第二章 アイドルは女王様 - 31 - 距離を取る
第二章 アイドルは女王様 - 31 - 距離を取る
あの怪獣と戦っていた類と舞が見ていた光景はこれなのだろうか……などと関心するような余裕など圭太にはなかった。
例えるなら、今東京タワーのてっぺんから落っこちているような状況だ。
二人に支えられていれば、問題ないことは頭で理解できていても、それで恐怖がなくなるというわけではない。
やっていることは、紐無しバンジージャンプである。
恐怖を感じるなというほうが無理というものだ。
悲鳴だけはなんとか押し殺しながら、二度目の跳躍に耐えると圭太は王都から数キロ離れた場所にいた。
あんな高さから落下して、よく生きていられたな。という感慨はある。本当は爆心地にいてなんの影響も受けなかったことの方がとんでもないことなのだが、恐怖の度合いで言えば遥かに地上三百メートルからの自由落下の方が勝っている。
ただ、目の前に広がる光景を見ればまたそれも別の感情に取って代わることになる。
眼の前に広がる光景は、悪夢がそのまま実体化した。そう表現するしかないものであった。
だから、圭太は聞くしかなかった。
「これから、どうするのかな? たぶんだけど……沢山の被害がでてるよね?」
核攻撃による悲劇。
その結果起きる悲劇は、知識として持っている。
記録は映像としていくらでも残っていたからだ。
「心配しないで、圭太さん。王都は帝都の出城として作られた都市。言わば、戦うために作られた都市です。さすがに核攻撃にさらされたら、それなりの被害は被ることになります。でも、そのための備えもしてあります。住人は全員とっくに地下施設に避難していて、犠牲者は一人もでていない。放射線の影響が小さくなり次第、復興はすぐに始まります。だから、何も心配しなくていい」
すぐに舞が女王として、諭すように圭太に話しかけた。
「そうよ、圭太さん。そもそも、この女がヘマをしなけりゃこんなことにならかかったし、圭太さんが危険にさらされることもなかった。圭太さんの身の安全を確保するつもりが、かえって危険にさらしてしまった。そういうことだから、圭太さんはあたしと一旦東京に戻りましょう」
類が舞のことを揶揄するように圭太に提案する。
もっとも、提案と言っても圭太に拒否する権限はなさそうであった。
もちろん、拒否するつもりもなかったのだが。
ただ、さすがにこの提案だと、舞が黙っていないことくらい、圭太にも予測がついた。




