第一章 二人の嫁、襲来 - 12 - 光のほうへ
第一章 二人の嫁、襲来 - 12 - 光のほうへ
その説明の半分も理解できなかったが、とりあえず理解できた分だけ聞いてみる。
「光に向かって進めばいいって、どういうことでしょう?」
帰る方法として教えてもらったことだ。
とりあえず、他のことなんてどうでもいい。そこだけ理解できれば、今の圭太にとってはそれでよかった。
「光っていうのは、闇の中で見えるものさ。夜になるのを待つか、それとも目を閉じれば光を見ることができるよ」
もちろん焦っている圭太に、夜を待つという選択肢はなかった。
「わかりました、やってみます」
すぐに目を閉じると、即席の闇が出来上がる。
そして、目を閉じたまま周囲を見回すと、ある方向を向いたとき目を閉じているにもかかわらず光を見ることができた。
「ひ、光が見えます!」
若干興奮気味に圭太が言うと。
「目を開けることなく、まっすぐそっちの方向に歩いていくといい。途中一度でも目を開けると最初からやり直しだよ。それじゃ行きな」
金髪美女の言葉に従って、腕を伸ばして前方をさぐりながら、おそるおそる歩いていく。
すると、おどろいたことに、何もぶつかることなくずっと何処までも歩いていくことができる。
記憶の中の景色では、とっくに何処かの建物にでもぶつかっているはずなのに、ひたすらまっすぐ平坦な道が続いていた。
目を閉じているのにはっきりと見えている光は、歩く度に近くなってきてついにはその光の前に圭太は立っていた。
光の中へと進むと、急に光が消える。
自分の周囲にひどく騒がしい雑踏の音が届いてきた。
と思ったら、圭太の肩にいきなりドンと何かがぶつかり、圭太はその場に倒れてしまった。
ろくに受け身も取れずに倒れた圭太が目を開けると、どうやら多くの人混みの中にいるらしかった。
ひどく痛む体をさすりながら立ち上がると、圭太は何処かの会場の中にいた。どうやら無事に東京に戻ってこれたようである。
「大丈夫かいあんた?」
いきなり声が聞こえて、そっちの方を見てみる。すると、圭太よりも頭一つ以上背が高く、横幅は倍以上、体重は何倍なのか分からないような巨漢が立っていた。
「ええ、なんとか……」
左の肘を擦りむいて血が滲んでいたが、さすがにこんな巨漢相手に文句をつける気にもならず薄ら笑いを浮かべながらその場をやり過ごそうとするが。
「おおっ、これはごめんな。あんた、肘から血がでてるよ。気がつかないで悪いことしたなぁ。ごめんよ」




