3月28日
決行まで、あと四日。
夜の帳が下りた王宮の寝室。
豪奢な天蓋ベッドの傍らで、ユーリが甘ったるい声を出して私の肩を引き寄せた。
「今日も疲れたよ、サラ。愚かな貴族どもの機嫌を取るのは骨が折れる」
白々しい嘘だ。
今日一日、彼が執務室で何をしていたか私は知っている。
国庫から引き出した金で愛人の一人に贈る宝石を選び、その後は母エリザの私室で数時間も過ごしていたのだから。
「ユーリ様、いつもこの国のためにありがとうございます。貴方がいてくださらなければ、私はどうなっていたか……」
私は小首を傾げ、この世で最も彼を敬愛している哀れな妻の顔を作った。
ユーリは満足げに目を細め、私の頬を撫で回す。
彼の指先からは、母が愛用している濃厚な薔薇の香水の匂いが微かに漂っていた。吐き気を催す悪臭だ。
「君は僕のかわいいお人形だ。政治のような汚い仕事は僕に任せて、君はずっと僕の腕の中で微笑んでいればいい」
そう言って、ユーリの唇が私の首筋に這い寄る。
彼の湿った息が肌に触れるたび、全身の粟立つような悍ましさが駆け巡る。
だが、私は微かに身をよじり、恥じらうように彼の胸に手を当てて静かに押し留めた。
「ユーリ様……明日も朝早くから、他国の使者との重要な会談がおありでしょう?お疲れのお体に障っては申し訳ありません。どうか今夜は、ゆっくりとお休みになって」
彼が最も自分の権力を誇示できる「外交」という言葉を出せば、自己陶酔の強い彼のことだ、必ずそちらに意識が向く。
案の定、ユーリは少し残念そうな顔を作りながらも、自尊心を満たされたように深く頷いた。
「君のそういう気遣いができるところは好きだよ、サラ。そうだな、明日の会談はこの国の命運を左右する。僕が万全で臨まなければ」
国を売り渡す準備はすでに終わっているというのに、滑稽な男だ。
ユーリは私の額に軽いキスを落とし、自分の寝台へと向かった。
彼が背を向けた瞬間、私の顔から一切の感情が抜け落ちた。
触れられた箇所が焼けるように熱く、不浄な泥を塗りつけられたような錯覚を覚える。
だが、私は狂ったように肌を洗い流すような真似はしない。
ただ静かに、冷え切った自らの心臓の鼓動を聞く。
かつての私なら、誰かにすがりつき、慰めを求めて泣き叫んでいたかもしれない。だが、今の私にそんな人間らしい甘えなど一欠片も残っていない。
あと四日……
あと四日耐えれば、この男の傲慢な舌を抜き、母の体に染み付いた香水ごと業火で焼き払うことができる。
その確固たる破滅の未来だけが、今の私を支える唯一の背骨だ。
私はユーリの寝息を冷徹に見下ろしながら、頭の中で彼を千の肉塊に切り刻む想像を繰り返した。
氷の刃のような復讐心。
それだけがあれば、私は最後までこの玉座で完璧な妻として微笑み続けることができる。










