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【完結】アサケ学園物語~猫型獣人の世界へようこそ~  作者: BIRD
第1章

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第51話:夏夜の夢ダンジョン

俺たちは夢幻ウサギから離れて、ダンジョンの奥へ進んだ…


…筈だった。



ピョンッ


「………」


モチが鼻の穴広げて真顔になる。



ピョンッ


「…ねえ、あれ、ついて来てる…よね?」


チッチが猫耳を後ろに向けて言う。



ピョンッ


「…夢幻ウサギが、仲間になりたそうにこちらを見ている」


真顔のまま、モチが呟いた。



正にそれ。


リリースしたウサギ3匹が、後ろからず~~~っとついて来る!!!



「「…どうして、こうなった…?」」

「初めて撫でてもらって、気持ちいい事に気付いた…かな?」


ハモるモチと俺に、チッチが苦笑しつつ言った。


とりあえず今は先を急ぐので、付いて来るのをそのままにダンジョン内を進む。


夏夜の夢の呼び名にふさわしく、ダンジョン内の様子は次第に幻想的な風景に変わっていった。


左右の岩壁についてる水晶っぽいものが光を放つので、松明や光魔法の明かりは不要。

出会う生き物は攻撃してくる事は無く、先頭の俺が近付くだけでサーッと逃げ去ってゆく。


…但し、ウサギを除く。


ピョンッ、ピョンッ、ピョンッ…


「…増えて…来たね…」

「………」


猫耳を後ろに向けたままピコピコ動かして困惑顔のチッチ。

モチも鼻の穴広げて真顔になりっぱなしだ。


何故か夢幻ウサギと出会うと近くを通っても逃げず、後ろに従うウサギたちに加わる。

ゾロゾロと群がってついてくる、白い翼つきモフモフ小動物集団。

どうしていいか分からないし、攻撃してくるわけではないのて、そのまま先に進む。


やがて、ダンジョンの奥が大きく広がる場所に出た。


そこにあったのは、幻想的な風景。

リーン、リーンという鈴虫のような音がする。

水晶のように透明な木々や草が白く淡い光を放つ空間に、蛍のような小さな緑の光がフワ~ッと舞っていた。


天井がかなり高いのか、見上げても夜空のように感じる。

星のような小さな光は、天井に嵌ってる水晶が発光してるんだろうか?


「…ここ、洞窟の中だよね?」

「うん」


念の為聞くと、チッチが頷いて答えた。


「ここで怪我をしてる子を見つけたんだけど…」


言いながら、周囲を見回すチッチ。

それらしき生き物は見当たらなかった。


目的の生き物を探すため、幻想的な森の中へ入る。

歩いている足元の草から、蛍のような光が幾つも舞い上がった。


「!」


少し進むと、チッチが地面を見てハッとした。


「夢幻種の血だ」


言われて見たそこには、オパールを溶かしたような白っぽく虹色の液体が落ちている。


「多分、近くにいる………いた!」


辺りを見回して、チッチが遂に発見した。

そこにいたのは、純白の仔馬。

ウサギと同じように背中には白い鳥の翼、額には1本の白いツノがはえてる。

脇腹に大きな切り傷があって、そこから虹色の血が流れ続けていた。

倒れて動かないように見えるけど、近付けば逃げるかもしれない。


「イオ、僕に身体強化お願い」

「OK」


チッチの目的は明らかだから、俺は即答して魔法を起動する。


水神の必中(ティアマト)!」


今回は対象が単体だから、命中100%の身体強化をチッチだけにかけた。


チッチが捕獲玉を投げると、仔馬はあっさり捕まった。

透明な球体の中、仔馬は目を閉じて倒れた体勢のまま。


「昨日より弱ってる…急いで治療しなきゃ!」


慌てて帰ろうとするチッチ。


「ちょい待ち、回復魔法は、効かない?」


ふと思いついて、俺は聞いてみた。


「効くけど今ここに使える人は………あっ」


チッチ、気付いたっぽい。


そう、彼は魔法協会の抽選で得た、全属性の最上級魔法が使える。

その中には、聖属性魔法も入ってる筈。


ベルトポーチに入れた捕獲玉をそっと取り出して、両手に乗せるチッチ。


最上級回復魔法(エクストラヒール)!」


発した起動言語(キーワード)は、多分この世界の一般的な言葉なんだと思う。

それがモチや俺には脳内翻訳されて、ゲームでよくある言語に聞こえた。


球体の中でグッタリしていた仔馬の身体から傷が癒えて、ぱっちり目を開けた。

その瞳は、七色が混じり合った宝石みたいに見える。

仔馬自身も傷が完治してる事に気付いたらしく、キョトンと首を傾げる仕草が可愛い。


「良かった…。もう大丈夫だね」


そう言いつつチッチが捕獲玉から解放してあげた仔馬は、ウサギと同じく呆然と固まってる。


「地球の馬なら、首を撫でてあげると喜ぶんだけどな」


って言いつつ、撫でてしまう俺。


「そうなの? じゃあ撫でてあげよう」


チッチも一緒に撫で始める。


「じゃあ俺も」


ってモチも仔馬をナデナデ。


「………!」


背後にいる夢幻ウサギーズがピンッと耳を立ててソワソワした。


その後の事は………まあ、多分予想通り。



…帰り道…


パカポコ、ピョンピョンピョン


「………」


鼻の穴広げて真顔のモチ。



パカポコ、ピョンピョンピョン


「…ついて来ちゃったね…」


猫耳を後ろに向けて苦笑するチッチ。



パカポコ、ピョンピョンピョン


「…夢幻ユニコーンと夢幻ウサギたちが、仲間になりたそうにこちらを見ている…」


真顔のまま、モチが呟いた。



正にそれ。


俺たちのストーカー?に、仔馬がプラスされた!


ウサギは10匹くらい、仔馬は1匹。

地球の数え方だとウサギは10羽、馬は1頭か。


…これ、どうしよう??

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