且つ「兄との関係」「パン屋としての自分」が伝わってくるそれら3つを書くことにしました。

因みにこの時は大まかなあらすじだけだったので肝心の中身は全く書いてませんので2章と4章はまたそのうち書きたいなとは一応思ってます。

実は5章(3話)も展開がちょっと違い、魔物の襲撃があったのですが、いろいろと経緯があってあんなふうに思い悩む立場になりました。というのも、2章と4章に出てくるキャラも来るという関係とその時頭の中で考えていた話にどうしても支障があるので変更する形に。

また、今回の話は「凝るところは凝る、その時に難しくなったところはぼかしておく」という変な部分での手抜き(そうしないと全部書き終わらない)なので一部のところで「あれ?」というところもあるかもしれませんが、そのあたりはご了承ください。

というわけで、「ファンタジー世界のパン屋事情」はこれで終わりです。この世界観を借りた短編も作るかもしれません。

因みにどうでもいい余談ですが、ルヴァン、シミット、フーガスの三人の名前は実はパンの名前が元ネタです。

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