第二章 アイドルは女王様 - 16 - 厄災
第二章 アイドルは女王様 - 16 - 厄災
あんなスケールの怪獣に、どれだけの数の剣を突き刺したところでダメージになるとは思えなかった。
一体これほど巨大な怪獣相手に、舞と希はどうやって戦おうと言うのだろうか?
不安を感じながら怪獣を見る圭太に、ミアが話しかけてくる。
「すぐにここは危険になります。圭太様いきましょう」
その声からは若干焦りのようなものが感じられた。
「あっ? そうだね、わかった」
半ば上の空で頷き、怪獣の方を頻繁に気にしながら移動を再開する。
そして、ミアが地下施設への入り口のところまで案内したところで、圭太の足が止まった。
というのも、突然怪獣に変化が現れたからだ。
それまで、まっすぐ王都に向かって進んできていた怪獣が、大きくのけぞりながら僅かばかりではあるが、後ろに下がった。
それで終わりではなく、頭が左の方へと傾く。
何か巨大なハンマーで殴られでもしたかのように。
だが、すぐに怪獣は態勢を立て直すが、そこに今度は小さく退化した二本の腕の付け根辺り。
人で言えば肩の辺りから、一瞬だけ体液のような物が噴き出してきた。
すぐに止まったが、明らかにそれは血液である。
一体何が起こったのかは分からないが、明らかに何者かがダメージを与えていた。
その直後、空震を伴った咆哮を怪獣が発した。
そして俯いたと思ったら、口から赤黒い色をした火炎を吐き始める。
その火炎はどんどん明るい色へと変化してゆき、太い炎はどんどん細くなりやがて眩く白い一本のビーム状を放出し始める。
怪獣は放ったビームは王都を瞬時に斬り裂き、一瞬のタイムラグを置いて建物は爆発炎上する。
さらに怪獣は狂ったようにビームを放ち続け、その一瞬で圭太の頭上をかすめるように通過したビームが、これから非難しようとした建物の上部を切り裂いた。
圭太は呆然と立っているだけであったが、その瞬間にミアが動いていた。
圭太の手を取ると力任せに引っ張る。
「圭太様。走って!」
強引に引っ張りながらのミアの言葉に、圭太も従う。
すると建物の最上部が一気に崩れ落ちてきて、広範囲に瓦礫が降り注いだ。
圭太が立っていたあたりにも、無数の瓦礫が落ちてきた。
その影響で、地下への入り口は完全に塞がってしまう。
「圭太さん、戻りましょう。外からの入り口は塞がりました」
明らかに焦ったようにミアが言ってくる。
ほんの僅かかすめただけなのにこの破壊力である。
もし仮に直撃をうけたならひとたりまもない。




