第65話:氷雪の洞窟
洞窟の中も、あちこち凍ってる。
壁や床は氷にコーティングされてツルツルだし、天井からは鋭い氷柱がいくつも下がってて危なそう。
気温は氷点下っぽいけど、入った瞬間温かく感じたからマイナス1桁くらいかな。
-15℃以下の屋外から来たら、-5℃でも春の陽気に感じるからね。
「そこの床、トラップあるぞ」
「はーい」
スタスタスタ…
…ドスドスドスッ!
大量に氷の槍が降ってきたけど、もちろん俺は無傷。
「そこの壁、触るとトラップな」
「はーい」
ペシッ、ペシッ、ペシッ…
…シュッ! シュッ! シュッ!
至近距離の壁から槍が突き出ても、当たらない。
「その先は落とし穴だ」
「はーい」
スタスタスタ…
…ボコッ!
大穴が開いて落ちたけど、下から突き出てる氷の槍に刺さる事も無い。
右手からシュルンと出てきた福音鳥が、落下途中でサッと背中に乗せて脱出させてくれた。
福音鳥は、役目を終えるとまた右手に戻ってゆく。
なんでわざわざ罠を発動させてるかって?
一度発動したら24時間は発動しないからだよ。
24時間経つと罠は発動前の状態に戻るけど、戻るまでの期間は無害になるんだって。
それで俺は、罠があると言われた床をわざと踏んだり壁を触ったりして、発動させる係をしてる。
後ろを歩くメンバーは安全になった通路を進んでゆく。
しばらく進むと、前方に魔物が現れた。
白色レグホンみたいな白い鶏に見える。
日本の鶏と違って、翼バッサバッサさせて吹雪起こすけど!
「コケーッ!」
鳴き声まで鶏だ。
その声は仲間呼びだったようで、わらわらと白鶏が駆け付け増えてゆく。
集まった鶏モドキたちが、次々に飛び蹴りを仕掛けてきた。
「小学校の飼育小屋に、こんなのいたなぁ」
「嫌な飼育小屋だなそれ!」
俺が呟いたら後方にいるモチからツッコミきた。
ちょうどこんな狂暴な鶏いたんだよ、俺の母校。
俺が飼育係になった時、そいつは既に飼育小屋の主と化していて、飼育係たちをビビらせていた。
蹴りを繰り出すその姿から、付いた名前はライダーキック。
「「「コケーッ!!!」」」
「…あ~、キックちゃんがまた増えた」
「名前つけんな、食い辛くなるから!」
俺が呟いたら後方のモチから再びツッコミきた。
「よ~し大体集まったみたいだな。攻撃!」
M本先生の号令で、白鶏モドキの大群を様々な魔法が襲う。
「最上位氷魔法!」
寒冷耐性高い筈の魔物に、あえてその属性魔法をぶつけるチャレンジャー・モチ。
範囲を絞り威力を上げたその魔法は、寒冷地に棲む魔物すら凍らせる。
バタバタと倒れた鶏っぽいものを、みんなで異空間倉庫に収納した。
「近くにタマゴがある筈だから、それも回収するぞ」
先生の指示で付近の小さい岩穴を探すと、20~30コくらいタマゴが見つかった。
「全校生徒の夕食にはまだ足りないな。カラアゲルートを進むぞ」
「先生、お腹空くから食べ物の名前をルートに付けないで下さい」
M本先生のネーミングに、お腹空きそうな俺がツッコミ入れた。




