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「残念ですが……あなたたちは、このまま処刑台行きです」  作者: あとりえむ


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6/12

3月29日

王宮の白亜の回廊には、朝から胸の悪くなるような嬌声と下品な笑い声が響き渡っていた。

明後日に迫った夜会に向け、ユーリの取り巻きである悪徳貴族たちが、我が物顔で王宮を闊歩している。


「おい、ドンくさい奴だ!俺の靴に泥が跳ねただろうが!」


「も、申し訳ございません……!」


怒声と共に、鈍い打撃音が響く。太った伯爵が、床を磨いていた若い侍女の腹を容赦なく蹴り上げたのだ。


うずくまる侍女を、他の貴族たちもゲラゲラと笑いながら見下ろしている。

王宮で働く使用人たち。彼らにとって、平民の命など路傍の石以下の価値しかない。声を上げることも、反撃することも許されない透明な存在。


だが、彼らは致命的な勘違いをしている。

その透明な存在たちこそが、彼らを確実な死へと導く死神の群れであることに、誰一人として気づいていないのだ。


私は少し離れた柱の陰から、冷ややかな瞳でその光景を見つめていた。

蹴り飛ばされた侍女のアンナは、数年前、ユーリの機嫌を損ねて処刑されそうになった娘だ。


あの時、私は「私の専属の憂さ晴らし役にしますわ。簡単に殺してはつまらないもの」と無邪気に笑って彼女を引き取り、自室で密かに手当てをした。


アンナだけではない。庭師の老人、厨房の料理長、門番の青年。


現在、王宮の要所を任されている使用人の大半は、この十年間、私がユーリたちの目から庇い、密かに命を救ってきた者たちだ。

私自身は、彼らに見返りなど求めていなかった。ただ、ユーリに命を奪われる理不尽が、十年前の父の死と重なって見えただけの、自己満足に過ぎない。


だが、彼らは違った。

彼らは私に静かな、そして狂信的な忠誠を誓い、私の復讐計画における最も優秀な手駒となった。


バロウを通じて彼らに下された指示はただ一つ。


『四月一日の日付が変わる時、広間に続くすべての隠し通路と裏口を外側から完全に封鎖せよ』


すでに彼らの仕事は、音もなく、そして完璧に進行している。


脱出用の地下通路の扉には外側から鉛が流し込まれ、二度と開かないように細工された。王宮の設計図に記された抜け道はすべて、分厚い石板で塞がれている。マスターキーはすり替えられ、窓の格子は外れないように特殊な釘が打ち込まれた。


アンナが今、床を磨くふりをしながら行っているのも、広間の巨大な扉の蝶番に念入りに油を差す作業だ。

四月一日の夜明け、逃げ惑う彼らの背後で扉が閉ざされる時、一切の摩擦音が鳴らないようにするための、極上の仕上げ。


「サラ、こんなところで何をしているんだい?」


背後から声がして振り返ると、ユーリが甘い笑みを浮かべて立っていた。

今日もまた、母の部屋から朝帰りしたのだろう。彼の服からは、むせ返るような香水の匂いが漂っている。


「ユーリ様。明後日の夜会に向けて、使用人たちがしっかり働いているか監視しておりましたの。手際が悪くて、本当にイライラさせられますわ」


私が扇で口元を隠し、不機嫌そうに目を細めると、ユーリは満足げに私の肩を抱き寄せた。


「君は優しいからね、つい甘やかしてしまうんだろう。だが安心していい。明後日の夜会は、僕と君、そしてこの国を支える優秀な貴族たちのための最高の宴になる」


「ええ、本当に……。心から楽しみにしておりますわ」


私は彼を見つめ返し、この世で最も空っぽで、完璧な微笑みを浮かべた。


ユーリは私の頭を撫で、機嫌良く執務室へと向かっていく。

彼を見送る私の背後で、アンナが静かに立ち上がり、油で黒く汚れた手をエプロンで拭いながら、私に向かって深く、深く一礼したのが見えた。



王宮全体が静かに、そして確実に、巨大な棺桶へと姿を変えていく。


決行まで、あと三日。

誰一人として逃がさない。この完璧な檻の中で、すべてを終わらせるのだ。

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あとりえむ 作品紹介

追放された地味なメイドは和菓子職人の記憶に目覚める 忘却の対価は最果ての愛 死に戻り妻は、推しの確定ファンサをお断りしたい。
死に戻り令嬢は復讐より『推し活』に忙しい! 自分の娘に転生したので息子を当主にするべく暗躍します。 冷徹な天才陰陽師様に撫でられたらケモミミが生えて詰みました。

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