第一章 二人の嫁、襲来 - 23 - 異世界へ
第一章 二人の嫁、襲来 - 23 - 異世界へ
なんとも嬉しそうに類が言うと。
「なに言ってんさ。あたしのおっぱいに決まってるでしょ!」
すぐさま舞が対抗心を燃やして言ってくる。
やっぱりというか、当然というか、おっぱいによる挟み付け攻撃は、二人共確信的にやっていたようだ。
それはともかく、圭太はどうにか腰砕け状態から立ち直ると、ようやく周囲の様子の変化に気がついた。
通りの真ん中なのは同じだが、足元は石畳である。
少し前に訪れた第二帝都を連想させるが町並みの様子は、はっきりと違っている。
中世欧州の雰囲気を持ってはいるが、第二帝都がゴシック調の町並みであるのに対して、こちらはそれより時代を遡るロマネスク調の町並みであった。
表現を変えて説明すれば、第二帝都がホラーテイストの魔術色が色濃く打ち出され都市であったのに対して、こちらは剣と魔法の王道ファンタジー的な都市になっているといったところだろう。
当然なのだが、圭太にはここがどこかなんて分からない。
だから、聞く。
「ここ、どこ?」
非常に端的な質問であった。
「ここはロードニアよ、圭太さん。忌々しいことに、舞が女王を務める、品のない国です」
先に答えたのは類だった。
「はっ。余計な一言を付け加えることしか出来てないなんて、情けないわね。帝都を守護すべき将門公の末裔が、帝都のど真ん中に敵の侵入を許すなんて。ましてや圭太さんの安全までおろそかにするなんて、たるんでる証拠よ」
類の言葉に舞が噛み付く。
それにしても、今いくつかとんでもない言葉が飛び出してきたような気がする。
女王陛下に将門公の末裔。そして、帝都の守護とか……はっきり言って圭太の人生とはなんの関わりもなかった単語のオンパレードであった。
だからこそ、さらに圭太自身の謎が深まったわけだが、まだゆっくりと聞けるような状況にはなっていなかった。
というのも、生まれて始めて見るような醜悪な顔面を持った巨人が石造りの家をなぎ倒しながら近づいてきているのが見えたからだ。
身長は推定だが、15メートル前後。右手に握っている巨大な棍棒は20メートル以上はありそうだ。
それを薙ぎ払うだけで、家々は粉々に粉砕されて瓦礫に変わっていく。
巨体以上に、その膂力は脅威となるだろう。
おそらくというか、ほぼ間違いなくあれは敵である。
圭太はそう確信していた。
「そっちこそ、こんな町中にオーガの侵入を許すなんてたるんでるんじゃない?」




